水中ピコキャビティのアクティブ形成と分子分解能ダイナミック分光への応用
Project/Area Number |
22K18988
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 30:Applied physics and engineering and related fields
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 金ナノ粒子 / DNA / 表面増強ラマン散乱 / ナノポア / 相変化材料 / タンパク分子 |
Outline of Research at the Start |
塩基・アミノ酸識別を可能とする光学的一分子シークエンサーや生体分子に対する力学的摂動による機能変調への応用を目指す研究である。水中にて金ナノ粒子二量体空隙に、DNAを捕捉したピコキャビティを形成し、一塩基分解能ラマン計測の再現性とラマン増強度の最大化を図る。さらに、相変化材料を成膜したナノポアに二量体をトラップし、相変化にともなう体積変化によって捕捉DNAへ力学的摂動を与え、理想的なピコキャビティ形成をアシストする。本手法の応用としてタンパク分子のコンフォメーション変化の分光的検出と力学的刺激による機能誘発を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
直径40nmの金ナノ粒子とアデニン、シトシン、グアニン、チミン塩基をpH3.5、ならびにpH7.0下でそれぞれ混合し、さらに塩の添加、加温インキュベーションを行うことにより金ナノ粒子二量体を形成した。塩基の濃度の関数として、ゼータ電位、二量体の吸収ピーク波長、ラマンスペクトルを詳細に計測した。低pH下でプロトン化するアデニン、シトシンの場合、塩基濃度とともにゼータ電位の絶対値が低下し、二量体形成効率が向上することを確認した。一方、特にアデニンの場合、濃度とともに金表面に対して五員環・六員環面が垂直な配置をとりやすくなり、二量体の粒子間ギャップが増大すると同時に、ブリージングモードのラマン信号が相対的に増強されることが明らかとなった。これらの実験と並行して、オリゴヌクレオチドを対象として同様の実験を実施した。例えば25塩基長のグアニンオリゴヌクレオチドの中央をアデニンに置き換えたものを使用し、塩基分解能の実証を試みた。水中でブラウン運動する単一の二量体からのラマンスペクトルを多数測定したところ、その多くはグアニンのみ、あるいはグアニンとアデニンのピークを含むものであったが、一定の頻度でアデニンのみのピークが出現するスペクトルが得られた。この結果は、光が金原子スケールで局在し、一塩基分解能が実現していることを示唆するものである。 窒化シリコンメンブレンに収束イオンビームでナノポアを形成した後、GeSbTeを成膜した。ナノポア部に光照射をしながら長鎖DNAのナノポア通過頻度を計測したところ、光照射加熱によってDNAを効率よく捕捉できることを確認した。また、PEG・エタノールと金ナノ粒子の混合液に対して、マランゴニ流に起因する液滴を形成し、その内部において金ナノ粒子が複合体を自然形成することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一塩基置換オリゴヌクレオチドを用いたラマン計測により、金ナノ粒子二量体ホットスポットによる一塩基分解能を実証した。再現性向上が今後の課題である。相変化ナノポアの作製とDNA・金ナノ粒子の通過過程の計測はできており、PEGによる金ナノ粒子の複合体化も確認している。これらを組み合わせることにより、ナノポアでの二量体のトラップは計画通り達成されると考えている。また量子ドットを用いた予備測定を通して、GeSbTeのアモルファス化(体積膨張)にともなうピークシフトを確認しており、二量体で捕捉した分子への応力印加も十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
窒化シリコンメンブレンに対して収束イオンビームを用いてナノポアを作製し、ポリエチレングリコール(PEG)溶液中で枯渇力にて金ナノ粒子二量体をナノポアにトラップする。温度をパラメータとしてラマンスペクトルを経時的に測定し、アダトムの移動やDNAの吸着配置の変化を追跡する。ナノポアを形成したメンブレンにSb2S3を成膜し、同様に金ナノ粒子二量体をトラップする。ピコ秒パルスレーザを局所照射し、段階的相変化を誘起する。 Sb2S3は結晶相からアモルファス相への相変化にともなって体積が30%膨張するため、粒子間ギャップの制御や捕捉分子への応力印加が可能である。この力学的摂動にともなうラマン増強度の変化やスペクトルシフトを観察し、金表面モフォロジーやDNA吸着配置の変化と関連づけながら、ピコキャビティとしてより理想的なコンフィギュレーションへと変移していることを確認する。必要に応じて分子動力学シミュレーションを援用する。 Ca2+受容タンパク質であるカルモジュリンはCa2+と結合することによりコンフォメーションが変化し、ペプチドと複合構造を形成することが知られている。また、Ca2+未結合のカルモジュリンへの圧縮応力印加によってもペプチドと複合構造を形成することが最近の研究で示されている。本項目では、これらの構造変化の過程をラマン分光を通して観察する。 カルモジュリンを挟んだ金ナノ粒子二量体構造を形成し、Sb2S3成膜ナノポアにてトラップする。まず、Ca2+存在下でのコンフォメーション変化、さらにペプチド(C28W等)を添加後の複合体形成をそれぞれラマン検出する。続いて、Ca2+未結合のカルモジュリンに対してSb2S3のアモルファス化による応力印加を施し、ペプチドとの複合体形成の誘発を試みる。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)