グラフの構造的パラメータに基づく汎用的アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
21K21278
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
1001:Information science, computer engineering, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 祐馬 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (30907457)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | グラフアルゴリズム / グラフパラメータ / 計算複雑性 / 最大誘導部分グラフ問題 / 最大幸福頂点集合問題 / 区間グラフ / 置換グラフ |
Outline of Research at the Start |
一般的に解くことが困難であるグラフ上の組合せ最適化問題においても,グラフの「木幅」に代表されるように,グラフの構造的パラメータを利用することで効率的に問題を解けるケースが多く知られている.一方で,近年になり,木幅より汎用的なパラメータが提案されている.本研究では,それら汎用的なパラメータに着目し,より多くのグラフに適用可能な効率的なアルゴリズムの構築を目的とする.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,一般的に解くことが困難であるグラフ上の組合せ最適化問題に対し,「mim-width」や「sim-width」といった,グラフの構造的パラメータを利用した効率的なアルゴリズムの構築を目標とした.本年度はmim-widthが1や2といった小さい値を取るグラフ上での,最大誘導部分グラフ問題を扱った.グラフアルゴリズム分野で扱われている様々な問題は,最大誘導部分グラフ問題またはその双対問題として扱うことができる.例えば,最大独立集合問題,最大クリーク問題,最大クラスター問題,及び最小頂点被覆問題,最小フィードバック頂点集合問題はその一例である.また,区間グラフ,置換グラフ,距離遺伝グラフ等といった,グラフ理論分野で古くから研究されているグラフの多くは,mim-widthが1ということが知られている.したがって,mim-widthが小さいグラフ上で最大誘導部分グラフ問題を考えることは,多様なグラフ上における多様な問題を一度に扱うことに繋がり,極めて重要な意味を持つ. 令和4年度の本研究では,最大クリーク問題や最大クラスター問題といった密な誘導部分グラフを求める問題はmim-widthが2であってもNP困難,すなわち最適解を現実的な時間で求めるアルゴリズムは存在しそうにない,という定理を与えた.この定理は,特定の性質を持つ任意の問題に対して成り立つという意味で汎用的な結果を表している.一方で,mim-widthが1であるグラフに対しては,そのグラフの構造的特徴を利用して最大クリーク問題や最大クラスター問題を高速に解くアルゴリズムを構築した.また,これら問題を解く過程で得た手法が,他の問題にも応用可能であることを示した.したがって,mim-widthというグラフの構造的パラメータに着目することで,汎用的なアルゴリズムを構築できたと言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定ではmim-widthが小さいグラフに対して,最大クリーク問題の高速なアルゴリズムの構築を計画していた.しかし研究の過程で,むしろ最大クリーク問題はmim-widthが2であるようなグラフですらNP困難であることが判明した.そこで,令和4年度ではその証明方法を拡張し,最大クリーク問題のみならず様々な問題がmim-widthが小さいグラフですらNP困難であることを証明した.この困難性の対比として,最大クリーク問題等がmim-widthが1であるグラフ上では高速に解けることを示した.本研究成果は国際会議への投稿を予定している. 令和4年度における本研究では主に最大誘導部分グラフ問題を扱ったが,この問題の枠組みに当てはまらない問題についても,似た手法を利用することで高速なアルゴリズムの構築に成功している.令和3年度に研究した最大幸福頂点集合問題はその例であり,令和4年度になり学術雑誌Algorithmicaに採択されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,mim-widthが1のグラフ上で高速に解ける問題に共通する性質を明らかにすることが考えられる.そのような性質を見つけることができれば,より多くの問題に適用可能となる,汎用的なアルゴリズムの構築が期待できる.また,mim-widthが1であるようなグラフとして区間グラフや置換グラフ等が挙げられるが,どのような特徴を持つグラフであればmim-widthが1であるのか,さらに探究することも興味深い.これらmim-widthの研究と並行して,令和4年度では時間の都合上扱えなかったsim-widthについても研究を進めたいと考えている.
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)