女性のキャリア選択とジェンダー格差維持に関する社会心理学的研究
Project/Area Number |
21K02978
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10010:Social psychology-related
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森永 康子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60203999)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福留 広大 福山大学, 人間文化学部, 助教 (10847841)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | ジェンダー / システム正当化 / ジェンダー格差 / トークニズム / アンコンシャスバイアス / 性差別 / ジェンダー平等 / キャリア選択 |
Outline of Research at the Start |
他の先進諸国に比べて日本のジェンダー格差は依然として大きく,なかなか格差が縮まらないのが現状である。この原因について,森永らは人々が現状肯定をする傾向を持つこと(システム正当化)に注目して検討を行い,女性がシステム正当化によって高い幸福感を持つことを見出した。しかし,そもそも何が正当化をもたらすのであろうか。本研究では,日本の法制度や職場の慣行などによってジェンダー平等が達成されているという認知が強まったり,自律性を重視する社会の風潮などによって女性にキャリア選択の責任があるようにみなすことで,ジェンダー格差の正当化が強くなるのではないかという仮説について検討する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,日本においてジェンダー格差が肯定・維持される仕組みの心理学的基盤を,システム正当化理論の立場から検討することを目的としている。 2022年度に検討した事項は以下の通りである。 1 システム正当化の緩和機能のメカニズムに関する検討(2021年度からの継続):これまで女性が既存のジェンダー・システムを正当化することで人生満足度が高くなること(システム正当化の緩和機能)に関する研究を行ってきた。これらの成果に基づき,2022年度は2021年度から引き続きシステム正当化の緩和機能が生じるメカニズムを検討した。従来は,システム正当化によって差別を受けているという認識が低減されることで,主観的幸福感が高くなることが報告されていたが,我々の行なった一連の研究から,差別よりもむしろ優遇されているという認識が関連することが見出された。結果の一部は,日本心理学会第86回大会で発表した。 2 一般的なシステム正当化についての検討:本研究課題の主眼はジェンダーにあるが,日本社会全体の一般的システムに関する正当化と人生満足度の関連についての検討も行なった。ジェンダーシステムと同様に,一般的なシステムを肯定するほど人生満足度が高いという結果が得られ,システム正当化の緩和機能が頑健であることが示された。成果は,中国四国心理学会第78回大会で発表した。 3 ジェンダー格差の維持と関連する要因についての検討:1)組織の中に少数の女性が存在するだけで,女性に開かれた組織だとみなされることがある(トークニズム)。このトークニズムがジェンダー平等感とどのように関連するかを検討した。2) 差別の原因を「アンコンシャスバイアス」に帰属することによって責任が減じられる問題について検討した。3)女性の旧姓使用が性差別態度とどのように関連するかを検討した。いずれも学会発表あるいは論文として成果を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,女性がジェンダーシステムを正当化することで主観的幸福感が高くなるというシステム正当化の緩和機能はなぜ生じるのか,という緩和機能のメカニズムについて複数の研究を行った。これらの結果は,過去の研究知見とは異なるユニークなものであり,日本の女性の置かれている位置について示唆を与えるものであった。その成果は,学会において発表してきたが,この論文化が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のような研究を行うことを目指している。 1) 2022年度に行ってきた,システム正当化の緩和機能のメカニズムに関する論文化。 2)これまでは女性本人の持っているシステム正当化の信念を扱ってきたが,本研究課題で提出した第二の検討点である,第三者の認知を取り扱う。 3)2021年度には,ジェンダー格差を生じさせる要因として,採用や雇用における「機会の平等」や「結果の平等」のような平等意識についての検討を行った。この平等意識がトークニズムと関連していることが推測できる。こうした点について検討を行う。
|
Report
(2 results)
Research Products
(28 results)