交雑育種によるダリアの日持ち性向上と良日持ちダリア系統の老化抑制機構の解析
Project/Area Number |
20K06026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39030:Horticultural science-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小野崎 隆 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, グループ長補佐 (90355719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 未来 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80783414)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | ダリア / 日持ち性 / 超長命性 / 日持ち日数 / 交雑育種 / 老化関連遺伝子 / 老化 |
Outline of Research at the Start |
ダリアの良日持ち性を目標とした育種は、生産現場や市場関係者からの要請が多くあり、かつ、消費者ニーズが高い。これまでの研究で、日持ちが短い代表的花き品目のダリアについて、3世代にわたる選抜と交配を繰り返すことにより、交雑育種による日持ち性の向上が可能であることが示され、さらなる日持ち性向上の可能性が示唆された。そこで本研究では、さらに世代を進めて、交雑育種による第4世代以降の日持ち性向上効果を検証し、これまでにない日持ち性がさらに向上した超長命性ダリア系統を開発する。さらに、良日持ち性育成品種や今後開発する超長命性系統を活用して、ダリアの花の老化機構や良日持ち性ダリアの老化抑制機構を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は第4世代から超長命性を示す系統003-15を得ることができた、本年度は、日持ち性による選抜と交配を4回行った第5世代等の一次選抜系統58系統の日持ち性を再評価し、36系統を二次選抜した。第5世代選抜系統115-20における冬春期栽培の蒸留水での平均日持ち日数は、従来品種‘かまくら’の6.8日に対し、13.6日と超長命性を示した。系統115-20の夏季高温期(7~8月)採花の抗菌剤液や、高温下(28℃・GLA液)での日持ち日数は、それぞれ、12.3日、10.8日と、高温下の日持ち性にも優れていた。第5世代から良日持ち性品種化候補の2系統(122-15、115-20)が得られた。2022年3月29日に良日持ち性系統交雑種子および自然結実種子合計1257粒を播種し、446個体を露地圃場へ定植した。9月8日までに開花した369実生の日持ち性を評価し、67系統を一次選抜した。 昨年度は、NAC4-4、NAC6-2、NAC7-4、NAC9-8の発現解析を行い、NAC7-4を除く3つのNAC遺伝子の発現量が花の老化前に増加することを明らかにした。本年度はエチレンがNAC遺伝子の発現に関与しているのかを明らかにするため、エチレン処理あるいはエチレン作用阻害剤の1-MCP処理を行い、NAC遺伝子の発現解析を行った。その結果、‘かまくら’、‘ポートライトペアビューティ’、‘ミッチャン’いずれの品種においても、エチレン処理後2日程度で落弁がみられ、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8の発現量はその前に増加した。1-MCP処理の場合には、処理後5日後でも落弁や花弁の萎凋がみられず、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8の発現量の増加も遅れた。以上の結果から、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8はエチレンによって発現が促進される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標の一つに挙げていた超長命性を有する系統の作出について、昨年度の第4世代系統003-15に加えて、第5世代系統115-20が新たに得られ、品種化候補系統が2系統得られた。研究成果の公表についても、日持ち日数による選抜と選抜系統間での交配を4回繰り返した第5世代までの日持ち性の育種経過と超長命性を有する第4世代系統003-15の選抜を取りまとめた英語原著論文を、園芸学会の英文誌The Horticultural Journalに2022年9月に投稿し、2023年1月にアクセプトされた。ダリアの日持ち性向上を目標とした選抜と交配による交雑育種法が、ダリアの日持ち性向上に非常に効果的であることが明らかになった。2020年に品種化した良日持ち性ダリア新品種エターニティシリーズ3品種の全国への普及拡大が進行しており、本研究により選抜された超長命性系統の品種化の可否を今後検討していきたい。 本年度は、ダリアのNAC遺伝子の発現制御にエチレンが関与するのかを明らかにすることを目的とした。‘かまくら’、‘ポートライトペアビューティ’、‘ミッチャン’を用い、エチレン処理あるいは1-MCP処理を行った時のNAC4-4、NAC6-2、NAC7-4、NAC9-8の発現量をリアルタイムPCRによって解析した。その結果、NAC7-4はいずれの処理区でも、発現量の増減に大きな変化はないが、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8はエチレン処理後に発現量が増加することを明らかにした。さらに、1-MCP処理はNAC4-4、NAC6-2、NAC9-8の発現量増加の時期が遅れることを明らかにした。これらの結果は、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8は、エチレンによって発現が促進されることを示しており、花の老化を促進する遺伝子である可能性が高いことを明らかにしたため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年の交雑実生一次選抜系統67系統の日持ち性を冬春期作型で再評価中であるが、超長命性を有する系統が数系統見いだされている。日持ち性は環境の影響が大きい形質であり、夏秋期栽培、冬春期栽培での日持ち日数を再評価して、超長命性の再現性を確認し、二次選抜を進めたい。ダリアは中央アメリカ(主にメキシコ)の高地原産であるため、冷涼な気候を好み、高温に弱い特性を有する。日持ち日数に関しても季節変動があり、冬季に比較して夏季では日持ちが低下することが知られている。超長命性系統では、通常の23℃の温度条件下だけでなく、夏季高温期(7~8月)採花や、高温下(28℃)での高温下の日持ち性にも優れることが示されたので、地球温暖化対策としての高温耐性を有するダリアの育成にもつなげられると考えられる。 2020年度から2022年度までの研究により、NAC転写因子familyに属する複数の遺伝子(NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8)の発現時期が良日持ちダリア系統で遅れることが確認されたため、これらの遺伝子がダリアの花の老化に関与することが推測された。さらに、これらのNAC遺伝子はエチレン処理によって発現が促進し、1-MCP処理によって発現が抑制されることを明らかにした。そこで、次年度以降はこれらNAC遺伝子の機能を明らかにすることを目的とし、遺伝子組換え体の作出を試みる。2023年度は、遺伝子組換え体を作出する準備として、‘ミッチャン’と‘かまくら’の無菌植物体の作出とベクター作成を行う予定である。加えて、NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8のゲノムDNA配列を明らかにし、 ‘かまくら’と良日持ち系統でNAC遺伝子の配列を比較し、変異の有無を確認する予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)