ヤヌス型蛍光色素分子を用いた分子配列制御に基づくキラル空間の創成
Project/Area Number |
21K14615
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
上田 将史 北里大学, 理学部, 助教 (60778611)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | クマリン / 拡張型クマリン / 三脚巴状分子 / ヤヌス型分子 / 蛍光色素 / 凝集誘起発光 / 面外双極子 / 分子キラリティー / キラリティー |
Outline of Research at the Start |
分子の「表面」と「裏面」で異なる電子構造を有するヤヌス型分子は、面外双極子に基づいた分子配列の制御が可能である。この構造的異方性と発光色素分子のキラリティーを組み合わせることで、固体状態において分子配向に依存した円偏光二色性や円偏光発光を発現することが期待できる。本研究では、分子内のヘリシティーによって右巻きと左巻きの螺旋構造を誘起した新たなヤヌス型蛍光色素分子を設計・合成し、溶液中における光物理的性質を明らかにした後、分子配列を緻密に制御した固体キラル空間の創出を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
分子の「表面」と「裏面」において異なる電子構造を有するヤヌス型分子は,面外双極子に基づく特異的な分子集積構造の構築に有用である.この構造的特異性と分子キラリティーを組み合わせることで,固体状態における円偏光二色性や円偏光発光の発現が期待される.緻密に制御された分子集積構造に基づく高効率発光色素の開発を目指して,ヤヌス型構造を有するクマリン融合型三脚巴状蛍光色素分子を合成し,その構造と光物理的性質について明らかにしていく. 昨年度に合成したベンゾ[f]クマリン融合型分子(TriBfC)の構造異性体であるベンゾ[g], [h]クマリンが融合した新規発光色素(TriBgCおよびTriBhC)の合成に着手した.従来の手法に基づいて行い,最終段階でTriBgCを9%,TriBhCを34%の収率で得ることに成功した.また,分子構造をX線結晶構造解析によって決定することができた.これらの化合物は親化合物であるTriCと同様に湾曲したプロペラ型構造をとっており,右巻きのPPP体と左巻きのMMM体が混合したラセミ結晶であった.一方で,その分子配列はTriCとは異なっており,π共役の拡張およびその伸長方向によって,分子集積構造内におけるπ-π相互作用がより有効に働いていた.希釈溶液中では微弱な蛍光発光(量子収率: 0.001~0.007)を示した一方で,THF/水の混合溶媒中では,約250~1000 nmのナノ凝集体を形成し,蛍光強度の上昇が観測された.これは凝集体の形成に伴い,内部転換における構造変化が小さくなったことに由来すると考えられる.今回得られた知見を元に,π共役をさらに伸長した高次拡張型誘導体を合成し,凝集体内に働く分子間相互作用と発光効率の相関について調査する.また,エナンチオマーの分離条件についても検討し,固体キラル空間の創成を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンゾ[f], [g], [h]クマリンがそれぞれ融合した新規三脚巴状蛍光色素(TriBfC, TriBgC, TriBhC)の合成に成功した.TriBgCとTriBhCについては単結晶化にも成功し,分子構造をX線結晶構造解析によって決定することができた.これまでに合成した誘導体のほとんどが三方晶系であったのに対し,このニ分子はそれぞれ三斜晶系と単斜晶系であった.親化合物と同様の湾曲したプロペラ型構造でありながら,積層構造において,拡張部位による強固なπ-π相互作用が分子間に働いていることが明らかになった.これらの結果からπ共役の拡張および伸長方向によって分子配列を緻密に制御できる可能性を見出すことができた. 希釈溶液中における蛍光量子収率は0.001, 0.007程度となっており,依然として低い値を示した.これは溶液中において容易に分子反転が生じていることを示唆しており,対応する反転障壁エネルギーは最大で8.4~8.9 kcal/molと非常に低い値であることが理論計算から算出された.一方で,発光波長は親化合物と比べて約80 nmの深色シフトを示しており,π共役の拡張によってHOMO-LUMOギャップが低下したと考えられる. 加えて,テトラヒドロフランと水の混合溶媒中では,水の割合に応じた発光強度の上昇を観測し,これらの分子が凝集誘起発光特性を有することを明らかにした.動的光散乱法による測定では,250~1000 nmの比較的大きなナノ凝集体を形成していることが観測された.結晶構造から明らかになったように,π共役の拡張によって分子間の相互作用がより効率的に働くことが期待されるため,ナノ凝集体の大きさおよび発光効率との相関について調査を進めているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
TriBfCの分子構造を決定するために,ラセミ体の単結晶化を行う.分子のねじれ・集積状態などについて他の誘導体と比較する.TriBfCは他の構造異性体(TriBgC・TriBhC)に比べて,分子の反転障壁エネルギーが比較的高い25.8 kcal/molとして算出されている.従って,光学分割によるエナンチオマーの分離が期待できることから,分析・分離条件を模索し,エナンチオマーの分離を達成する.その後,円偏光に関する測定を行い,キラル特性について明らかにしていく. 高次拡張型誘導体として,ピレン部位を有する新規色素の合成を行う.合成は従来の経路に則して進めていき,最終段階では分子内Ullmannカップリング反応を用いて目的化合物の合成を達成する.得られた化合物の単結晶化を行い,その分子構造をX線結晶構造解析によって決定する.集積構造内に働くπ-π相互作用などの分子間相互作用の有無について調査し,他の誘導体と比較し,さらなるπ共役の拡張が分子集積構造に与える影響について調査する.また、希釈溶液・凝集状態・固体状態における各種スペクトル測定を行い,新規化合物の光物理的特性について明らかにしていく.理論計算によって反転障壁エネルギーの算出も行い,光学分割が可能な化合物についてはエナンチオマーの特性について調査する.. 最終的に,新規化合物およびこれまでのヤヌス型三脚巴状分子によるキラル空間の創成に向けた系統的な評価を行う.
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)