酸化コレステロールによる生体膜脂質組成の調節を介した代謝性疾患増悪のメカニズム
Project/Area Number |
21K17680
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 59040:Nutrition science and health science-related
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有澤 琴子 東北大学, 薬学研究科, 助教 (00813122)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 酸化コレステロール / 脂肪酸 / フェロトーシス / 酸化ストレス / NASH / 糖尿病 / 脂質 / 生体膜 |
Outline of Research at the Start |
動物性食品や加工食品に多く含まれる酸化コレステロールは、2型糖尿病やNASHなどの病態において体内への蓄積が見られることから、近年、疾患との関連が示唆されている。酸化コレステロールは、細胞内のコレステロール合成や脂肪酸合成などの脂質代謝に影響を与えることが知られている。しかし、酸化コレステロールにより脂質代謝が変化した結果「生体膜の脂質プロファイル」も変化するのか、またその生体膜脂質の変化が、生体内ストレスの増悪と関連するのかについてはほとんど検討されていない。本研究では、酸化コレステロールによる「生体膜脂質を介した」新たな疾患の発症調節機構の解明を試みる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界的に動物性食品や加工食品の摂取量の増加が見られ、これらの食品に含まれる酸化コレステロールは、2型糖尿病やNASHなどの疾患との関連が示唆されている。酸化コレステロールは脂質代謝の重要な転写因子であるLXR(Liver X receptor)のリガンドとして知られているが、酸化コレステロールによる細胞毒性が、脂質代謝変化の結果であるのかは明らかではない。本研究は、酸化コレステロールを介した脂質組成の変化が細胞障害を引き起こす可能性を明らかにすることを目的とした。 本年度は研究の推進方針を修正し、脂質過酸化と細胞内二価鉄の生成に依存する細胞死形態であるフェロトーシスに注目した検討を行なった。フェロトーシスはNASHやアルツハイマー病など、酸化ストレスが関与する様々な疾患への関与が報告されている。フェロトーシス誘導時に増加する酸化コレステロール分子種を明らかにし、酸化コレステロールの生成がフェロトーシスを促進あるいは抑制し得るか検証した。 神経芽腫由来細胞株であるSH-SY5Y細胞にフェロトーシス誘導剤であるerastinを処理し、蛍光プローブを用いて過酸化脂質および脂質ラジカルを測定した結果、脂質ラジカルが過酸化脂質の上昇に追随して増加した。このとき生成する細胞内酸化コレステロールをGC-MSで測定した結果、erastin処理後1時間では酵素的に生成される7α-hydroxycholesterol(7α-OH)が増加し、6時間以降でラジカル依存的に生成する7β-hydroxycholesterolの増加が見られた。薬剤処理初期に増加する7α-OHのフェロトーシスの感受性への影響を検証するため、7α-OHの産生酵素であるCYP7A1をCRISPR-Cas9でノックアウトした細胞を樹立した。現在、CYP7A1ノックアウト細胞のフェロトーシス感受性を検証中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、GC-MSによる酸化コレステロールの測定系を確立し、フェロトーシス誘導時に特徴的に増加する酸化コレステロール分子種について新たな知見を得ることができた。また、蛍光プローブを用いて過酸化脂質および脂質ラジカルの細胞内分布を観察することにより、脂質酸化物の蓄積が見られたオルガネラはリソソームであることが明らかになった。 一方、増加が認められた酸化コレステロールの細胞内分布の同定には至っておらず、酸化コレステロールが細胞膜あるいはリソソーム膜機能を調節しうるか、またその調節がフェロトーシスに影響するかまでは検証できていない。現在オルガネラ分画の手法を検討中であり、密度勾配超遠心分離法によりリソソームの粗精製は成功しているものの、他のオルガネラの混入や、酸化コレステロールを測定するのに十分な回収量を得られていないという問題がある。この問題を解決するため、抗体修飾磁気ビーズが結合できるリソソーム膜貫通タンパク質を細胞に発現させ、磁気ビーズを用いた免疫沈降法によってリソソームを分離する方法(M. Abu-Remaileh et al., Science, 2017)を用いてリソソームの精製を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、CYP7A1のノックアウト細胞を用いて、CYP7A1により産生される7α-OHがフェロトーシス感受性に与える影響を評価している。ここでフェロトーシス感受性と酸化コレステロールの関連が示された場合には、細胞膜やリソソームを分画し、それぞれのオルガネラへの酸化コレステロールの分布を明らかにする。また、酸化コレステロールはLXRのリガンドであることから、LXR下流の脂質代謝酵素の発現量の変化や、それにより変化し得る脂肪酸の量や質についても解析を行う。特に膜リン脂質を構成する多価不飽和脂肪酸は酸化を受けやすく、フェロトーシス感受性を増加させることが知られている。フェロトーシス誘導剤により増加する酸化コレステロールが細胞内の脂肪酸組成を変化させることで、フェロトーシスの感受性を調節し得るかを明らかにしていく。
|
Report
(2 results)
Research Products
(5 results)