植物の土壌リン獲得シンドロームの解明と新たな陸域生態系リン循環モデルの構築
Project/Area Number |
21H04780
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 45:Biology at organismal to population levels and anthropology, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 農学研究科, 名誉教授 (20324684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江澤 辰広 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (40273213)
向井 真那 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60909159)
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (80456748)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥36,660,000 (Direct Cost: ¥28,200,000、Indirect Cost: ¥8,460,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,530,000 (Direct Cost: ¥8,100,000、Indirect Cost: ¥2,430,000)
Fiscal Year 2022: ¥10,530,000 (Direct Cost: ¥8,100,000、Indirect Cost: ¥2,430,000)
Fiscal Year 2021: ¥15,600,000 (Direct Cost: ¥12,000,000、Indirect Cost: ¥3,600,000)
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Keywords | 土壌リン / フォスファターゼ / 有機酸 / 共生菌根菌 / リン循環 |
Outline of Research at the Start |
必須元素のリンは生態系の循環過程で難溶性あるいは難分解性の形態に変化し、樹木はリン欠乏に陥るとされてきた。樹木細根あるいは共生菌根菌は難溶化した土壌無機態リンに対して有機酸を滲出し、難分解化した土壌有機態リンに対してフォスファターゼを分泌しリン獲得を最適化し維持している。本研究では、土壌中のリン画分の量比と樹木の窒素・リンへの資源要求性により、有機酸生産/フォスファターゼ生産/共生菌根菌の比率が樹種特異的に決定され、樹木群集が成り立つことを検証する。本研究では、この樹木の多様なリン獲得メカニズムを「リン獲得シンドローム」と呼び、その全容を解明し、新たな陸域生態系のリン循環モデルを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度の調査研究を補完するために、広い地理的分布を持つ外生菌根生樹種コナラを対象にして、新たに国内の調査地8箇所において細根のフォスファターゼ活性と有機酸滲出物速度の測定を行った。測定方法は前年度と同様である。有機酸滲出速度は、シリンジ装着法(Sun et al. 2017)により決定した。また、同じ樹木個体から新鮮な細根を切断して採集し、冷蔵して京都大学に輸送した。採集から24時間以内に、4つの基質を用いて、4種類のフォスファターゼ活性(ホスホモノエステラーゼ、ホスホジエステラーゼ、フィターゼ、ピロフォスファターゼ)を決定した。 前年度のデータと合わせて統計解析した結果、ホスホモノエステラーゼ、フィターゼ、ピロフォスファターゼの3種類の細根フォスファターゼには有意なサイト間差が認められた。有意なサイト間差は示さなかったものの、ホスホジエステラーゼはホスホモノエステラーゼと正の関係があった。どのサイトにおいても、ホスホモノエステラーゼは他の酵素よりも1~2オーダー高い活性を示した。構造方程式モデリングを用いて、各酵素の活性が土壌有機態リン基質濃度と反応生成物濃度(土壌リン酸濃度)によってどのように影響を受けているのかを解析したところ、ホスホモノエステラーゼは反応生成物濃度と負の関係を示した。以上から、幅広い土壌リン濃度に生育して優占するコナラは、土壌中に最も多く存在するモノエステル態の土壌有機態リンに最も強く依存してリンを獲得し、ホスホモノエステラーゼ活性は土壌中のリン酸濃度によって決定されている可能性が示唆された。また、他の3つの酵素はホスホモノエステラーゼによるリン獲得を補う役目を持っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の想定に反して、予定していた抽出条件では土壌有機態リン画分とDNAが抽出できないことが判明し、抽出条件の再検討を行った。このため、研究はやや遅れている。しかしながら、成果は多く出ており、日本生態学会と日本森林学会で複数の発表を行った。国際誌への論文投稿も行い、審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
細根フォスファターゼ活性のサイト間差は遺伝的に決定されているのか、あるいは順化によって調整された結果なのかを、共通圃場試験によって検証する。調査地14箇所のうち、高リンサイトを3箇所、低リンサイトを3箇所選び、各サイトからコナラ母樹を10本ランダムに選び、各個体の周辺からコナラの果実(ドングリ)を多数採集する。ドングリは京大に持ち帰り、ポットに播種し、室内の一定照度下で育苗する。6月にビニールハウスに移し、リン酸以外の必須元素を定期的に与え、育苗を続ける。秋に実生をポットから掘り出し、細根を洗い出して、細根ホスホモノエステラーゼ活性を決定する。さらに、コナラ細根ホスファターゼ活性の集団間変異が遺伝的に固定されたものかどうかを明らかにするために、DNA解析を行う。まず、各サイトの実生集団20個体から葉を採取し、DNAを抽出する。ddRAD法でライブラリーを作成、RAD-seqでSNPを中立マーカーとして検出する。全集団(6産地)と各集団の遺伝的多様度からコナラ6集団の中立な遺伝情報の分化度を算出する。次に、細根ホスホモノエステラーゼ活性の分化度と中立マーカーの遺伝情報の分化度を比較することで、リン獲得形質に局所適応が成立しているのかを明らかにする。 以上とは別に、1つの森林生態系内でリン獲得形質の樹種多様性を解明するために、モデル試験地を1箇所選び、共存する多樹種の細根フォスファターゼ活性と細根有機酸滲出速度の樹種間差を調べる。細根の形質、細根が集中する土壌深度、深度毎の土壌理化学性(特に有機態リン画分)を調べ、リン獲得形質の樹種間差がどのような要因と関係しているのかを解明する。
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Report
(3 results)
Research Products
(8 results)