メタ認知的方略を組込んだ表現活動における資質・能力の形成分析と学習モデルの開発
Project/Area Number |
21K02515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳沼 宏寿 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00377178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | メタ認知 / メタ認知的方略 / 自然環境 / 光 / ICT / イメージ / 情報 / メタ認 / 物語論的アプローチ / ICT機器 / 美術教育 / 生命論パラダイム / メディアリテラシー / 資質・能力 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、21世紀に必要とされる資質・能力の育成を美術教育において推進するために、「メタ認知的方略」の視点から表現活動を捉え直し、学習モデルの開発と汎用化を目指すものである。この概念の機能を教授過程に組み込むことで資質・能力の育成が促進されることを明らかにするとともに、認知的な「方略」が心的イメージと連動している構造を援用して、表現活動が創造的に展開するような美術のあり方を提案する。本研究は、これまで困難とされていた主体性や創造性を培う方法を汎用化可能な形で一般化し、作品主義や地球規模の諸問題に挑戦しながら、確かな美術教育の構築とグローバル時代を切り開く人材の育成を目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「メタ認知的方略」を美術教育の教授システムに組み込んだ学習モデルの開発と汎用化を目指すものである。「認知的方略」とは,知覚から認識全般に機能する「前向きな構え」であり,主体が「対象をどのように把握するのか」という「捉え方」を意味する概念である。本研究では特に美術表現において自己の認知的方略を自覚(メタ認知)することが豊かな表現や学びにつながることを検証するものである。 第1年次においては概念の基本原理を構造化・図式化することを試みたが,第2年次ではその原理を踏まえながら題材開発と授業実践に取り組んできた。題材開発については認知活動の時系列における刺激と行為の循環を微視的・巨視的双方の視点から捉えながら推進した。微視的には,題材との出会いにおいて五感を刺激するような題材開発に焦点を当て,巨視的には既知の歴史的認識に対し新たな視点(美的な)を導入する鑑賞方法を提示した。授業実践は大学の講義で検証を行った上で幼稚園から中学校までの各段階で行い子どもの活動や反応を検証した。成果としては,いずれの発達段階においても感動(情緒的高揚)とメタ認知の相互作用によって積極的な創造活動が見られたこと,そしてそれぞれの実践に関わった共同研究者との共同執筆による発信等を行ったことが挙げられる。 今回,題材開発として微視的な視点からは,「光の三原色」を用いたことによって自然素材の認知と表現行為の循環が「メタ認知的方略」の位相を図式化し,その効果を授業実践で検証することに成功したと言える。一方,巨視的視点として戦時下の子どもの眼差しを題材化する試みは日本において期待する反応を得ることはできたものの国際的な比較検証までは実施できなかった。最終年度への課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は授業方法の開発と実践を推進しそれを理論的に検証してきた。題材開発としては,当初子どもの五感を覚醒する「自然物」に焦点を当てたが,そのことで環境整備の重要性を再認できた。(前年度の研究で「イメージ」想起の契機に関わる要素として「自然環境」「物語」「ICT機器」の三つが浮上したが,素材としての「自然物」は,刺激を受ける対象ではなく環境の一部であるという認識を得ることができた。)それに基づいてメタ認知的方略の位相を図式化する作業も進展した。さらに,環境を構成する重要な要素として「他者」の存在が明確になり,認知活動の時系列において「自然環境」と「他者との交流」による情報の流入が交差するイメージが明確になった。それにより「メタ認知的方略」の概念に人間的な意味合いと感性に関わる価値が加わったといえる。 本研究を生命論の視点から美術教育や「地球規模の諸問題」といった背後にある問題への挑戦としては,認知に関する微視的な時系列を巨視的に拡張し,過去や現在の表現に対しメタ認知する機会設定として取り組んだ。その中で,戦時中の日本とポーランドの子どもが描いた戦争の絵を比較する鑑賞授業や,震災後の映像メディア表現の事例からは,作品の読み解きやメディア表現を通してメタ認知思考がもたらされ,自己の立ち位置を客観視すると共に,思考が未来へ照射される様相が確認された。これらの事例を整理し,現在の地球規模の諸問題(とりわけ国際紛争)に対し,美術教育の立場から提言する端緒を確立できたといえる。この内容について本年度は全教研全国大会で口頭発表を行い,参加者との協議で検証を深めることができた。当初は国際学会での発表を目標としていたものが国内発表にとどまった形ではあったが,資料となるポーランドの子どもの作品については実地調査を行うことができたため,それを集約し来年度での発信へ繋げていく準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度として,まず「メタ認知的方略の場面を組み込んだ授業モデル」を学校現場で汎用可能なものとしていきたい。そのために現場の教員が日常の授業で活用できるような資料を作成し美術教育誌や学会誌などへの執筆や研修会等を通して発信する。同時に現場教員との連携による授業研究で検証することにより援用しやすいものにブラッシュアップしていく。また,それと並行して「メタ認知的方略」の原理を生命論に基づいた視点から拡張し「地球規模の諸問題」の課題解決のために提言していく。その方策として「映像メディア表現」に基づいた成果をギリシャで開催される「デジタルストーリーテリング」の国際シンポジウムで,「子どもの描いた戦争の国際比較」の成果をトルコで開催されるInSEA(美術教育世界大会)トルコ大会で,それぞれ発表する。さらに,本研究の成果を美術教育の課題や地球規模の諸問題に共通する二項対立的な壁を乗り越える考え方として研究収録にまとめたい。内容としては,「メタ認知的方略」という概念から導き出されるアイデアについて,表現活動を創造性豊かなものにする授業方法へ展開するものと,これまでの20年に及ぶ「生命論」の視点からの研究の蓄積,及び諸学問分野の最新の知見を踏まえながら拡張していくものの大きく二つの視点から集約する。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)