Ror1-Rifシグナルによる血管擬態メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K15504
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
紙崎 孝基 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00883448)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | Wnt5a / Ror1 / Rif / がん / 糸状突起 / 血管擬態 / 浸潤 / Wnt5a-Ror1シグナル / 肺腺がん / 増殖 |
Outline of Research at the Start |
悪性度の高いがんでは、がん細胞自身が血管様構造を形成し血中成分を腫瘍組織内に補給する。この血管様構造は血管擬態と呼ばれており、多くのがん種で生じることが報告されている。また、血管擬態の形成率はがん患者の予後と相関することから、がん細胞の血管擬態メカニズムの解明は重要な課題とされているが、血管擬態の形成過程におけるがん細胞の形態・動態については十分に解析されておらず、また血管擬態を制御する分子機構についても不明な点が多い。 本研究では、申請者らが独自に見出したRor1-Rifシグナルによる糸状突起形成機構を切り口に、がん細胞の形態・動態制御に着目して、血管擬態の形成メカニズムの解明を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
分泌性タンパク質Wnt5aおよびその受容体であるRor1の発現はそれぞれ肺腺がん患者の予後と相関することが報告されていることから、Wnt5a-Ror1シグナルが肺腺がんの進展に寄与していることが考えられるが、その詳細な分子機構については未解明である。我々はこれまでに低分子量Gタンパク質RifがRor1を高発現する肺腺がん患者において高発現すること、RifとRor1が結合することなどを見出しており、RifとRor1が機能的に関連することを見出した。そこで、本年度はRifとRor1がどのように機能的に関連しているか分子生物学的・生化学的に解析した結果、Rifは細胞外基質からの刺激によるWnt5a-Ror1シグナルの活性化に重要である可能性を見出した。またRif-Wnt5a-Ror1シグナルは肺腺がん細胞の生存や浸潤などにおいて重要であることを明らかにした。実際に肺腺がん細胞の皮下移植モデルにおいて、がん細胞をマトリゲルに包埋することで腫瘍形成能が顕著に上昇すること、RifやRor1の発現を抑制することでマトリゲル存在下であっても皮下移植時の腫瘍形成能が低下することを見出した。 また、Rif-Wnt5a-Ror1シグナルはがん細胞自身による血管様構造である血管擬態の形成にも重要であることを見出した。数理モデルを組み合わせることで細胞間張力が血管擬態形成に重要であること、Rif-Wnt5a-Ror1シグナルが細胞間張力に関与する可能性を見出した。 今後は、細胞外基質からの刺激とRif-Wnt5a-Ror1シグナルの関連性や、血管擬態形成におけるRif-Wnt5a-Ror1シグナルの重要性について分子生物学的・細胞生物学的な解析を進めるとともに、生体レベルでの解析を実施することを計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はPC9細胞(肺腺がん細胞株)をマトリゲル上に撒くことでWnt5a-Ror1シグナルが活性化されること、低分子量Gタンパク質RifはマトリゲルによるWnt5a-Ror1シグナルの活性化に重要であることを見出した。またPC9細胞を血清不含培地で培養すると細胞死を起こすが、マトリゲル存在下では生存できることを見出した。さらに、マトリゲル上に接着したPC9細胞は糸状突起を接着方向に形成し、浸潤していくことを見出した。また、このときRifやRor1の発現を抑制すると生存・浸潤能が低下することから、Rif-Wnt5a-Ror1シグナルは細胞外基質からの刺激による肺腺がん細胞の多様な機能の制御において重要な役割を担うことが示唆された。実際、ヌードマウスにPC9細胞を皮下移植する際に、マトリゲルにPC9細胞を包埋しなければ腫瘍形成がほとんど見られないこと、RifやRor1の発現を抑制するとマトリゲルに包埋して皮下移植した際の腫瘍形成能が低下することを見出した。 また、我々はRif-Wnt5a-Ror1シグナルが、がん細胞自身によって形成される血管擬態と呼ばれる現象においても重要である可能性を見出した。厚めのマトリゲル上でPC9細胞を培養すると、PC9細胞が整列しネットワーク構造(血管擬態)を形成する。我々は数理モデルを用いた解析から、がん細胞による血管擬態形成メカニズムの一端に、がん細胞間で働く張力が重要であることを明らかにした。実際に、ミオシン阻害剤(Blebbistatin)を添加することで血管擬態形成が抑制されること、Ror1阻害剤であるStrictininを添加することでも同様の表現型が見られることを明らかにした。これらのことから、血管擬態の形成には細胞間張力が重要であること、そこにWnt5a-Ror1シグナルが関与する可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はRif-Wnt5a-Ror1シグナルがどのようにして細胞外基質からの刺激によるがん細胞の生存・増殖・浸潤能の促進に寄与するのか検討する。Rif-Wnt5a-Ror1シグナルは糸状突起の形成に重要であることをすでに見出しており、一部の論文では糸状突起において接着班が形成されることで細胞外基質からの刺激が細胞内に伝達されることが示唆されている。そこで、Rif-Wnt5a-Ror1シグナルは糸状突起形成を介してIntegrinシグナルの活性化に関わる可能性を検討する。 また、血管擬態については、実際の生体内における血管擬態形成にRif-Wnt5a-Ror1シグナルが重要であるか否かを検討する。このために、まずは血管擬態形成能を生体で検討することができる実験系の構築を目指す。血管新生能を生体レベルで検討するために、VEGFなどを添加したマトリゲルをマウスに皮下移植し、マトリゲル内に新たに血管網が形成される様子を観察する実験手法がある。そこで、当該実験手法を参考に、血管擬態形成をマウス個体レベルで観察する手法の構築を目指す。
|
Report
(2 results)
Research Products
(5 results)