植物孔辺細胞における極性形成および形態構築制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44030:Plant molecular biology and physiology-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
中川 強 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (30202211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 植物 / シロイヌナズナ / 気孔 / 受容体型キナーゼ / 遺伝子発現 / 突然変異体 / 孔辺細胞 / 形態構築 |
Outline of Research at the Start |
細胞の分裂、伸長や変形など生物の形作りは細胞の極性に従って進行する。植物における細胞極性の重要性を示すユニークな例として気孔の形成が挙げられる。気孔を形成する2個の孔辺細胞は孔辺母細胞の対称な分裂によって生じ、その後それぞれの細胞が対称分裂面を挟んで背腹(外側-孔側)の極性を獲得して湾曲し、細胞の形態構築が進行する。本研究では我々が発見した孔辺細胞の背腹極性を制御する鍵因子シロイヌナズナMUSTACHES (MUS)受容体型キナーゼに着目した解析を進める。MUS受容体型キナーゼが働く信号伝達の仕組みをあきらかにし、植物細胞における極性形成の新たなメカニズムを提唱する。
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Outline of Annual Research Achievements |
MUS受容体型キナーゼは気孔系譜の孔辺母細胞分裂前に発現し、分裂面排他的に局在することで孔辺細胞の極性確立に働くと推察されている。本研究課題は、MUS受容体型キナーゼ信号伝達系を構成する因子の探索を行い、信号伝達の分子機構を解明しようとするものである。植物の情報伝達に関わるロイシンリッチリピート(LRR)受容体型キナーゼが他のLRR受容体タンパク質と複合体を形成して働く例が知られているため、シロイヌナズナLRR受容体タンパク質遺伝子について、プロモーター:レポーターを用いた半網羅的発現解析を行い、MUS受容体型キナーゼが働く(発現する)気孔系譜で発現を示す遺伝子の探索を行った。その結果、RP1、RP3、RP4、RP24、RP59と名付けたLRR受容体タンパク質遺伝子が気孔系譜で発現していることがあきらかとなった。これらのうちRP1、RP3およびRP4は根端部でも発現が検出された。MUS受容体型キナーゼも根端部で発現するため、これら LRR受容体タンパク質がMUS受容体型キナーゼと協調して機能している可能性が示された。RP1遺伝子破壊株、RP3遺伝子破壊株の単独変異株では気孔、根ともに野生株との相違は観察されなかっため、RP1、RP3、MUSの多重重破壊株を作製して解析を進める予定である。孔辺母細胞分裂のドミナント変異体bgl23-Dを単離し、原因遺伝子がセルロース合成酵素様タンパク質D5(ATCSLD5)であることを明らかにした。この変異体を特異的プロモーターで発現させ部位特異的にATCSLDを抑制する実験系を開発して学術誌に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気孔発達における孔辺細胞極性形成の分子機構を解明するため、鍵因子であるMUS受容体型キナーゼが働く情報伝達系の解析を計画した。アプローチ(1)MUS受容体キナーゼリガンドの解析、(2)MUS受容体型キナーゼ複合体の解析、(3)MUS受容体型キナーゼリン酸化標的タンパク質の解析、についてこれまで(3)MUS受容体型キナーゼリン酸化標的タンパク質の解析に取り組んだ。野生型シロイヌナズナ葉とmus変異体葉からPhosphoprotein Purification Kitにより全リン酸化タンパク質を抽出し、それぞれCy5とCy3で標識後2次元電気泳動を行い、蛍光標識2次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)によってmus変異体ではリン酸化されておらず、野生型試料ではリン酸化されているタンパク質の探索を行った。Cy5蛍光特異的タンパク質スポットがいくつか検出された質量分析による同定を行ったところ、グルタチオンS-トランスフェラーゼであった。今後、未同定のCy5蛍光特異的タンパク質スポットについても解析を進める。(2)MUS受容体型キナーゼと複合体解析の一環として、これまでにLRR受容体タンパク質遺伝子の半網羅的プロモーター:レポーター解析を行い、孔辺細胞系譜で発現する3種のLRR受容体タンパク質を見出した。今後、これらLRR受容体タンパク質について、多重破壊株の表現型を観察し、気孔形成における機能の解析を進める。候補遺伝子についてはMUS受容体型キナーゼとの相互作用解析も進める。
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Strategy for Future Research Activity |
気孔発達における孔辺細胞極性形成の分子機構を解明するため、鍵因子であるMUS受容体型キナーゼが働く情報伝達系の解析を計画している。アプローチ(1)MUS受容体キナーゼリガンドの解析、(2)MUS受容体型キナーゼ複合体の解析、(3)MUS受容体型キナーゼリン酸化標的タンパク質の解析、について、今後は以下のように研究を推進する。 (1)MUS受容体型キナーゼリガンドの解析:これまでに見出した気孔系譜で発現する低分子量分泌タンパク質の遺伝子をゲノム編集によって破壊する。気孔表現型を解析し、MUS受容体型キナーゼと関連するリガンド候補の探索を進める。 (2)MUS受容体型キナーゼ複合体の解析:これまでにプロモーター:レポーター解析により見出された3種のLRR受容体タンパク質について、多重変異体を作製して気孔表現型の解析を行う。また、MUS受容体型キナーゼ遺伝子との多重変異体も作製し、表現型の変化の有無を調べる。タグ付加MUS受容体型キナーゼ遺伝子導入シロイヌナズナを用いて免疫沈降実験を行い、MUS受容体型キナーゼと物理的に相互作用している因子の同定を進める。 (3)MUS受容体型キナーゼリン酸化標的タンパク質の解析:蛍光標識2次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)によって検出されたスポットの同定を進める。 以上のアプローチに加え、野生株、mus変異体およびSDD1プロモーター:MUS受容体型キナーゼ導入株(孔辺細胞の背腹が反転)についてRNAseq解析を新規に行い、MUS受容体型キナーゼ信号伝達によって転写変動している遺伝子の探索を行う。これらの研究により、MUS受容体型キナーゼ信号伝達の分子機構の解明を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)