Vulnerability as a Beginning of Care in American Modernist Literature
Project/Area Number |
21K00348
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
井出 達郎 東北学院大学, 文学部, 准教授 (60635986)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 傷つきやすさ / ヴァルネラビリティ / ケア / モダニズム |
Outline of Research at the Start |
伝統的に個人の自律性に重きを置いていたアメリカにおいて、とりわけその自己のあり方が国家および個人レベルで大きく揺らいだモダニズム期の文学作品群に注目し、個人の自律性の理念からは否定的に克服すべきものとされてきた「傷つきやすさ(vulnerability)」のモチーフを拾い上げ、それが他者への「ケア(care)」という積極的な意味の物語を生み出してきたことを浮き彫りにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、伝統的に個人の自律性に重きを置いていたアメリカにおいて、とりわけその自己のあり方が国家および個人レベルで大きく揺らいだモダニズム期の文学作品群に注目し、個人の自律性の理念からは否定的に克服すべきものとされてきた「傷つきやすさ(vulnerability)」のモチーフを拾い上げ、それが他者への「ケア(care)」という積極的な意味の物語を生み出してきたことを浮き彫りにする、というものである。2022年度においては、前年度に口頭発表したF.スコット・フィッツジェラルドにおける時間の主題を発展させ、ジャンナ・ソンプソンらの議論から「時間的傷つきやすさ(temporal vulnerability)」という新しい視点を得ることができた。その視点をもとに、日本フィッツジェラルド協会のワーク・イン・プログレスにてフィッツジェラルドの『夜はやさし』を取り上げ、これまで他の作品から論じてきた「責任/応答」という主題と関連させつつ、従来フィッツジェラルド作品において「欠陥」として言われていた時間的な混乱が、むしろ「時間的な傷つきやすさ」を提示するために必然的に要請される積極的なモチーフとなっている、という解釈を提示した。その内容を発展させ、2023年度に開催されるアメリカのフィッツジェラルド協会の国際学会の発表のプロポーザルとして申請し、受理された。この研究は、近年の哲学や社会学における「責任/応答」への問いと共鳴しつつ、コロナ禍以降引き続き注目を集めている傷つきやすさとケアという主題の新たな可能性をひらくものになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成果として、時間的な傷つきやすさという新しい視点をもとに、国際学会での発表予定につなげることができた。また、研究対象としているF.スコット・フィッツジェラルド、レイモンド・チャンドラー、ヘンリー・ミラー、J・D・サリンジャーという個別の作家に対し、それぞれ「応答/責任」、「世界の中に在ること」、「非の潜勢力」、「非在」という論点を固めることができた。さらに、本研究の大枠について、「共同性」や「有限性」など、自律的な主体を問い直す視点から活性化しているモダニズム研究の新しい流れとの関連性を確認し、最終年度に向けて研究をまとめる地盤を固めることができた。しかし、こうした成果の一方で、個々の作家についての研究を具体的な論文や学会発表のかたちに結実させることができず、全体としては準備作業に留まってしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の大枠のテーマのもとに、研究対象としている四人の作家について、2022年に固めた論点からこれまでの成果を整え、全体を単著としてまとめる。特に、従来は自律的な主体のイメージと関連づけられがちな四人の男性作家を傷つきやすさとケアという視点から新たに捉え直すことで、単純な介護や福祉のイメージに収まらない、他者との多様なつながりとしてのケアの可能性がひらかれることを目指す。加えて、すでに予定されているF.スコット・フィッツジェラルドの国際学会の口頭発表を英語の論文としてまとめる。それを足掛かりに、フィッツジェラルドにおける時間的な傷つきやすさについての考察を進め、本研究の今後の可能性を探っていく。
|
Report
(2 results)
Research Products
(3 results)