2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Establishing a new paradigm of social/human sciences based on rerational studies: in order to overcome contemporary global crisis |
Project/Area Number |
16H06549
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 啓子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40401442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 薫 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (10431967)
後藤 絵美 東京大学, 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク, 特任准教授 (10633050)
帯谷 知可 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (30233612)
小林 正弥 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (60186773)
福田 宏 成城大学, 法学部, 准教授 (60312336)
佐川 徹 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70613579)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | アイデンティティ / シンボル / ナショナリズム / ネットワーク / 共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究では「記憶・表象・権威」をキーワードに以下の点から研究を進めている。1)規範とアイデンティティの時間的な継承とグローバルな広がりを見る上で歴史的記憶を取り上げ、いかに地理的、時系列的に共有されるかの分析。2)映像、音楽、服装など非言語的な表象に現れる文化的、政治的、歴史的意味の共有と差異の地域間比較。3)社会において権威がいかに確立されるのかを開発などの経済的要因、宗派ネットワーク、ジェンダー、「見た目」などの文化的歴史的要因から分析。本年度は1)として世界中で学生運動や市民運動の高まりがみられた1968年から半世紀を振り返る「1968年再考」シンポジウムを、福田、後藤、山本を中心に12月15-16日に開催し、西欧、東欧の事例のみならず中東、アフリカ、ラテンアメリカの事例を横断的に検証した。特に日本の事例について慶応大学の小熊英二氏を、アジアの事例について独・フンボルト大学のClaudia Deriche氏を招聘し基調講演を行った。また2)については、帯谷、後藤を中心に「装いと規範」ワークショップを昨年度に引き続き京都大学にて実施、服装に象徴されるナショナルな要素とトランスナショナルな要素を、中央アジア、日本、パキスタンの事例を取り上げて分析した。また佐川は、エチオピア西南部の農牧民社会におけるフィールドワークを継続的に実施し、大規模農場の建設が地域社会とナショナルな感情の創出にいかなる影響を与えているかを調査、特に最近の政権交代によってエチオピアの人びとの国民意識と民族意識がいかに変動しているのかを検討した。 これらの研究事業を通じ、服装や娯楽といった日常的な行為、振舞いのなかに見られる規範やアイデンティティの変容に権威関係が表出するか、また革命や社会運動のトランスナショナルな伝播がローカルな社会の社会意識にどのような影響を与えるかに着目した比較研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は、上述した複数分担者の共同シンポの他、個別にさまざまな国際ワークショップやシンポジウムを実施した。特に、4月に山本が実施したシンポジウム「シリア 殺戮と破壊を生きる-絶望の中に紡ぐ希望-」では、シリア難民のピアニストを招聘して講演会を実施したことから、数百名の参加者を得た他、多くのメディアに注目された。また9月に東洋文化研究所にて後藤が実施した「マイノリティとして生きる ムスリムとアイデンティティ」では在米の写真家を招聘し、マイノリティとしてのムスリムの在り方について、連続のワークショップと写真展を開催した。各分担者はそれぞれが専門とする地域(佐川はエチオピア、後藤はエジプト、帯谷は中央アジア、酒井はレバノン)でフィールド調査を行い、担当地域の社会規範とアイデンティティの変容に関する調査・資料収集を行った。 一方で、研究協力者や特任研究員など若手研究者の国際学会での研究報告を促した。7月にスペインで開催された世界中東学会では、研究協力者のHousam Darwishe, Muhammad Omar Abdin, 南部真喜子、Rawiaal-Taweelの研究報告を取りまとめたパネルを開催し、また特任研究員の押尾が単独で研究報告を行った。こうした若手研究者に対する国際発信支援は、国内でも研究会の形で頻繁に行っている。 こうした成果をもとに、研究期間内に研究成果報告書を叢書シリーズとして出版するため、編集責任者として福田、後藤を選び、10月以降計画研究代表の酒井を含め月一回の編集企画会議を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各分担者がそれぞれの調査研究課題に沿って個別の調査を実施するのに加えて、以下の点を中心に、共同研究を進める。(1)「音」についての比較ワークショップの開催(10-11月)。シンボルとしての「音」を取り上げ、それが表象するナショナル/トランスナショナル/反ナショナル性に着目する。国際ワークショップには、領域外からバルカン音楽専門の山崎信一氏(明治大学)や『ポーランド国歌と近代史』の著者梶さやか氏(岩手大学)、元はスコットランド民謡でありながら北米の賛美歌経由で日本に伝わった「蛍の光」について辻田真佐憲氏などを招聘し、計画研究分担者との間で比較研究を行う予定である。 (2) 計画研究横断の「パーセプション」研究プロジェクトを通じて、他の計画研究や公募研究者とも研究上の連携を図り、とりわけ公募研究のうちB01に連携可能として申請された池田氏のレバノン・キリスト教徒マイノリティに関する個別研究との相互交流を活かす。そこでは、「グローバル関係学」学理の中核となる認識と行為主体の相互作用について、非制度的で計量化できない分析材料をいかに扱うか、エスノグラフィックな手法も含めてさまざまな方法論の模索を行う。さらには、帯谷が主催する連続ワークショップ「装いと規範」を通じて、服装などの「見た目」のパーセプションを取り上げた分析視角をさらに深化させる。その際、帯谷分担者を通じて京都大学東南アジア地域地域研究所CIRASセンターと機関的連携を強化する。 (3) 研究期間4年目にあたり、本計画研究では他の計画研究同様研究期間内の研究叢書の出版を企画しており、年度末までにこれまで実施してきたシンボルとしての文化(スポーツ、革命/社会運動、装い)と今年度の「音楽」を合わせて一冊の研究書として原稿に取りまとめる。そのための編集企画会議および研究報告会を、年度内に3-4回実施する。
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[Book] 遊牧の思想2019
Author(s)
太田至、曽我亨、佐川徹他
Total Pages
400
Publisher
昭和堂
ISBN
978-4-8122-1824-2
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[Book] 文化人類学の思考法2019
Author(s)
松村 圭一郎、中川 理、石井 美保、佐川徹他
Total Pages
224
Publisher
世界思想社
ISBN
9784790717331
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