アザカリックスアレーントリアジン環の相互作用の解明とポリマー材料への展開
Project/Area Number |
21K05178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35020:Polymer materials-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
芝崎 祐二 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90323790)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ポリマー / カリックスアレーン / 多重水素結合 / 超分子 / 高性能ポリマー / アザカリックスアレーントリアジン / 高耐熱ポリマー |
Outline of Research at the Start |
カリックスアレーンは分子認識、金属捕集、スイッチング材料として広く研究されている。本研究では、環式グアナミン骨格であるアザカリックスアレーントリアジン(ACAT)の強い凝集作用を赤外分光法や核磁気共鳴分光法により解明するとともに、それを応用した超分子構造体の構築を目指すものである。特にACATをポリマー中に導入することで、ポリマー鎖がACATにより大きく会合し、条件によって物理ゲル化することが可能となる。これにより、ポリマーの元の機械的・熱的・光学的性質を、大幅に向上させることができる。
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Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、1,3,5-s-トリアジン骨格含有高分子の設計・合成、応用展開に関わる研究を行ってきた。すなわち、アザカリックスアレーントリアジン(ACAT)を主鎖に含む縮合系ポリマー(c-PG)が従来型の鎖式ポリマー(l-PG)と比較して格段に高い耐熱性と機械特性を示しながら、フィルムは溶媒可溶性であり、優れた光透過性、無着色性を有することを見出した。この要因は、主鎖に配置された本来それほど強くないACATの分子間相互作用がポリマーフィルム中の各所で相乗的にはたらき、ポリマー鎖間を緻密に物理架橋しているためと考えた。 以上の背景をもとに、本研究ではACATを導入した柔軟な骨格のポリマーであるポリジメチルシロキサンやポリエチレンイミンへの導入による高分子性への影響を明らかとすることを目的とした。 柔軟な骨格をもつポリマーを選択した理由は、ポリマー鎖の熱運動を明確に観察できること、それらがACATの導入方法でどのように影響を受けるのかを明確に評価できることなどのためである。今回、ACATをPDMSやPEIの末端に共有結合させて導入した場合と、単純に物理混合した場合とで、得られるポリマーの特性がどのように変化するかを詳細に追跡する。これにより、ACATが共有結合する必要があるのかどうかが明らかとなる。さらに、PDMSあるいはPEIの分子量を低下させた際、ACATの多重水素結合ネットワーク形成能のみで本当に高分子性が発揮されるのかを検証する。物理混合する場合にはACAT分子を様々に設計できる。たとえばACATユニットを1ユニット持つもの、2-5個有する、あるいは分岐型である。どのような骨格の時、また、母体となるポリマーがどのようなものであるときに多重水素結合が効果を発揮するのかを解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、ACAT骨格の相互作用について、モデル化合物を合成して赤外分光法ならびに核磁気共鳴法による解析、超分子化について検討を行った。さらに、ポリジメチルシロキサン(PDMS)中にACATを導入し、ACATが発現する相互作用力がポリマー中でどのように作用するのかを検討した。その結果、ACCAT間には弱い多重水素結合がはたらくが、ポリマー中に分散させるとそれらはポリマー中のエーテル基などと相互作用することで簡単に分散することが明らかとなった。 この結果を受け、令和4年度は分岐型ポリエチレンイミン(PEI)の末端にACATをぶらさげたデザインを実施し、ACATの及ぼす影響について解析した。PEIの分子量1万の分子末端にACATを導入した分子はPDMSの時と同様、ACATの多重水素結合により本来液状のPEIが固化し、自立フィルムを作製することに成功した。フィルム内部のACATの相互作用を赤外分光により詳しく評価し、多重水素結合が発達していることを突き止めた。さらに、分子量千程度の低分子量PEIの末端にACATを導入した分子を設計、合成し、それらが高分子性の一つとして認識されるフィルム形成能を発揮することを明らかとした。このことは、これまでのPDMSや高分子量PEIを用いた結果と比べて大きな意義がある。分子量千程度の低分子ではフィルム形成能は発揮しえないことから、今回の結果は、ACATがACAT同士、あるいはPEI鎖と多重水素結合による効果的な物理ネットワークを形成していることを示唆するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記得られた研究成果を踏まえ、令和5年度は、多重水素結合のより詳細な解明と、それらの微調整を付与すべく、金属塩の導入を検討し、超分子フィルムに対して自己修復性の付与が可能かなどについて検討する。具体的には、ACATを複数含む分子を精密設計し、それらをPEIに物理混合し、PEIに共有結合で導入した際の結果と比較し、多重水素結合の硬化を検証する。ACATがどのような密度でどのようにPEIと相互作用するのかを明らかとし、様々なポリマーへの添加剤としての応用展開についての可能性について探っていきたい。また、多重水素結合の強度は金属イオンの導入により制御できると考えられることからいくつかの金属イオンを導入したコンポジット材料を作製し、熱特性や機械特性へ及ぼす影響と、そのメカニズムを明らかとしつつ、自己修復機能発現などの高機能性材料開発に展開したいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)