Outline of Final Research Achievements |
現在, 光ファイバーに利用されている光アイソレータは可視域の光に対して透明でないため, これに代わる可視域で機能する光アイソレータが望まれている. 本研究室ではこれまでにEuO含有ガラスが可視域で大きなファラデー回転を示すことを報告してきた. ファラデー回転の大きさは磁化率に比例することが知られており, そこで本研究ではEuOの高濃度化, またガラスにFe^<2+>を加えることで磁気特性の改善を試み, ガラス組成の違いによる磁気特性の変化を調べることを目的とした. 赤外線加熱‐超急冷法によって60EuAl_2O_4-40SiO_2, 70EuAl_2O_4-30SiO_2, 70(Eu_<0.98>Fe_<0.02>)Al_2O_4- 30SiO_2組成のガラスを作製した. また比較用に50EuAl_2O_4-50SiO_2ガラスを用意した. ここでガラス略称をそれぞれ50EuAl-40Si, 60EuAl-40Si, 70EuAl-30Si, 70Eu_<0.98>Fe_<0.02>Al-30Siとする. 作製したガラスのEu^<2+>存在率を表すf値(=(Eu^<2+>/(Eu^<2+>+Eu^<3+>))×100(%))はXANESで評価した. また結晶相の有無をX線回折装置(XRD)で, 磁気特性をSQUID磁束計で測定した. XANES測定結果から, いずれのガラスにおいてもf=90%程度の値を示しており, ほとんどのEuが2価の状態で存在していることを確認した. 磁化率の温度依存性を調べたところ、60EuAl-40Siガラスは50EuAl-50Siガラスと比較して全温度域で磁化率が1.7倍程上昇した. これはガラス中のEu^<2+>濃度が上昇したためである. しかしながら70EuAl-30Siではむしろ磁化率は減少し, この差は赤外線加熱中、ガラス成分(SiO_2,Al_2O_3)が揮発するためであると考えた. 一方、70Eu_<0.98>Fe_<0.02>Al-30Siガラスは最も大きな磁化率を示し, 大きな負のキュリー温度(-186.2K)をもっていた. これはXRD測定の結果から, 70Euガラス中にFe_3O_4が析出したためであることが分かった. 最も重要な点は, このガラスが依然として可視域で透明であることである. それゆえ磁化率の増加から可視域用ファラデー回転ガラスとして期待できることがわかった.
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