Project/Area Number |
20K12978
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Kobe University (2021-2022) Tohoku University (2020) |
Principal Investigator |
石田 雄樹 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (70837153)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 18世紀 / フランス文学 / レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ / 自伝 / 物語論 / ジュール・ミシュレ / 一人称の語り / 美徳 / フランス革命 / 自己語り / 経験論 / 一人称小説 |
Outline of Research at the Start |
近現代文学史において自伝という文学ジャンルはルソーの『告白』によって成立したとみなすのが定説であるが、実際にどのような思想的背景において自伝が誕生したかという問題は未だ明らかではない。また、ルソー以前に多数存在する自伝的作品の成立背景とその相互関係についても十分な研究がなされていないと思われる。そこで本研究は自伝の研究系譜を総合的に整理し、自伝というジャンルの成立過程を明らかにし、近現代文学史において自伝が果たした役割と重要性を再評価することを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、18世紀フランスにおける自伝の生成過程において重要な役割を果たしたレチフ・ド・ラ・ブルトンヌ作品の分析を中心に行った。特にフランス革命下のパリの様相を写実的に描き出したルポルタージュ作品『パリの夜』の検討に取り組んだ。『パリの夜』はレチフが実際に見聞した出来事が記述されており、自伝的要素が重要な役割を担っている。しかし、注意すべきは、レチフ作品の常として、レチフの創作が多分に含まれている点である。そこで、本研究では、そのような『パリの夜』の文体的特徴を物語論的視点から分析した。その結果、人称代名詞・動詞時制・ダイクシス等に着目することによって、効率的にテクスト分析が可能であることを示した。また、虚構と事実の混交という多層性がレチフの自伝の文体の最大の特徴であることを併せて指摘した。 また、同じくフランス革命を題材としたジュール・ミシュレ『フランス革命史』と上記の『パリの夜』を比較分析した。これは著名な歴史書として知られるミシュレの文体とレチフの文体を比較することにより、18世紀フランスにおける自伝的テクストの特徴をより詳細に明らかにすることを目指したためである。分析の結果、ミシュレにおいてはレチフにも見られる語りの多層性がより発展した形で観察できること、内容面においてはミシュレは国民主義的な意識が強く、フランス人というアイデンティティの構築を目指していることを明らかにした。一方、レチフにおいては、ミシュレほど叙述の技法は洗練されてはいないが、フランス革命を当事者として生きた迫真性こそが『パリの夜』の大きな特徴であること、また、革命という苦難を経て、レチフは自身の文学の目標を自伝的文学の執筆による個人的幸福の実現とするに至ったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀フランスにおいて、自伝という文学ジャンルがルソー『告白』によって成立したことは文学史の定説ではあるが、『告白』以外にも多数の自伝文学が執筆されている。本研究は、これまでフランス文学研究において、あまり顧みられることのなかったルソー以外の自伝作品に着目し、18世紀フランスにおいて自伝文学がどのように成立したかを検討するものである。そこで本研究では、18世紀フランスで最も多くの自伝的作品を著したレチフ・ド・ラ・ブルトンヌを主要な研究対象としている。 レチフ作品は膨大な分量で知られており、レチフにおける自伝の生成過程を明らかにする上では、すべての作品を検討することが本来であれば望ましいが、物理的にそれはほぼ不可能である。そこで本研究ではレチフの著名な自伝作品に分析を限定することにした。これまでに、自伝『ムッシュー・ニコラ』、ルポルタージュ作品『パリの夜』、自伝的小説『ルヴィ』の分析を行い、その文体的特徴を物語論的観点から分析した。特に、これまで石田が提唱してきた「語りABC仮説」に基づき、上記の自伝における語りの多層性の特徴と、それがもたらす文学的効果を明らかにすることができた点が、大きな成果であると考えている。 しかし、レチフ作品には上記以外にも重要な自伝的作品が存在する。例えば、『堕落農民男女』や『同時代女』、『わが父の生涯』である。これら作品の分析を、今後、行っていく予定である。 また、言語学的・物語論的分析だけではなく、テーマ的分析を十分に行う必要があるが、現時点では不十分と言わざるを得ない。レチフにおいては、自伝執筆こそが、彼が目指した幸福へ至る手段であったのであり、「文学と幸福」という観点から自伝を検討することもまた必要不可欠であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
レチフの自伝的作品の分析をさらに拡充していく予定である。具体的には、『わが父の生涯』、『堕落農民男女』、『同時代女』の検討を予定している。レチフは自伝的要素に固執した作家ではあるが、同時にまた多種多様なジャンルに挑戦した作家であることも知られている。自伝の生成過程を考察する上では、単に自伝作品だけを検討すれば良いのではなく、他のジャンル、例えば、「小説」「劇作品」「韻文」「社会改革論」などにおいて、どのように自伝的要素が活用されているかを検討する必要がある。というのも、18世紀フランスは、ジョン・ロックに代表されるイギリス経験論の影響により、個人の人生・経験を描くことが人間学への寄与になるという共通理解が生まれ、自伝的作品が多数執筆されるようになったからである。あらゆるジャンルにおける自伝的要素の扱われ方を考慮することが、自伝の生成過程を考察するためには不可欠であると言えるだろう。 また、テーマ的分析も併せて行っていく予定である。自伝的要素は、語りの多層性を活用する文体を生む上で、大きな影響力を持ったが、また同時に「自己」というテーマに文学者たちを向かわせる大きな要因でもあった。特にレチフにおいては、自伝という問題意識が、「幸福の探究」と不可分の関係にある。というのも、レチフ思想にあっては、文学という想像力によって理想的な人生を再創造することが重要な位置を占めているからである。レチフの自伝的作品を比較分析することにより、レチフにおいて自伝がどのような問題意識で捉えられていたか、また自伝執筆がどのような幸福をもたらすものと考えられていたか、明らかにする必要がある。加えて、ルソーに代表される、レチフ以外の作家による自伝と比較することにより、18世紀フランスにおいて自伝と幸福というテーマがどのような関連性にあったかを検討する予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(12 results)
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[Book] 語りと主観性2022
Author(s)
阿部 宏
Total Pages
400
Publisher
ひつじ書房
ISBN
4823411056
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