2016 Fiscal Year Annual Research Report
高精度プロテオミクスによるシグナル伝達制御機構の数理システム解析
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
16H06578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾山 大明 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30422398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 裕子 東京大学, 医科学研究所, 技術専門員 (80401256)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | プロテオーム / シグナル伝達 / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
シグナル伝達系は細胞の運命決定を担う最も重要な生命制御システムの一つであり、リン酸化やユビキチン化・アセチル化をはじめとするタンパク質翻訳後修飾による精細な制御に基づく複雑な動的相互作用によって、転写・翻訳をはじめとする基本的な生命活動の駆動力として機能している。がんをはじめとする多くの疾患はこの複雑な生命システムの制御異常・破綻を起点としていることから、各種疾患に関与する情報伝達ネットワークの異常を理論的に制御するためには、シグナル伝達系を構成しているタンパク質群やそれらが織り成す複合体に関する包括的な理解のみならず、翻訳後修飾による微細な制御を包含した統合的なネットワーク解析を通してシステムとしての作動原理を明らかにすることが必要不可欠である。本研究計画では、数理モデルによる精密な反応制御パラメータ解析や分子細胞生物学的手法による詳細な機能解析と相互に連携する横断的オミクス情報解析基盤を構築し、領域内連携を強力に推進する。 本年度は、高感度・高精度nanoLC-MS/MS解析技術を用いてシグナル伝達系の構成因子群に関する活性変動をネットワークレベル及び複合体レベルの両面から定量的かつ網羅的に計測するプロテオーム解析プラットフォームを確立すると共に、大規模な活性変動情報を基に重要なハブとして機能している候補因子群を統計科学的に抽出する一連の情報解析基盤を構築した。また、武川班と協働で近接局在因子群のラベル化に基づく新たなシグナル複合体精製法を確立し、今まで生化学的に解析が困難であった弱い分子間相互作用や結合・解離が速い動的相互作用に適用可能な分析プラットフォームを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞外部からの刺激やシグナル阻害剤による摂動によって活性が変動するシグナル伝達系の構成因子群及びそれらのリン酸化、ユビキチン化、アセチル化等の翻訳後修飾レベルの動態を包括的・統合的に計測する高精度定量プロテオーム解析技術を確立した。また、数千に及ぶシグナル因子群に関する大規模計測データから、刺激や摂動によって有意に変動するサブネットワークを統計的に抽出する情報科学的方法論の開発を併せて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
がんをはじめとする難治性疾患に関して多くの疾患関連シグナル因子が発見されているが、これらの因子が実際に細胞中で機能を担う際のアミノ酸修飾構造の変化やそれに伴う相互作用因子の変動を精密に捉えることによって、はじめて理論的な薬剤の設計・創出が可能になる。本研究計画で計測される大規模な質量分析データには大量の新規翻訳後修飾部位や相互作用因子に関する同定・定量データが含まれることから、これらの「プロテオーム・ビッグデータ」に基づく次世代のシグナルネットワーク解析手法の開発を通して、理論的な薬剤ターゲットの探索を指向した新たな研究体系の創成を推進する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein2016
Author(s)
Hashimoto T, Horikawa DD, Saito Y, Kuwahara H, Kozuka-Hata H, Shin-I T, Minakuchi Y, Ohishi K, Motoyama A, Aizu T, Enomoto A, Kondo K, Tanaka S, Hara Y, Koshikawa S, Sagara H, Miura T, Yokobori S, Miyagawa K, Suzuki Y, Kubo T, Oyama M, Kohara Y, Fujiyama A, Arakawa K, Katayama T, Toyoda A, Kunieda T.
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Journal Title
Nat Commun
Volume: 7
Pages: 12808
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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