地域共生社会の実現に向けたユニット型特養入所者の社会関係を支える方策
Project/Area Number |
21K02091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
立松 麻衣子 奈良教育大学, 家庭科教育講座, 教授 (60389244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 高齢者 / 居住性 / 社会関係 / ユニット型特養 / 地域居住 / 地域共生社会 |
Outline of Research at the Start |
ユニット型特養では入所者の重度化によって入所者相互やスタッフとの関係、家族関係を維持することに困難が生じているおそれがある。一方で、地域では認知症カフェ等の互助活動が広がっているが、それらは活動継続が保障されていない。 本研究は、ユニット型特養の居住性の向上を目指して、入所者の重度化によるケアの課題を明らかにする。そして入所者の家族関係を維持する方法、施設と地域互助活動をつなぐ方法を検討し、入所者の社会関係を支える方策を探る。これによって、入所者の社会関係を持続的に支える方策、ユニットケアの現代的意義、施設と地域が一体となった地域共生社会の実現に向けた方策を示すことができると考える。
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Outline of Annual Research Achievements |
ユニットケアは「相互に社会関係を築き自律的な生活を営む」「役割をもって生活を営む」「入所前の生活の連続性を図る」等を目指して制度化された。しかし、今、ユニット型特養においては、入所者の重度化、スタッフ不足等によって、入所者の社会関係を維持することが難しくなっている。本研究では、居住環境整備がなされたユニット型特養(ハード)のなかで経年により生じた施設入所者の居住性の課題に対して、ケア(ソフト)による解決策を示そうとしている。 令和4年度、ユニットケアの課題を明らかにするために「A.ユニット型特養に対する質問紙調査」を予定していた。しかし、夏には新型コロナウィルスの感染第7波、冬には第8波の流行があり、昨年度に続き全国特養では感染防止対策が喫緊の課題となった。そのため、再度、本研究計画の立て直しを行った。 令和4年度は、本研究への協力を得た特養部長から、「B.家族研修」の内容についてレクチャーを受けた。そして、令和5年度実施予定の「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」においてどのような目的で入ってもらうか、家族に対してどのような研修を行うか等について話し合った。一方で、要介護者の入所と看取り、この2つのタイミングで家族の社会関係が変化することもわかった。この問題に対する理解を深めるために、企業や研究者、研究所の関係者に助言を求めた。その結果、社会的フレイルはその後の心身の健康に影響を及ぼす可能性があり、家族の社会的フレイルを予防する必要があると考えられた。 また、入所前の生活の連続性を図ることを目的にした「C.地域ケアネットワーク」活動への調査のうち、令和4年度は農福連携取組に対する訪問ヒアリングを行った。調査から、在宅者とその家族には孤独・孤立の問題があり、就労を含む社会関係からの離脱の問題があった。要介護者は入所前の段階から社会関係の脆弱性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度には、入所者の家族関係を維持することを目的にして、家族をユニット空間に居てもらうための「B.家族研修」の準備を行った。施設に面会に訪れた家族に対して研修の目的を説明するなかで、施設入所者も家族介護者も、孤独・孤立の問題が生じていることがわかった。特に新型コロナウィルスの感染拡大がこの問題を拡大させていた。令和4年度は、令和5年度に実施予定の「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」に向けた内容を検討した。そのなかで、日常的に家族をユニット空間の一員にするためには、施設に行く「動機」、すなわち家族が施設に居場所感を抱くための仕掛けが必要だということがわかった。一方で、要介護者の入所と看取り、この2つのタイミングで家族の社会関係が変化することもわかり、家族の社会的フレイルを予防する必要があると考えられた。以上から、令和5年度に予定している入所後の「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」は、入所者・家族介護者それぞれの「社会関係」をつくり、両者にとって居住性を向上させる取組になり得ると思われた。新たに「看取り後の家族」への介入も検討する。 また、入所前の生活の連続性を図ることを目的にした、「C.地域ケアネットワーク」活動への調査では、令和3年度は認知症カフェの活動を把握した。令和4年度は農福連携の取組に対する関係者ヒアリングを行った。2年度にわたる調査から、在宅高齢者とその家族には孤独・孤立の問題があり、当事者には就労を含む社会関係からの離脱の問題があった。アクティブから最期までの長い高齢期を見据えて、令和5年度には、ダイナミックな時間的展望をもって施設と地域ケアネットワークをつなぐ方法を検討する必要があることがわかった。 以上から、入所者の社会関係を構築して施設の居住性の向上を目指す、という目的に向かって概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年5月、新型コロナウィルス感染症が5類感染症へ引き下げられる。施設現場の状況を把握しながら、ユニットケアの課題を明らかにするための「A.ユニット型特養に対する質問紙調査」を行いたい。 令和5年度に実施予定の「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」は、令和3、4年度の調査結果から、家族の孤独・孤立を解消すること、気楽に施設に出入りをするための「動機づけ」が必要だということがわかった。この結果を受けて、家族には、入所者の「情緒的なケア」を担うという役割を持ちながら、日常的に施設に出入りをしてもらえるようにすることにした。在宅の家族介護者に対する「ケアラー教育」の担い手という可能性もあるだろう。その中にはアドバイスや共感、おしゃべりなど、ナラティブなアプローチも考えられる。参加者の希望を聞きながら対応していく。 また、家族は、要介護高齢者の入所のタイミングと看取りのタイミング、この時に社会関係が大きく変わることがわかった。現状では、在宅介護によって家族介護者の社会関係が狭まり、人間関係や生活空間が縮小化してしまう事態が生じている。これからの社会において、介護によって就労を含む社会関係から離脱しない社会をつくらなければいけない。このことから、家族の社会的フレイルを予防するという目的も加えながら、令和5年度の「D.家族をユニット空間の使用者にする取組」を行うこととした。 入所前の生活の連続性を図ることを目的にした「C.地域ケアネットワーク」に対する調査では、在宅者の孤独・孤立、就労を含む社会関係からの離脱という問題も捉えながら、施設と地域をつなげることについて考えていく。また、ダイナミックな時間的展望をもった検討が必要だとわかったことから、まずはアクティブシニアへの介入を試行してみることとする。その介入が、フレイルや要介護、最期にどうつながるかという視点で考えていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)