2017 Fiscal Year Annual Research Report
移行期正義論・紛争解決学を応用した東アジア歴史認識問題解決の思想基盤構築
Project Area | Creation of the study of reconciliation |
Project/Area Number |
17H06336
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梅森 直之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80213502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10201948)
田中 孝彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10236599)
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
野尻 英一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (30308233)
齋藤 純一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60205648)
最上 敏樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70138155)
土佐 弘之 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (70180148)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 政治思想 / グローバルヒストリー / 紛争解決学 / 記憶研究 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本思想・理論班では、ⅰ)欧米発の紛争解決学や平和学の成果に学びつつ、儒教や仏教などのアジア的な宗教的 理念と紛争・和解との関連を思想的に探求し、あわせて東アジア型近世秩序から近代的な国際法体系への移行の 意味を理論的に検討することで、東アジア型「和解学」の思想的・理論的基礎を確立する、ⅱ)現在世界的に和 解推進の基準となっている移行期正義概念を批判的に検討し、移行期正義の東アジアにおける適用可能性をネー ションの形成と展開の歴史とともに探究することで、移行期正義の東アジア・モデルを創造する、ⅲ)実証的な 歴史学の方法論では対処しきれない記憶の噴出という現在の東アジアの歴史認識問題を理論的に検証し、記憶と 感情の多層的次元を解明する新しい歴史の基礎理論を構築する、ことを目的に共同研究を推進した。 今年度は、国際共同研究のネットワークづくり中心に研究活動を進めた。東アジアにかんしては、6月に賀衛方(北京大学)らを招聘し、中国の近代と日本の近代についての総括的討論を行った。9月には、西江大学校での東アジアのメモリーレジームにかんするワークショップに複数のメンバーが参加した。3月には、呉豪人(輔仁大学)らを招聘し、台湾を中国の和解の可能性について議論した。ヨーロッパと北米に関しては、最上が6月と3月にローマとバーゼルで招待講演を行ったほか、3月のワシントンDCで開催されたUSJIで、梅森と浅野がパネルを組んで和解学についての議論を深めた。 また、領域を超えて和解学全体を議論するイベントにも積極的に参加した。12月に開催された「和解学創成へ向けて」と題されたキックオフシンポジウムに参加し、和解を、思想・理論という視座から分析する意義について議論を深めた。 研究成果の一部を『ワセダアジアレビュー』を通じて公表したほか、WEBを通じて発信する仕組みを整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的な共同研究のネットワークづくりという点では、当初の予定以上の進展があった。多くの国際シンポジウムを主催または共催することができたほか、海外での研究集会へメンバーが積極的に参加することで、国際共同研究のネットワークが大きく拡大した。 共同研究推進のためのインフラ整備が進んだ。早稲田大学があらたに立ち上げたグローバルアジア研究センターと共同し、研究をすすめていく体制が整ったことにより、共同研究室の確保や、独自のWEBページを使った情報発信、定例ワークショップの開催が可能となった。 グローバルアジア研究センターと共同で、若手研究者を対象に、海外からの招聘講師を中心に定期的にセミナーやワークショップを開催する体制を整えた。本 年度は、7回のワークショップを開催し、その概要をWEBを通じて発信した。 『ワセダアジアレビュー』20号において、特集1として賀衛方北京大学教授を招聘したシンポジウムの記録「中国憲政への道」を掲載し、あわせて特集2「和解学の創成」において、12月のキックオフシンポジウムの内容に即してこれまでの研究成果の一部を発表した。この特集には、本プロジェクトの研究分担者に加え、バラク・クリシュナ(ケンブリッジ大学)、新井立志(国際トレーニング大学院)、南基正(ソウル大学)、張隆志(中央研究院)、趙眞九(高麗大学)、李成鏞(オタゴ大学)、柴田理愛(オタゴ大学)らが執筆した。WEBによる情報発信と『ワセダアジアレビュー』への論文掲載により、最終年度に研究成果をまとめる準備が順調に進んだ。 個々の研究者の個別的な研究分野の研究水準を高めていくこと、若手研究者を育成する体制を整備することに関しては、今まで以上の努力を傾注していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究活動を通じて構築した東アジアと北米・ヨーロッパの各研究機関との国際研究ネットワークを、さらに実質化していくことが必要である。国際シンポジウムの開催に満足することなく、持続的な共同研究の推進と研究活動の公表、若手研究者の共同育成などどいった内容を含んだ骨太の国際共同研究ネットワークの育成に力を尽くす。 今後はそれに加えて、思想・歴史班全体としての、また研究分担者それぞれの研究成果の公表に向けた活動を強化していく。 あわせて政治外交班、歴史家ネットワーク班、市民運動班、文化記憶班など本新領域研究を構成する他の研究グループとの連携を、一層深めていく。
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Research Products
(21 results)