ショウジョウバエを用いた臓器連関を介した腫瘍悪性化の遺伝学的解析
Project/Area Number |
21K07120
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 喜一郎 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (20554174)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | がん遺伝子Ras / 化学受容器 / 臓器連関 / ショウジョウバエ / がん / 組織連関 / Ras |
Outline of Research at the Start |
ショウジョウバエ化学受容器群 (Ir・Gr・Or) は感覚神経などで機能する嗅覚 (フェロモン・危険物質など)・味覚 (甘味・苦味など) 受容体であり、神経伝達等を介して個体レベルでの行動・代謝応答に重要な役割を果たすと考えられている 。一方で、Ir・Gr・Orが機能するニューロンやその機能は化学受容器ごとに独立である。そこで本研究では、個々のニューロンが、全身性応答をつかさどる共通の細胞 (グリア細胞等) に収束すると予測し、RasV12腫瘍悪性化における臓器連関の起点となる神経ネットワークおよび全身性シグナル伝達の実態解明を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は、ショウジョウバエRasモデルを用いて、化学受容器をコードするIr40a遺伝子のヘテロ変異がRasV12良性腫瘍の悪性化を引き起こすことを明らかにしている。令和4年度の研究計画では、Ir40aヘテロ欠損個体の特徴付けとRasV12腫瘍の性質に与える影響をについて細胞生物学的な解析を行った。
化学受容器とRas活性化腫瘍を結び付けうる全身性変化の一つに、糖代謝の変化が挙げられる。そこで、Ir40aヘテロ欠損個体に何らかの糖代謝異常が起きていないかについて調べることにした。高濃度スクロースに対する感受性のアッセイを行ったところ、Ir40aヘテロ欠損個体は高感受性の表現型(蛹化遅延)を示した。この結果は、Ir40aヘテロ欠損個体では、糖代謝の変化を介してRas腫瘍の悪性化を引き起こしていることを示唆している。腫瘍悪性化をもたらる代表的な糖代謝変化に、Warburg効果と呼ばれる解答系の亢進が挙げられる。そこで、Ir40aヘテロ欠損個体においてRasV12腫瘍クローンにおける解糖系酵素LDH,HexAの発現量を調べたところ、顕著な上昇がみられた。さらに、RasV12クローン特異的にLDHの遺伝子ノックダウンを行ったところ、腫瘍サイズが縮小した。 以上の結果は、Ir40aヘテロ欠損では、糖代謝の異常によりRasV12腫瘍の解糖系亢進が生じており、これが腫瘍悪性化の原因ではないかと考えられた。
また、R3年度において、組織特異的なIr40a RNAiによる腫瘍悪性化をもたらす責任臓器の同定を目指していたが、RNAi効率の問題により方法の改善が必要であった。この問題については、Ir40aガイドRNAを恒常的に発現させると共に組織特異的にCas9を強制発現させる、組織特異的なCRISPR-Cas9ノックアウト法の系の確立により問題を克服した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R4年度の研究計画では、Ir40aヘテロ欠損個体における全身性の変化および、Ras活性化腫瘍に与える効果を明らかにすることを目指していた。今回、その実態が糖代謝の変化であり、これがRas活性化腫瘍の解答系亢進をもたらすことが明らかにできたという点で当該年度の目標はおおむね達成されたと考えている。
一方で、R3年度においてRNAiが神経系組織で十分な効果を示さないという技術的な問題が生じており、その影響により臓器連関の実態をなす組織の同定については解析は先送りする形となっていた。この点については、R4年度において組織特異的CRISPR-Cas9法により克服できたものの、責任臓器の同定までには至らなかったため、全体を総括して進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
R4年度の成果により、Ir40aヘテロ欠損個体では、全身性シグナルとしての糖代謝変化と腫瘍組織における解答系の亢進という大きな手掛かりが得られた。この結果に基づき、R5年度は、これらの分子メカニズムの詳細を明らかにする。また、技術的な問題が生じたことにより先送りとなっていたR3年度の計画である臓器連関の責任臓器の同定についても、新たなアプローチにより進めていく。
まず、糖代謝異常をもたらす責任臓器を同定するとともに、Ir40aと糖代謝を結ぶ経路を明らかにする。糖感受性表現型との関係性が報告されている、トレハロース代謝(糖新生)等に着目しながら解析を行う。一方で、RasV12クローン側の解析においては、解答系の亢進がどのようながん関連シグナルに影響を与えているのかについて明らかにする。RasV12腫瘍において増殖制御に中心的な役割を果たすYokie/Yapシグナル、浸潤能との関係性が明らかにされているJNKシグナル・JAK-STATシグナルなど、既知のがん関連シグナルを候補とした解析を進める。これらの結果に基づき、Ir40aヘテロ欠損において、遠隔責任臓器とRasV12腫瘍がどのような臓器連関に基づき腫瘍悪性化を引き起こすかについての分子制御メカニズムの全容を明らかにする。
|
Report
(2 results)
Research Products
(9 results)