同属に異なる受精様式を持つ海産カジカをモデルとした精子進化の分子基盤の解明
Project/Area Number |
21K20676
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0703:Biology at organismal to population levels and anthropology, and related fields
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 岳 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (10908429)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 受精様式 / 海産カジカ / 精子競争 / 交尾 / 体内受精 / 体外受精 / RNA sequence |
Outline of Research at the Start |
体外受精から体内受精への進化は、脊椎動物が水圏から陸上へ進出するための極めて重要なイベントである。しかし、哺乳類はみな体内受精、カエルはほぼみな体外受精というように、受精様式の違いは系統的な制約が強く、精子形質の進化を促進する生態的・分子的要因を明らかにした研究は殆どない。 近縁種に異なる受精様式をもつ海産カジカ科魚類をモデルとし、繁殖様式の進化によって精子の分子基盤がどのように進化したか、精子の形態や運動性の違いがどのような機能的意義を持つのかを明らかにすることを目的とする。また、海産カジカ科魚類以外にも、少数ではあるが近縁種に異なる受精様式を持つ魚類がいるため、同様に分析を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、COVID-19の流行により、カナダでの調査ができなかったが、これまでに得られた精巣を用いて、RNAsequenceを行った。その後、スーパーコンピューターを用いて、de novo RNA seqを行い、TrinityやOrthofinderを駆使し、体外受精種と体内受精種それぞれで共通する遺伝子の模索を行った。現在、それぞれの遺伝子の相対的な発現量の指標であるFPKM値を求め、それぞれの繁殖様式で、共通して発現量が増加、現状している遺伝子の特定を目指している。これにより、体内受精の進化により分子基盤がどのように進化したかを明らかにできる。 また、国内で、近縁種に体外受精種と体内受精種を含む魚類の採集を行い、11種の精子の形態、運動性の測定および系統種間比較を行った。その結果、体内受精の進化は、頭部の伸長に関与すること、精子競争レベルの増加は精子の全長と遊泳速度を増加させることが分かった。興味深いことに、全長に対する頭部の大きさは、相対的な精巣重量(=精子競争レベルの指標)と負の相関を示し、精子競争レベルが高い種程、小さい頭部を持つことが明らかになった。精子競争レベルが働く種では、小さい頭部のほうが、抵抗なく泳げるため、このような進化をしたと考えられる。この結果は、現在査読付き雑誌Ecology and Evolutionに投稿中である。 現在、海産カジカ科魚類の系統種間比較に必須の堅牢な分子系統樹も、種間で超保存配列であるUCE領域を用いて作成中であり、これにより、受精様式の進化の経路と分子基盤の進化を照らし合わせることが可能となる。 加えて、体外受精と体内受精種の精子の運動性をスパースローカメラで詳細に観察したところ、体外受精では振幅運動によって、体内受精では回転運動によって精子が推進していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の流行により、当初予定していたカナダでの採集が延期となった。そのため、研究のかなめである同属でことなる受精様式をもつArtedius属、Enophrys属の採集ができていない。一方で、海産カジカ科魚類以外の魚類でも、体内受精の進化によって精子の形態、運動性が同じように変化しており、体内環境に適応進化したことを明らかにした。この成果は、第69回日本生態学会大会にて発表し、Ecology and Evolutionに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAseqは、種間で共通する配列の発現量を比較するため、FPKM値の比較を行い、どの遺伝子が受精様式の進化により適応したのかを明らかにしていく。今年度、カナダでArtedius属、Enophrys属の採集を行う。1年の繰越となってしまったが、RNAseqの解析用のパソコンを導入済みであり、確立したバイオインフォマティクスのパイプラインを使うことで、採集後も同様の解析が比較的早く行うことができる見通しである。 精子の機能解析では、受精様式の違いによって遊泳の仕方に大きな違いがあることが分かりつつある。現在、異なる粘度をもつ液体中で精子の運動性がどのように変わるか測定中であり、引き続き精査していく。 本研究プロジェクトで得られた成果の一部は、すでに国際学会(ISBE2022)にて発表を行う(決定済み)。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)