2021 Fiscal Year Research-status Report
メタ認知的方略を組込んだ表現活動における資質・能力の形成分析と学習モデルの開発
Project/Area Number |
21K02515
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳沼 宏寿 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00377178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メタ認 / メタ認知的方略 / 自然環境 / 物語論的アプローチ / ICT機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,基本的に「表現活動にメタ認知的方略の機会を取り入れる授業方法を構造化し,前向きな資質・能力の形成が促進されることを実践的に検証する。」である。研究推進の三ヵ年計画としては,(1年次)「メタ認知的方略」の構造化に関する理論研究。(2年次)授業分析によるメタ認知の図式化。(3年次)美術教育におけるメタ認知に関する国際比較研究を通した一般化。と整理される。1年次の研究は,「メタ認知的方略」という概念の構造化を目指し,幼稚園及び小学校の教員と連携を図って実践を通した理論分析を行った。幼稚園では「子どもの環境と表現行為」という視点からの授業実践を認知的側面から分析した。この分析を通して,環境設定の中でも特に「自然」に関わる事象が認知的な循環を活性化させ,メタ認知的活動が創出される傾向が見られた。また,小学校では,「光」を素材とした造形表現を事例として,「物語」や「ICT機器の利用」の場面にメタ認知的視座の創出が見られた。これらの実践を通して,子どもの資質が環境の在りようと相まっているものであるという,教育的な必要条件が浮き彫りにされた。また,子どもの資質とは五感の覚醒が起点となっていることも明確になった。これまでの過去の研究では,子どもの想起する「イメージ」が表現行為を誘発するフィードフォワード制御として機能していることがわかっていたが,今回の考察を通し,「イメージ」想起の契機として「自然環境」「物語」「ICT機器」という三つのキーワードが浮上してきた。この三つは授業方法の改善に直結すること,また,この三つが「メタ認知的方略」の創出に関わっている構造を図式的に可視化できたことは一年次の研究成果である。一方で,「メタ認知的方略」と「前向きな資質・能力」との関連やつながりについては,更なる分析と整理が必要である。2年次以降の研究に反映させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画として掲げた3項目は,①メタ認知的方略の構造化,②表現活動におけるメタ認知構造の図式化,③今年度研究成果の発信であった。このうちの①と②の二点は,「メタ認知及びメタ認知的方略の構造化」に関するもので,認知科学的な知見を踏まえつつ具体的な授業分析を通して推進した。特に,新潟大学の附属幼稚園と附属小学校との連携により,子どもの表現活動を分析して「メタ認知的方略の概念を図式化」し,その成果を新潟大学教育学部紀要論文(第14巻第1号,および第14巻第2号)に掲載した。三つ目の「地球規模の諸問題とも関連付けた考察と学会・研究団体における発信」については,下越美研における講演会「魂の震えるような授業を目指して」の中で子どもの表現における「メタ認知的方略」の構造について解説した。(新潟県下越地方の教育関係者51名オンライン参加)これらの成果は,当初の目標を概ね達成したものである。しかしながら,分析の内容は現場の教員への解説のレベルに終始しており,地球規模の諸問題の解決へつなげた考察が弱かったことを自覚している。今後,国際的な比較研究も並行することによって認知レベルのミクロな問題を地球規模のマクロな課題解決へつなげる分析に重心を置いていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の2年目となる令和4年度は以下の二つの目標を掲げている。 ①メタ認知的方略の自覚化を促す授業方法の開発。 ②認知的研究を踏まえて人間の思考態度における「生命論」の重要性を導き出し,美術教育と地球規模の諸問題解決の関係性についてまとめ発信する。 ①については,まず,附属学校の教員の協力を得て授業研究を進め,メタ認知的方略の自覚化を促すことのできる授業方法の開発と実践検証を行う。その上で,授業モデルを「社会に開かれた教育課程」と交差させ,作品発表や鑑賞の交流を海外も含めて実践し検証する。②については,映像メディア表現に焦点を絞り,表現活動におけるメタ認知場面を異文化間の比較研究を通して,歴史的かつグローバルな視野から検証する。特に,テーマ選定や鑑賞活動においてメディア・リテラシーの問題に関わる成果が期待できる。(国内は福島県本宮市,海外ではドイツ・ギリシャ・エジプトと授業研究に関する情報交換を図って推進する。)この二点について,初年度の課題(学術的深化,および認知的研究の成果の普遍化)を踏まえつつ堅実に研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国内の調査のうち,福島県本宮市での会議は先方に高齢者が多いことから感染症予防のために直前に取りやめるケースがあったため,最終的に全体調整を図ることができなかった。
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Research Products
(4 results)