気候変動による穀物生産の不安定化が日本の食糧安全保障に与える影響の解明
Project/Area Number |
20K12191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63040:Environmental impact assessment-related
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 龍平 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70701308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西原 是良 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20714893)
高橋 大輔 拓殖大学, 政経学部, 教授 (30619812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 気候変動 / 作物生産 / 食糧安全保障 |
Outline of Research at the Start |
大規模アンサンブル生育シミュレーションと詳細農地データに基づき,今後の日本の食糧安全保障の見通しを明らかにする.主要4穀物のうち自給ができているコメは自国生産,その他の穀物は日本へ多く輸出する国と世界の主要生産国を対象とする.不作/豊作の発生頻度を明らかにし,農地政策や栽培管理の検証を通して,気候変動の顕在化が懸念される将来において安定した食糧安全保 障を保つための方法を明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
全球スケールの作物生産においては,政府農業研究開発(R&D)投資によるトウモロコシの収量増加が今世紀半ばの温暖化によって受ける影響を解析した.温暖化が著しい場合(SSP585シナリオ)には,温暖化が緩和された場合(SSP126シナリオ)と比較してR&D投資10億ドルあたりの収量の伸びは抑制された.この傾向は所得水準が低い国ほど顕著であり,SSP585シナリオではR&D投資による収量増加はSSP126シナリオの半分にとどまった.途上国では先進国で利用されている農業技術を導入することにより収量が将来伸びる余地が大きいものの,収量の増加は温暖化緩和の進捗に依存することを明らかにした.世界の人口は途上国を中心に増加を続けており,R&D投資による収量の伸びを維持するために温暖化の緩和が不可欠である. 日本はコメの生産量が需要量に対して過剰な状態が続いており,このギャップは人口減少局面に入った21世紀以降深刻化している.政府は生産調整によって生産量を統制し,市場価格を高止まりさせることによって水稲作農家の所得を維持しようとしてきた.しかし,そのために多くの補助金や政策実施に必要な調整コストが浪費されているという批判がある.気候変動は総量として日本のコメ生産量を拡大させる影響が想定され,その場合この政策対応の持続可能性が問われることとなる.一方,コメ生産の過剰に直面した農家は,経営戦略として味覚を重視した高付加価値米の生産をおこなっており,国内の栽培品種はコシヒカリを中心に上位数品種が独占している.これらは地域ごとの特性を無視した品種選択であり,気象条件の変化に対して脆弱になっていると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
温暖化が著しい場合には政府農業研究開発への投資によるトウモロコシの収量増加が低下することを明らかにし,得られた成果を論文に取りまとめた(Yoshida and Iizumi 2023).極端な高温や干ばつの発生による収量への影響について解析を行っている.日本のコメ生産に対しては,すでに述べた生産調整の問題とコメの作付け品種に関する先行研究の整理を問題背景として,シミュレーションから判明した生産量が増大する地域の存在や品質の全国的低下が現在の米政策の持続性にどのような影響を与えるのかを解析している.
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Strategy for Future Research Activity |
大規模アンサンブルシミュレーションによる気候予測結果を活用し,年々の全球作物生産が気候変動によって受ける影響を定量化する.過去観測された高温や干ばつに起因する収量の低下と比較し,安定した食料生産を達成するための方策を構築する.コメ政策に関するレビューとシミュレーションの結果を組み合わせれば,今後の農業政策として過剰生産への対応策をより強化せざるを得ないと考えられるが,それには財政支出の拡大が不可欠となる.生産調整のシナリオとそれが財政的に許容可能な水準かどうかについて分析し,現在の米政策が気候変動によって持続可能性を損なっている可能性を考察する.
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)