酸化還元電位を新指標とした光不安定医薬品のテーラーメード製剤化
Project/Area Number |
21K06654
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47060:Clinical pharmacy-related
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
小幡 徹 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (20324080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 伸一郎 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20537237)
脇屋 義文 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (40410360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 光分解 / クロルプロマジン / フェノチアジン系医薬品 / EEM-PARAFAC / フェノチアジン / PARAFAC / 光感受性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、医薬品の光感受性を数値・定量化し、薬剤師が高品質な製剤を保管、調製から治療提供できる新たな手法を確立することを目的とする。その実現に向けて、光に対する 「原薬」 と 「医薬品添加剤」の関係を『酸化還元電位』で指標化し、光分解の予測や判断に役立つデータシート化することで、製剤のテーラーメード調製を実践する。光安定性試験ガイドラインや試行錯誤的に行われてきた従来の調製プロセスを変革させる本研究は、『医薬品の適正使用』と『医療ニーズに対応した薬物療法』の推進に貢献できることに加え、『本邦発の医薬品の安定性試験に関するガイドラインの創成』に繋がる。
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Outline of Annual Research Achievements |
医薬品は多様な構造をもつ有機化合物であるため,環境因子や医薬品同士の相互作用により変化が生じるものが多い。とくに光は医薬品の品質に影響を及ぼす環境要因の一つであり,薬効を低下させるだけでなく,時に毒性を示す光分解物を生成する。したがって,医薬品の光安定性の評価は,医薬品を有効かつ安全に活用するために不可欠であり,高品質な製剤の製造や医療ニーズに対応した薬物療法を実践する上で必須である。医薬品の品質評価には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS)等が広く用 いられている。これらの手法は、高感度かつ高精度であることが知られている反面,コストが高く,操作が煩雑である。一方,EEM-PARAFAC とは,励起波長・蛍光波長・発光強度 を 3 次元的にプロットした EEM スペクトルと,複数の蛍光成分を多変量解析により分離する Parallel Factor Analysis(PARAFAC)を組み合わせた手法であり,環境分析や食品の品質評価に利用されている。しかしながら,本手法を医薬品の品質評価に応用した報告はほとんどない。そこで,本研究では光安定性が低いことが知られているフェノチアジン系医薬品を原薬とし,EEM-PARAFAC による光安定性の評価法の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,光安定性が低いフェノチアジン系抗精神薬の中で,クロルプロマジン塩酸塩1の光分解経路を解明し,フェノチアジンスルホキシド体とカルバゾール構造を有する生成体であることを明らかにした。光分解過程の可視化と定量的な解析を目的とし,光学物性をEEMスペクトルと,PARAFACを組み合わせたEEM-PARAFACを適応した。まずMeOH中におけるクロルプロマジン塩酸塩 1 の濃度と蛍光強度の線形性を確認した結果,5~25 μMの範囲において良好な直線性を示すことがわかった。そこで 10 μMの1 MeOH溶液に対し,365 nmのLED光を照射し,酸素雰囲気下,25℃における分解過程を追跡し,PARAFACにて成分分離を行った。その結果,光照射時間の延長に伴い,1 の蛍光波長 (em) 450 nm/励起波長 (ex) 260, 310 nm (C1) の強度が速やかに減弱し,em 375 nm/ex 250, 275, 335 nm (C2) とem 355 nm/ex 240, 290 nm (C3)が時間依存的に出現した。続いて,光分解物とEEMの関係を明らかにするために,単離した生成物の構造解析とEEM測定を行った結果,C2はフェノチアジンスルホキシド体 2, C3はカルバゾール構造を有する生成体 3であり 1の光増感酸素化反応により2を経た後,3を生成することがわかった。EEMから,1の残存濃度を求め,光増感酸素化反応の速度論的解析を行ったところ,反応速度定数 (k1) は8.7×10(-3) min(-1),半減期 (t1/2) は80 minを,それぞれ示した。また構築したEEM-PARAFACを用いて,レボメプロマジンマレイン酸塩 4 とプロクロルペラジンマレイン酸塩 5 の光分解反応を解析した結果,光分解は,側鎖構造の種類に大きく影響しないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
医薬品の光分解には,酸化還元反応によるラジカル種の生成が大きく関わっている。したがって今後は,フェノチアジン系抗精神薬の光分解経路をラジカル反応の観点から解明し,光によって生成したラジカル種の酸化還元電位を精査することで,物質間における光分解の起こりやすさを数値から判断するためのデータシートの作成に着手する。またEEM-PARAFACを,2, 4- ジヒドロピリジン環,チアゾール環を有する原薬及び関連化合物に加えて,イブプロフェン,エテンザミドなどの非ステロイド系抗炎症薬を始めとしたOTC医薬品にも適用し,光不安定性医薬品の安定性評価法を開発する。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)