分解性の高い防汚物質は環境に優しいと言えるか?感受性の高い水産重要種のリスク評価
Project/Area Number |
21K17904
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 64010:Environmental load and risk assessment-related
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
河野 久美子 (池田久美子) 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主幹研究員 (10371973)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 防汚物質 / 二枚貝幼生 / リスク評価 |
Outline of Research at the Start |
防汚物質として広く使用されている、4,5-dichloro-2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(DCOIT)は、その分解性の高さから、環境に優しい防汚物質と考えられている。しかし、DCOITが環境中で検出される濃度でカキ幼生の奇形を誘導することが明らかとなり、カキと共に資源量の減少が問題となっているアサリにも同様の影響が懸念される。
本研究では、DCOITの二枚貝幼生に対するリスク評価を行うことを目的とし、アサリ胚~幼生期毒性試験法を確立してDCOITおよびその分解産物の影響を把握すると共に、カキおよびアサリ幼生の分布域および移動経路における汚染実態を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、所属機関が所有する調査船を用い、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における防汚物質DCOITの汚染実態を調べ、経年変化を明らかにした。海水試料は採水後、速やかに船上にて固相抽出カラムに付加し、試料中のDCOITをカラムへ吸着させ、安定化させた状態で研究室に持ち帰り、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC/MS/MS)分析に供した。カキ幼生の調査点ではプランクトンネットにより、浮遊幼生数も調べたところ、DCOITが検出されたすべての地点においてカキ幼生が出現しており、海水中DCOITの最高濃度は、カキ幼生に対するDCOITの最低影響濃度に近い値であった。得られた研究成果の一部を日本水産学会令和4年度秋季大会シンポジウムおよび令和5年度春季大会において口頭発表した。 前年度に確立した方法で、アサリ受精卵を用いた胚~幼生期毒性試験を行った。試験水中のDCOIT濃度をLC/MS/MSで測定し、試験期間中の濃度変化を把握した。試験終了時に幼生を固定し、顕微鏡観察により幼生の奇形率を求め、実測濃度に基づいたDCOITの毒性値を算出した。分解産物の影響も把握するため、入手可能なDCOIT分解産物について、アサリおよびカキ受精卵を用いた胚~幼生期の毒性試験を行い、実測濃度に基づいたDCOIT分解産物の毒性値を算出した。その結果、DCOIT分解産物であるオクチルアミンのカキ幼生に対する毒性は、親化合物であるDCOITに比べて10万分の1以下であったことから、カキ幼生に対するDCOITのリスクを評価する上で、分解産物オクチルアミンの毒性は考慮しなくてよいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、所属機関が所有する調査船を用い、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における防汚物質DCOITの汚染実態を調べ、経年変化を明らかにし、得られた研究成果の一部を学会において口頭発表することができた。また、前年度に確立した方法で、アサリ受精卵を用いた胚~幼生期毒性試験を行い、試験水中のDCOIT濃度を液体クロマトグラフタンデム質量分析計で測定して試験期間中の濃度変化を把握し、試験終了時に幼生を固定して顕微鏡観察により幼生の奇形率を求め、実測濃度に基づいたDCOITの毒性値を算出することができた。さらに、入手可能なDCOIT分解産物についてアサリおよびカキ受精卵を用いた胚~幼生期毒性試験を行い、実測濃度に基づいたDCOIT分解産物の毒性値を算出することができた。以上より、当初の目的を達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、分解性が高いものの、二枚貝幼生への影響が懸念されている防汚物質(DCOIT)について、DCOITの分解性および二枚貝幼生の生態学的特性に基づき、より適切なリスク評価を行うことを目的として、今年度は以下の研究を行う。
1)分布域および移動経路における汚染実態の解明:令和3年度および令和4年度に引き続き、所属機関が所有する調査船を用い、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における汚染実態を調べ、経年変化を明らかにする。 2)水温の違いが毒性に及ぼす影響の解明:DCOITの分解速度や受精卵の発生速度は水温の影響を受ける可能性があることから、異なる水温で毒性試験を行い、水温の違いによる毒性への影響を明らかにする。 3)カキおよびアサリ幼生に対するリスク評価:カキ幼生については、すでに得られている毒性値(Onduka et al., 2021)、アサリ幼生については、本研究で得られた毒性値を1)で得られた実環境中濃度と比較することにより、DCOITのカキおよびアサリ幼生に対するリスク評価を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)