Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
全身性強皮症は線維化、血管障害、免疫異常を特徴とした自己免疫疾患で、近年その線維化や血管障害の病態とアディポカインの関与が示唆されている。本研究では、病態に関与が示唆されるも詳細が分かっていないアディポカインの病態解析を行うため、全身性強皮症の形質を示すマウスより脂肪細胞を単離してアディポカインの発現パターンを網羅的に解析し、またその発現を調整することで病態がどのように変化するかを確かめることで、脂肪細胞が分泌するアディポカインが全身性強皮症の線維化や血管障害にどのように関わるかについて検討する。また得られた知見が全身性強皮症患者にあてはまるかについても検討を行う。
全身性強皮症の病態に関与が示唆されるも詳細が分かっていないアディポカインの病態解析を行うため、全身性強皮症様の線維化と血管障害を自然発症する脂肪細胞特異的Fli1欠損マウス(Fli1 AdipoKOマウス)の脂肪細胞を単離して、アディポカインの発現パターンをコントロールマウスと比較した。12週齢のFli1 AdipoKOマウスならびにコントロールマウスの精巣周囲の脂肪を摘出後ミンスし、コラゲナーゼ処理後、ろ過、遠心を行い、脂肪細胞を回収し、遺伝子発現量を比較した。これまでに全身性強皮症と関連があると言われていたアディポネクチン、ビスファチン、レジスチン、リポカリン2、オメンチンなどのアディポカインに関してはFli1 AdipoKOマウスとコントロールマウスで有意差は見られなかったが、IL-6に関してはFli1 AdipoKOマウス脂肪細胞で上昇している傾向が見られた。また皮下脂肪が付着した皮膚組織で免疫組織学的検討を行い、Fli1 AdipoKOマウスの脂肪細胞ではIL-6が有意に上昇していることを確認した。Fli1 AdipoKOマウスでは、骨髄内脂肪細胞が骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSCs)に作用し未熟な周皮細胞を形成することで血管障害を起こしていることが示唆されている。in vitroでIL-6のsiRNAをFli1 AdipoKOマウスのBM-MSCsに添加しBM-MSCsのフェノタイプがコントロールマウスと同等になることを確認した。またin vivoでIL-6の中和抗体をFli1 AdipoKOマウスに投与したところ、血管障害ならびに線維化がコントロールマウスと同程度まで改善した。上記より、アディポカインの中でもIL-6が全身性強皮症の血管障害や線維化の病態と関連しており、IL-6をコントールすることでその病態を改善できる可能性が示唆された。