地方小規模映画館の顧客価値創造メカニズムに関する日英比較研究
Project/Area Number |
20K00243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金井 秀介 立命館アジア太平洋大学, 教育開発・学修支援センター, 准教授 (90635492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 地方小規模映画館 / 顧客価値創造 / 質的研究 / 経営戦略 / 経営資源 / 映画館経営 / 小規模ビジネス / 日英 / マーケティング / 経営戦略論 / 映画産業 / 地方 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地方小規模映画館のユニークな顧客価値の創造メカニズムについて、明らかにすることを目的とする。この種類の映画館は映画産業、ひいては文化の多様性保持において重要な存在である。減少を続ける地方小規模映画館だが、中には顧客から支持され、安定経営を続ける映画館がある。そうした映画館における強固な顧客支持層の存在(映画館と顧客の関係性)と、その地方における社会システムの一部としての有機的機能性が明らかになってきた(映画館と地域社会の関係性)。本研究では文献による理論研究に加えて、日本とイギリスでのフィールドワークにより、顧客価値を創り出す地方小規模映画館の経営資源メカニズムを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
総論:当該年度は本研究における幾つかの重要ポイントについて文献研究と収集データの突き合わせによる検討を行ったことで本研究が明らかにすべき概念の掘り下げができたことは一定の成果である。これらの試行錯誤的検討の結果、データの研究への採用、不採用の分類を行なった(現在も実行中)。フィールドスタディでは事例の一つである序破急(八丁座:広島市)の顧客イベント等の追加取材を予定していたが、コロナ禍での休止が続いたため未実行である(2023年3月より再開、予定合わず)。 各論:1)地方小規模映画館における顧客価値について、サービスドミナントロジックの公理4「価値は常に受益者にとって独自にかつ現象学的に判断される」 (Lusch and Vargo, 2014)とチネ・ヴィータ(シネマ5:大分市)の顧客取材データの検証を実行した。個別の顧客が映画館体験をそれぞれの文脈価値の中で位置付け、さらに独自の価値を創造していく過程の表出に取り組んだ(現在も継続実施中)。本研究の中心概念である。2)映画館経営に対する人的資源と関係特殊性の考察:人的資源について戦略人材マネジメント論(SHRM)の観点からLepak and Snell(1999)、Wright and Snell(1998)など、および関係特殊性資源(Dyer and Singh, 1998, など)の検討を行った。最終的にSHRMが本研究に入ってくるのかどうかについては、今後事例ごとのインタビューデータなどの検証を行う必要がある。しかし、地方の小規模映画館マネジメントの差別化として、関係特殊性の概念からその人的資源に考察を加えることは一定程度有効であるかも知れず、今年度の地道な成果である。3)映画産業研究:映画館経営をより大きなフレームワークで位置付けるために、1990年代から2010年代のテレビ局の映画製作戦略を中心に研究を実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体としてコロナ禍と本研究期間が重なっていたことはフィールドスタディを中心とする本研究にある程度のマイナス影響を与えており、まだその遅れを取り戻すまでには至っていない状況である。一方で、少し方向性を変更し、文献研究と収集データ検証、および学会発表、論文執筆に重点を移すことで研究を進めることにしたことによる進捗が見られる部分もある。 また、当該年度は映画館経営研究に対して人的資源論の観点からの考察にチャレンジしていることもあり、必ずしも全ての知見が本研究に有効であるとは言えず、そうした点でのもどかしさというものも研究者本人が感じている。一方でこうした試行錯誤的検証は本研究には必要不可欠なステップであることも承知している。 その一方で、学会発表を3回実施したことにより、有益なフィードバックを得ることができた点は進捗としてプラスと考えている。さらに人的資源論と方法論としてのケーススタディを深めるという点では、論文投稿という形で前に進めることができたことも進捗上プラスと捉えている。 ただし、全体としてはまだコロナ禍での遅れを取り戻すところまでには至っていないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方として以下を想定している。1)地方小規模映画館の主要研究対象4館の事例比較研究:これまで人的資源を明確な論点としていなかったが、昨年度までの研究成果を踏まえて関係特殊性の観点を入れて考察を加える。それぞれの映画館は自社(映画館)スタッフのみならず、地域社会も含め、それぞれ独自で豊かな関係特殊性を構築しており、それが根本的で持続的競争優位をもたらす差別化につながっていると考えられる。2)最重要研究対象としての映画館の質的研究(Cine Vita):ここでは3つの点が重要な研究ポイントであると考えている。まず第一に全体としての顧客が考える映画館経験に求める価値の描出であり(SDLの「現象学的価値創造とチネ・ヴィータ(シネマ5:大分市)の顧客取材データの検証)、第二に個別取材データのGTAによる仮説構築が必要である。そして第三に、映画館側の提供(したいと考える)顧客価値とその方法を顧客側の映画館体験のあり方と重ね合わせた時にどのような価値創造体型を浮かび上がらせることができるのか。本研究の最重要ポイントはこの最後の点に尽きると考えている。したがって、しっかりと研究者自身の中で考察し、醸成させることに集中したい。その一方でフィールドスタディとしては、序破急(広島)が今年3月から顧客イベントを再開させており、状況に応じて現地で取材させていただくなど追加情報の入手を予定している。 学会発表予定:1) 情報通信学会(7月)タイトル:"A Case Study on value creation of Small Local Independent Cinemas in Japan "2) The 21st Asia Pacific Conference 2023:2023年12月:タイトル未定
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Report
(3 results)
Research Products
(8 results)