Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
非典型翻訳の研究は主に、生きた細胞や細胞抽出液型の翻訳系を利用して分子機構の解析が進められてきた。本研究では、上記のような複雑な翻訳系を用いた解析だけでは分子機構の根幹にたどり着くことが出来ないことを念頭に置き、実験系をヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系に移すことにした。再構成系で定義されたヒトの因子のみで非典型翻訳を解析できる点が世界的にもユニークな研究となる。ヒトの因子で再構成した実験系を用いるため、得られたデータを直接的に治療法開発へ応用できる可能性が高いという利点もある。従って本研究は、学術的な翻訳研究だけでなく、医学的研究分野においても技術革新を促す研究として位置付けられる。
本研究の目的は、ハンチントン病に関与するCAGリピート配列の異常伸長に起因する非典型的な翻訳を、ヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系で再現することにより非典型翻訳の分子機構の一端を明らかにすることである。そのための研究計画として、本年度も申請者が開発したヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系を利用して翻訳開始因子群が非典型翻訳に与える影響を解明するための実験に取り組んだ。具体的には、CAGリピートを有するHtt exon-1遺伝子のmRNAを作成し、これをヒト因子由来再構成型無細胞翻訳系で翻訳させると、細胞内で生じる翻訳(標準翻訳:AUG開始コドンから始まるin-frameと、翻訳開始点が不明の非標準翻訳:+1 frame産物および+2 frame産物)が再構成系でも再現できること、また非標準翻訳にも翻訳開始因子群に依存した翻訳開始フェーズが必要であることを明らかにした。さらに、非標準翻訳の原因となる因子を探索する中で、RNAに相互作用することで核酸やタンパク質合成を促進すると言われるポリアミンが、CAGリピート由来の+1 frameと+2 frameの翻訳を顕著に促進することを新たに発見した。一方、非標準翻訳の開始点を決めるために質量分析による解析を行ったが、得られた結果はHtt exon-1とは無関係の配列であったため、分析に供する産物の量(合成量)が少ないことや精製度が低いことが問題点の一つとして挙げられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (1 results)
Nature Communications
Volume: 13 Issue: 1 Pages: 7451-7451
10.1038/s41467-022-35156-x