磁性体における新規輸送現象 ―対称性とトポロジーの観点から―
Project/Area Number |
20K14411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤城 裕 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20739437)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | スピン液晶 / スピンネマティック相 / 磁気四重極子 / ダイナミクス / 磁性体 / 輸送現象 / 物性理論 / スキルミオン / スピンNernst効果 / 非線形応答 / ベリー曲率双極子 / 分数スキルミオン / トポロジカル相 / トポロジカル不変量 / 指数定理 |
Outline of Research at the Start |
熱ホール伝導度の半整数量子化が最近観測され、磁性体における非自明なトポロジーに由来した輸送現象は益々注目を集めています。そのため、磁性体の基礎的準粒子であるマグノンに由来したトポロジカル物性の研究は急務と言えます。本研究では、磁性体ならではである、空間対称操作と時間反転操作とを組み合わせた“結晶”対称性に保護されたマグノン系トポロジカル相の提案と、関連した新規輸送現象の予言を行います。また、マグノン系トポロジカル相の乱れ・温度揺らぎに対する安定性を、非可換指数定理の拡張等を行うことで明らかにします。
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Outline of Annual Research Achievements |
量子磁性体の古典的極限を考えるとき、個々のスピンをO(3)ベクトルと考えるのが通例であり、スピン1/2の磁性体における通常の磁気秩序に対して、半古典的なレベルで驚くほどうまく記述できる。しかし、S>1/2のような磁性体は「より古典的」であると考えられるにもかかわらず、O(3)ベクトルではその特性の多くを説明することはできない。特に、磁性絶縁体、冷却原子系等において実現の可能性が示唆されている単一サイトで磁気四重極子を持つ状態を記述することはできない。これらの問題に対しては、古典的な極限を別の形でとらえる必要があり、そのために新しいツールが必要である。 そこで我々は、S=1量子磁性体の半古典的特性を正しく記述する新しい方法を確立した。この新しい方法を、三角格子上のS=1 bilinear biquadratic模型の磁気四重極子状態(スピンネマティック状態、スピン液晶状態)に適用し、解析的に求められる古典的低温展開やflavor wave理論と、古典的モンテカルロ法や分子動力学シミュレーションなどの数値計算との比較を通じ、その妥当性を確かめた。そして、本手法の大きな成果として、半古典分子動力学シミュレーションによる動的構造因子に補正項ω/Tを加えT→0の極限を取ることで、T=0のflavor wave理論による量子論の結果を再現できることを明らかにした。また、実験との関連性を考慮し、本手法が(様々な)異方性を持つ模型にも適用できることを確かめた。この手法は、任意のスピンの長さの量子磁性体へ拡張することも可能である。 本年度は他にも、一般化Dzyaloshinskii-Moriya相互作用を含んだスピン1の強磁性体の模型においてスピン液晶スキルミオン結晶やスピン液晶メロン結晶が現れることも明らかにした。上記の手法はこの模型にも適用可能であり、新規物性、新規輸送現象が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したように、スピン1の量子磁性体の半古典的特性を正しく記述する新しい方法を確立できたため。これは、スピン1の量子磁性体におけるダイナミクス/輸送特性を捉えるためにも重要な進展である。また、当初の計画にはなかった、スピン液晶スキルミオン結晶やスピン液晶メロン結晶(系の秩序変数空間がCP^2であることから、CP^2スキルミオン/メロン結晶とも呼べる)が、スピン1の量子磁性体の模型で現れることも明らかにしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は「磁性体における新規相・新規現象を対称性とトポロジーの観点から明らかにする」ことである。研究計画通り、これまでの研究で磁性体における準粒子であるマグノンによる新しいトポロジカル物性やその輸送現象を明らかにしただけでなく、研究計画には含まれていなかった、スピン液晶スキルミオン結晶やスピン液晶メロン結晶がスピン1の量子磁性体の模型で現れることも明らかにした。こうしたトポロジカルに新しい状態における静的・動的性質を詳細に調べることで新規物性・輸送現象を明らかにする。
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Report
(3 results)
Research Products
(69 results)