Project/Area Number |
21H00605
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 経営推進部, 准教授 (90599226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤藤 匠 (蔦谷匠) 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (80758813)
板橋 悠 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80782672)
太田 博樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)
近藤 洋平 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20634140)
三木 健裕 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (30898309)
黒沼 太一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (10847362)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2021: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 歴史生態 / 千年持続可能性 / 古代プロテオミクス / 考古地理 / オマーン / アラビア |
Outline of Research at the Start |
オマーン・アフダル山麓のタヌーフ峡谷において、紀元前2千年紀のワディ・スーク期に利用されたとみられる洞穴の発掘および墓地の記録調査を通して土地利用と景観を復元し、洞穴堆積物中のヤギ糞石等の安定同位体・タンパク質・ゲノム分析に基づく古生態復元とイスラーム受容期の文献調査に基づく思想復元の成果と総合することにより、アラビア乾燥地の水源山麓峡谷における千年持続可能な社会の基盤となる生態文化的要因を特定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
考古班(近藤康久、三木、黒沼)は、2022年12月下旬から2023年1月中旬にかけて、オマーン内陸部タヌーフ峡谷に所在するムガーラ・アルキャフ洞穴遺跡の発掘調査と、近傍諸遺跡の記録調査を実施した。洞穴遺跡の発掘にあたっては、過年度の発掘区の隣に新たな発掘区を設定し、堆積層序を対照させながら掘り進めた。この調査に古生態班の板橋が同行し、堆積物からヤギ糞石・ナツメヤシ種子ならびに年代測定用の炭化物試料を採取した。これらの試料は現地当局の許可を得て日本に持ち帰った。なお、現地調査に先立ち、黒沼が南東アラビアの遺跡目録を編輯するとともに、8月下旬および12月中旬にマスカットの遺産観光省収蔵庫にて資料調査を実施した。また、三木が洞穴遺跡等から出土した土器片の薄片岩石学分析と機器中性子放射化分析を実施した。その結果、土器の胎土は岩石学的に多様であり、時期によって粘土産地が異なることがわかった。
古生態班(蔦谷、板橋、太田)は、古代ゲノム解析、古代プロテオーム解析、および安定同位体分析に着手した。古代ゲノムについては、葉緑体ゲノム(ベイト)に含まれる2つの遺伝子を捕捉するために、現生の食用植物を用いてベイトの濃縮効率を測る実験を実施した。その結果、食用植物種間のばらつきは小さく、ベイトとして十分に機能することがわかった。また、糞石DNAを模した実験系でも同様の結果が得られた。古代プロテオームについては、現生の糞資料を用いて、抽出方法の最適化条件を検討した。安定同位体については、現代のウマ・ウシ糞を用いて糞石から食性を推定するための基礎実験を実施した。また、現地で採取した炭化物を処理し、放射性炭素年代測定に供した。
思想班(近藤洋平)は、オマーンで優勢なイスラームの宗派イバード派の法学書などを読解し、イスラーム成立による諸制度の変化が、現地社会にどのような影響を及ぼしたかについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度が3年計画の第二年度にあたる。前年度にコロナ禍により現地調査を実施できなかった遅れを、今年度の調査により取り戻した。また、コロナ禍中のデスクワークの成果に基づいて原著論文3報(Miki et al. 2022, Kuronuma et al. 2022a, 2022b)を発表することができた。さらに前年度から今年度にかけて編輯したオンライン遺跡目録が完成し、東京大学駒場博物館の展示や現地踏査に活用できた。遺跡出土試料の分析はこれからではあるものの、古代ゲノム解析においては、現生食用植物を用いた実験によりカスタム・ベイトが糞石ゲノム解析にも有効であることが示されるなど、古生態班の実験系も概ね確立した。本研究課題の中核となる山麓峡谷の歴史景観に関する研究が格段に進展したことから、分析試料の入手遅れを差し引いたとしても、おおむね順調に進展しているものと自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が3年計画の最終年度にあたる。古生態班は、ムガーラ・アルキャフ洞穴遺跡から採取した糞石の古代プロテオーム解析を重点的に推進するとともに、古代DNAの抽出を試みる。年代測定については板橋が炭化物サンプルを前処理後、東京大学総合研究博物館年代測定室に加速器質量分析(AMS)法による測定を依頼する。考古班は2023年12月から2024年1月にかけて墓地遺跡の発掘調査及び記録調査を実施するとともに、ハジャル山脈のトレッキング経路の踏査を行う。思想班は初期イスラーム文献の収集とモスクの建築調査を実施する。年度末に研究会を催して各班の成果を取りまとめ、環境と景観の変化の観点から千年持続可能な社会基盤のありようを多角的に考察する。また、本研究は今後さらに発展するポテンシャルが高いので、後継の科研費を申請する所存である。
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