Project/Area Number |
22K19209
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 40:Forestry and forest products science, applied aquatic science, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 聡 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70435832)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 共生 / ピロリ菌 / 無脊椎動物 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、特異な微生物がヒトデの体腔液に共生し、独自の機能を発揮する分子機構を多元的に解明する(体腔液とは人の血液+リンパ液に相当し、本研究は腸内細菌など既存の共生研究とは全く異なる)。具体的には、マヒトデ共生系(天然)と人為的共生系(異宿主への菌移植)を対象とし、微生物叢・発現遺伝子・代謝物質の3項目を時系列で解析する。本研究は、無脊椎動物や微生物の生存戦略に関する常識を根底から覆し、生態学・生理学等の純粋科学のみならず、水産科学や環境保全学など幅広い応用科学をも変革し、飛躍的に発展させる潜在性を持つ真に挑戦的な研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、様々な海洋性無脊椎動物の体液に細菌が普遍的・恒常的に生息し、それらが周辺海水や体表・消化管等に存在しない特異な分子系統学的特徴を有することを発見してきた。本研究は、ヒトデの体腔液に特異な微生物(特にピロリ菌に近縁なものをターゲットとする)が宿主生物に共生し、独自の生理機能を発揮する分子機構を実験生物学的に解明する。具体的には、マヒトデ共生系(天然)と人為的共生系(異宿主への菌移植)における3項目時系列解析、即ち①体液中の微生物叢、宿主と微生物の②発現遺伝子、③代謝物質を補完的に解析し目的を達成する。本研究は「動物の体液は排他的ディフェンスの場」という常識に挑戦するとともに、安全安心な水産資源の持続的利用に向けた対策の礎となる。 2022年度は、予定していた通り北海道の沿岸域において同所的に生息するマヒトデ・イトマキヒトデを複数個体採取し、実験室に持ち帰った後ただちに温度や除菌操作および共生微生物の入れ替えの有無等が異なる複数条件下で飼育実験を行った。経時的かつ個体を特定しながら採取した体腔液試料の中から、これまでの予備実験や宿主の行動・死亡率も考慮しながら、微生物叢解析およびトランスクリプトーム解析(次世代シーケンサーを用いた発現遺伝子の網羅的解析)を実施し、予定していたすべての解析を完遂することに成功した。発現遺伝子のデータ解析を進めているところであるが(データの納品が2023年4月中旬となった)、宿主-微生物間相互作用や協調的な環境応答を担う重要な遺伝子群等を問題なく同定することができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究において、体腔液の移植方法を複数評価し、簡便かつ宿主への負担の少ない(死亡率が低い)方法で体腔液移植実験を実施することが可能となっている。異宿主への微生物移植は2022年度が最初であったが、本年度は予定通り北海道の沿岸域において同所的に生息するマヒトデ・イトマキヒトデを採取し、温度や除菌操作および共生微生物の入替えの有無等が異なる複数条件下での飼育実験を行った。宿主の死亡率が低く、予定より長期間の飼育実験を実施することができた。宿主の行動等に関する知見、体腔液(我々の血液+リンパ液に相当)を経時的に採取し、微生物相や量の変化、発現遺伝子に関する知見を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は特に上述した発現遺伝子に関するデータの分析をすすめ、実験条件を追加する必要性を検討するなど、できるだけ多くの個体・条件において飼育実験と経時的試料採取を行い、発現遺伝子解析や代謝産物の網羅的解析を組み合わせることにより、体腔液微生物の生理機能に迫る。
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