常緑針葉樹の光合成調節機構の複合体プロテオミクスおよび分光学的手法よる統合的解析
Project/Area Number |
20H03017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40010:Forest science-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 亮一 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20311516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 誠志 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40250477)
北尾 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353661)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,680,000 (Direct Cost: ¥13,600,000、Indirect Cost: ¥4,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2020: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
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Keywords | 光合成 / 光化学系2 / 常緑針葉樹 / 熱放散 |
Outline of Research at the Start |
寒冷域で常緑針葉樹が越冬するためには、細胞や組織が凍結耐性をもつだけでなく、光化学系が光障害を受けないことが重要である。常緑針葉樹は気温に応じて、99%の光エネルギーを放散することのできる可逆的な調節メカニズムを持ち、低温下での光障害を防いでいる。このメカニズムを分子レベルで解明するため、本研究では、申請者らが共同で開発した高解像度タンパク質複合体分離技術にピコ秒単位での分光学的測定、網羅的な複合体プロテオミクス、RNAseqを組み合わせ、トドマツ(マツ科)、イチイ(イチイ科)、ヒノキアスナロ(ヒノキ科)を対象に、冬期の常緑針葉樹に特有の光合成調節機構の総合的な理解を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、イチイのチラコイド膜の精製方法を改良し、より自然な状態に近いと思われるチラコイド膜を夏と冬のイチイの葉から精製した。このイチイのチラコイド膜の時間分解クロロフィル蛍光解析を行ったところ、冬には光化学系2において非常に早い(およそ40ピコ秒以内)熱放散が増加しているという結果が得られた。また、以前の方法で精製したチラコイド膜には顕著に見られなかった、光化学系2から光化学系1へのエネルギー移動(スピルオーバー)が数ナノ秒の速度で顕著に増加していることが観察された。前者は、光化学系2のアンテナからの熱放散と思われ、この現象にはEarly light-induced protein (ELIP)が関与すると考えられる。一方、後者は、光化学系2と光化学系1の相互作用の増加が考えられる。したがって、冬季にはELIPとスピルオーバーの両方で熱放散が行われていることが示唆された。また、森林総研北海道支所において、また、4種類の常緑針葉樹(イチイ、トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツ)の冬期の光合成応答を解析し、いずれにおいても冬期に強く光化学系2の量子収率が低下するが、冬期のキサントフィル色素の蓄積はイチイとトドマツにおいてより顕著に見られる一方、春季の光化学系II量子収率の回復はこれらの2種がエゾマツ、アカエゾマツよりも早く見られた。これらの結果から、4種の樹種の冬期の低温強光条件への応答の違いが示唆される。また、イチイのElip遺伝子をシロイヌナズナに導入した遺伝子組み換え植物を作出した。現段階では、この植物において特徴的な形質は観察されていないが、持続的な熱放散の観察手法を改良し、さらなる解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度の光合成測定装置の納入の遅れや、昨年度のチラコイド膜の可溶化方法の確立が遅れたことにより、全体の進行は遅れ気味であるが、これらの問題は現状では解決している。一方、針葉樹のElipの遺伝子をシロイヌナズナに導入する実験についてもプラスミドコンストラクションがなかなかうまく行かず、停滞していたが、この問題は解決し、Elip遺伝子を導入したシロイヌナズナの作出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、チラコイド膜での時間分解クロロフィル蛍光の測定に成功したので、2023年度はさらに精製した光化学系2,および光化学系1での時間分解クロロフィル蛍光の測定を進める。このために、マイルドな界面活性剤を用いたいくつかの条件を試す予定である。また、イチイのElip遺伝子を導入した遺伝子組換えシロイヌナズナ植物の解析を進め、Elipによる熱放散の機能を解析する予定である。また、4種類の樹種(イチイ、トドマツ、アカエゾマツ、エゾマツ)における光合成応答の違いを2種類の光条件(強光と弱光)で解析するために、光化学系のタンパク質の精密な定量を試みる。
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Report
(3 results)
Research Products
(24 results)
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[Presentation] Revisiting the ELIP hypothesis for sustained thermal dissipation in overwintering yew leaves2022
Author(s)
Zihao Ye, Mina Sawada, Makiko Iwasa, Ryo Moriyama, Mitsutoshi Kitao, Toshihiko Hara, Ayumi Tanaka, Junko Kishimoto, Makio Yokono, Atsushi Takabayashi, Ryouichi Tanaka
Organizer
日本植物学会第86回大会
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Author(s)
Ryouichi Tanaka, Ye Zihao, Mina Sawada, Makio Yokono, Makiko Iwasa, Ryo Moriyama, Toshihiko Hara, Ayumi Tanaka, Mitsutoshi Kitao, Junko Kishimoto, Atsushi Takabayashi
Organizer
International Congress on Photosynthesis Research 2022
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