宿主にとってよそ者であるプラスミド自身が外来遺伝子のサイレンサーを持つ理由の解明
Project/Area Number |
21H02097
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水口 千穂 (鈴木千穂) 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10733032)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥16,900,000 (Direct Cost: ¥13,000,000、Indirect Cost: ¥3,900,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
|
Keywords | プラスミド / 核様体タンパク質 / H-NS |
Outline of Research at the Start |
細菌に広く保存されるH-NSファミリータンパク質は、外来遺伝子領域の発現を抑えることで宿主への負荷を軽減する作用を持つが、巨大な外来DNAであるプラスミド(細胞間を「渡り歩く」遺伝因子)にもコードされている。本研究では、プラスミドと染色体に同じ種類のH-NSファミリータンパク質がコードされていることに着目し、プラスミド由来の因子と染色体由来の因子がどのように協同し合って機能するのか、なぜ他の種類のH-NSファミリータンパク質ではダメなのかを、分子生物学的手法により明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラスミドと宿主染色体にコードされるH-NSファミリータンパク質(核様体タンパク質の一種)が協調的に機能するメカニズムを様々なホモログで明らかにすると同時に、各ホモログ間での共通点と相違点を明らかにすることを目指している。2022年度はH-NSファミリータンパク質の二量体・多量体形成様式の比較を行うため、Pseudomonas putida KT2440株染色体由来のTurBについて構造解析を実施した。私達は過去にTurBの二量体・多量体化ドメインの結晶構造を明らかにしているものの (FEBS Lett., 2016, 590: 3583-94)、当時は多量体形成に必要な二箇所の二量体化部位のうちterminal dimerization site (TDS) にアラニン置換を導入したタンパク質を使用していた。そこで本研究ではcentral dimerization site (CDS) の一部を除去したタンパク質を使用し、分解能2.7Åで結晶構造を決定することで、アラニン置換を含まないTDSの二量体形成機構を明らかとした。TDSの構造が腸内細菌のH-NSとは大きく異なっていたことから、H-NSが腸内細菌の、TurBがPseudomonas属細菌の核様体形成に特化した進化を遂げた可能性を示唆していると考えられた。 一方、昨年度の研究から、Pseudomonas resinovorans CA10dm4株の染色体上遺伝子mvaTを破壊すると、プラスミドpCAR1の宿主細胞内での安定性が著しく低下することが明らかとなっていた。そこでCA10dm4株のmvaT破壊株を材料として、MvaTと他のH-NSファミリータンパク質との互換性の評価を試みたが、pCAR1と相補用ベクターを宿主に同時に保持させることが困難であったため、今後は染色体からの相補を試みることにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、2022年度はH-NSファミリータンパク質の二量体・多量体形成機構の多様性の評価について一定の成果を得ることができた。しかし、当初計画していたP. resinovorans CA10dm4株のmvaT破壊株を材料としたH-NSファミリータンパク質の互換性の評価については、実験系の構築で難航したため思うように進まなかった。一方、pCAR1にはMvaTのホモログであるPmrがコードされているため、CA10dm4株のmvaT破壊株でpCAR1が不安定化する現象は、Pmrが染色体由来MvaTの機能を相補できていないことを示唆している。そこでPmrとMvaTの機能の違いをタンパク質レベルで検証するため、大腸菌を宿主とした異種発現に取り組んだが、PmrやP. putida KT2440株染色体由来のTurA、TurBが容易に発現・精製可能であったのに対し、MvaTは様々な条件を変更しても大腸菌内で発現させることができなかった。これらの結果は、他の細菌種のH-NSファミリータンパク質だけでなく、Pseudomonas属細菌のMvaTホモログ内にも機能の多様性があることを示唆している。以上の状況から、難航している点はあるものの、今後研究を進める上で重要な知見が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
P. resinovorans CA10dm4株のmvaT破壊株を材料としたH-NSファミリータンパク質の互換性の評価については、今後は染色体からの相補を試みることとする。一方で、CA10dm4株由来のMvaTがPseudomonas属細菌の他のMvaTホモログとも異なる機能を有する可能性があるため、他種のH-NSファミリータンパク質との比較だけでなく、MvaTホモログ内での比較も進めていく。今年度の結果から、大腸菌を宿主としたMvaTの異種発現は困難であると判断し、今後はCA10dm4株から直接MvaTを精製し機能解析を進める計画である。また、二量体・多量体形成機構の多様性の評価では、構造未知のH-NSファミリータンパク質についてはAlphaFoldやMDシミュレーションも利用しながら評価を進めたいと考えている。
|
Report
(2 results)
Research Products
(7 results)