個体ごとの表現型を決める非細胞死カスパーゼ活性化機構の解明
Project/Area Number |
21H04774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 44:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 正幸 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50202338)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥41,600,000 (Direct Cost: ¥32,000,000、Indirect Cost: ¥9,600,000)
Fiscal Year 2023: ¥16,250,000 (Direct Cost: ¥12,500,000、Indirect Cost: ¥3,750,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,250,000 (Direct Cost: ¥12,500,000、Indirect Cost: ¥3,750,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | カスパーゼ / 非細胞死 / 個体差 / 遺伝学 / ショウジョウバエ / 非アポトーシス / 表現度 |
Outline of Research at the Start |
個体ごとに身長や疾患感受性といった表現型に強弱が現れるが、その違い(表現度:expressivity)を生み出す機構は殆どが不明である。我々はカスパーゼの非アポトーシス機能としての基質プロセッシング(Basal Caspase Processing: BCP)が表現度に関わる知見を得ている。本研究では新たな技術を導入し、カスパーゼ作用「場」の包括的分子同定によってこれまで未知のBCP 活性化プラットフォームとその作用メカニズムを遺伝学的、生化学的に明らかにすることで表現度の制御機構を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ある一つの遺伝子変異がもたらす表現型が異なる事例は数多く知られる。遺伝的な量的形質因子の関与や生育環境の違いによるエピゲノム制御がその要因として挙げられる。しかし、それらで説明がつかない事例も存在し、個体ごとの表現型の強弱といった違い(表現度:expressivity)を生み出す決定的な機構の研究はいまだ断片的である。遺伝子型が同じでも異なる表現型を生む機構で重要なものとしてプロテオスタシスがあり、HSP90シャペロンの関与が知られるが、我々は基質特異性の高いカスパーゼによる蛋白質プロセッシングが重要な仕組みとして機能する知見を得ている。この表現度を制御するカスパーゼ活性は細胞死を誘導するものではなく、その制御機構は殆ど明らかになっていない。本研究では遺伝学的な解析に最適なショウジョウバエと哺乳類細胞を用い、非細胞死性のカスパーゼ活性による特定の基質プロセッシング(Basal Caspase Processing: BCP)によって表現度を決めるメカニズムの理解から発生の頑強性、ストレス応答や健康寿命を支える新たな仕組みの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アポトーシス時の強力な活性化の影に隠れて見えづらかったBCP活性化の研究は、その生理機能を理解する上で鍵となる重要度を持つ。カスパーゼが活性化し機能する微小環境である「BCP場」を包括的に捉えるためカスパーゼ近傍に存在するタンパク質を近接依存標識法TurboIDによってショウジョウバエ組織、細胞、ヒト培養細胞用いて同定した。その結果、ショウジョウバエ神経組織やS2培養細胞において、非細胞死レベルでのショウジョウバエカスカーゼ活性化を誘導しうる候補分子を見出した。BCP場では局所での微弱なカスパーゼ活性があり、生理機能を調節すると考えられる。よって、細胞内局所でのカスパーゼ活性化をFRET probeによって検出するプローブを作成した。これにより、刺激に応じた非アポトーシスカスパーゼの活性化動態を調べる。非アポトーシスパスパーゼの生理機能を明らかにするためには基質の同定が重要である。紡錘体チェックポイント分子を基質として明らかにし、カスパーゼ切断耐性基質を持つ変異体を作成した。この変異体解析によって、基質切断の意義に迫る研究を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度得られたカスパーゼ近傍タンパク質の非アポトーシスカスパーゼ活性調節における役割を遺伝生化学的に明らかにする。具体的には、Gal4/UASシステムを利用した高感度カスパーゼ活性検出レポーター (CaspaseTracker) の原理を応用し、特定の細胞種のみで高感度かつ非侵襲的にカスパーゼ活性化動態を補足するレポーター系統を作出する。作出した系統を用いて、近傍タンパク質の非アポトーシスカスパーゼ活性化動態への影響を生体で評価する。非侵襲的な評価が可能なことから、カスパーゼ活性化の度合いで個体を選別し、非アポトーシスカスパーゼ活性が関与する表現度との相関を評価することで、表現度を決めるメカニズムの理解を目指す。Basal Caspase Processing (BCP)によって影響される表現度はストレス応答や生理機能に作用するのかを検証する。カスパーゼ活性が減弱すると大剛毛数のばらつきが大きくなり、表現度の異なる個体を得やすくなる。個体ごとの表現度は様々な要素の重ね合わせの結果生まれる量的な形質であるため複数の遺伝子座が関与することが想定される。ショウジョウバエにはゲノム配列が解読された約200系統の野生型(Drosophila Genetic Reference Panel (DGRP) 系統が整備されており、Genome-Wide Association (GWA) mappingを用いたゲノムワイドスクリーニングが可能である。DGRPを用いた大剛毛数のばらつきを指標にしたスクリーニングによりBCPに関わるゲノム領域を同定する。GWAS解析は遺伝子自体のみならずエンハンサーやuntranslated regionも含めた検証が可能であり、これまでのノックダウンやノックアウトだけでは明らかにならなかった制御機能の解明につながることが期待される。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)