Project/Area Number |
21H03824
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90120:Biomaterials-related
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松平 崇 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20570998)
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
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Keywords | 人工酸素運搬体 / 輸血代替 / 虚血再灌流障害 / 一酸化炭素 / 組織酸素化 / 蘇生液 / 出血性ショック / リポソーム |
Outline of Research at the Start |
人工赤血球「ヘモグロビン ベシクル, HbV」は、高純度・高濃度ヒトHbをリポソームに内包した微粒子であり、体内での高い酸素運搬機能が実証されている。しかし、出血性ショックの救命蘇生において、再灌流傷害を如何に抑えるか、また輸血治療までの繋ぎとして酸素運搬機能をどこまで持続できるかが課題である。本研究では、一酸化炭素(CO)を結合させたCO-HbVを投与し、COの徐放により再灌流傷害を「安全に」緩和しつつ、COを徐放して変換されたO2-HbVのO2運搬機能を長時間維持する方法を検証し、輸血治療の補完の役割を担うHbV製剤の機能向上をはかり、救急・救命医療に貢献することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
人工赤血球「ヘモグロビン ベシクル, HbV」は、高純度・高濃度ヒトHbを脂質膜(リポソーム)で包んだ微粒子であり、体内での高い酸素運搬機能が実証されている。しかし、出血性ショックの救命蘇生において、再灌流傷害を如何に抑えるか、また輸血治療までの繋ぎとして酸素運搬機能をどこまで持続できるかが課題である。本研究では、一酸化炭素(CO)を結合させたCO-HbVを投与し、COの徐放により再灌流傷害を「安全に」緩和しつつ、COを徐放して変換されたO2-HbVの酸素運搬機能を長時間維持する方法を動物試験(ラット)により検証し、出血性ショックに対する新規蘇生法として提案することを第一の目的としている。
令和4年度は、CO-HbVから解離したCOの中枢神経系への毒性を精査するため、CO-HbVをラットに単回投与したあとの行動学的観察を行い、その結果を精査し、また病理学的所見を加え、論文発表することができた (Curr. Res. Pharmacol. Drug Discov.2022)。ラットにCO-HbVの静脈内負荷投与(16 mL/kg, 32 mL/kg)において、機能観察総合評価、感覚応答検査などを評価した。対照群として生理食塩水32mL/kgとした。投与後5分、4, 8, 24, 48, 72時間を測定ポイントとした。意外にもCO毒性を示唆する兆候は一切無かった。また、脳海馬の病理組織学的検討(H/E染色)の結果、海馬組織に病理学的変化は無く、壊死細胞数も殆ど増加していなかった。従って、CO-HbVから遊離したCOが いわゆるCO中毒の兆候を生じないことがあらためて証明できた。しかし、齧歯類での評価試験であり、毒性が無いことについては、今後も継続して慎重に精査をする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COを結合したHbVの投与試験(ラット)から、いわゆるCO中毒の毒性が現れていないことが再確認され、論文発表することができた。組織病理学的のみならず、行動学的にも毒性が無いことが明らかになった。また、研究協力者らにより動物モデルを用い、CO-HbVのその他の効能(血管腫のレーザー治療のターゲット)についても明らかになり、論文に掲載され、CO毒性の有無を明らかにする本研究の重要性を再認識するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
CO-HbVから解離したCOがいわゆるCO中毒の症状を生じないことについては、齧歯類であるがほぼ実証するに至った。ただ、CO中毒の後遺症として記銘力に影響するとの報告もあり、この実験の可否についてまず検討する必要がある。他方、CO-HbVの投与が虚血再灌流障害など活性酸素種の関与する障害の低減に有効であることについて、その機序の一つとして活性酸素種がCOと直接反応するか否かについて検証を行う。また、出血性ショック蘇生試験を行い、心筋への影響についても血液生化学的検討により精査する。
投与後にHbV粒子内に生じたmetHbを還元(Fe3+→Fe2+)させるには、メチレンブルー(MB)よりも、同じphenothiazine系の色素であるAzure B (AZB)を投与した方が優れる結果を得ている。これは、MBに比べAZBの方が脂質膜に取込まれ易く、赤血球内のNAD(P)Hにより還元され易く、またその還元体が酸素酸化を受け難い性質に起因する。そこでAZBについて、投与量/投与間隔を最適化し、HbVのO2運搬機能の質的向上を目指す。しかし、実用面では既に医薬品として認可されているMBの使用に留まると考えられるので、MBの至適使用法を検討する。また、NADHとHbO2の共存により擬似的なカタラーゼ、SOD活性を呈することが明らかにされているが、この作用機序をさらに明らかにするため、令和5年度もNADH-Hb共存系の結晶の形成条件を詰めて、その構造解析を試みる。
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