2020 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of the Symmetry in Particle Physics with an Accelerator Neutrino Beam
Project Area | Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrinos |
Project/Area Number |
18H05537
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中家 剛 京都大学, 理学研究科, 教授 (50314175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 努 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (10444390)
中平 武 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30378575)
木河 達也 京都大学, 理学研究科, 助教 (60823408)
小関 忠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 施設長 (70225449)
清矢 良浩 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80251031)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 加速器 / 反粒子 / 対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
T2K実験でニュートリノ振動を精密に測定することで、ニュートリノ質量とその混合を決定し、素粒子の対称性を精査する。対称性は、大統一理論などの新物理を解明する鍵であり、本領域の目標「新しい素粒子・宇宙像の創造」に向けて必要不可欠な研究対象である。目標に達成するためにJ-PARC加速器に設置した新型ビームモニターのデータ解析、新しいニュートリノ反応実験NINJAでのニュートリノ反応断面積測定、そしてニュートリノ振動解析の高度化を進めてきた。(1)J-PARC加速器の「16電極ピックアップ型非破壊ビームモニター」で取得したデータを解析することで、加速中のビームエミッタンスの理解を深化させた。そして、2021年3月から515kWのビーム強度で実験を再開し、新たに~1.8×10^20陽子のデータを蓄積し、統計誤差を改善した。(2)NINJA実験のデータ解析を進めた。過去のパイロットランのデータを使って、ニュートリノ反応断面積とニュートリノ反応で生成される粒子の運動量分布の測定を行った。結果はPRD誌に発表した(A. Hiramoto, et. al, PRD102(2020)72006)。 (3)T2K実験で、ニュートリノ振動解析の高度化を進め、ニュートリノCPの破れのパラメータδ_CPの領域に対して3σの有意度で制限を設けた。その結果はNatureに掲載され、Nature誌の選ぶ 2020年の10大発見に取り上げられた。ニュートリノ振動測定の系統誤差の改善も進み、ミューオンニュートリノサンプルで3.0%、電子ニュートリノサンプルで4.7%、と5%以下に系統誤差を抑えることに成功した。また、統計誤差を改善する目的で複数リングを加えた振動解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止のために海外からの共同研究者の訪日が不可能となり、当初は10月に予定していたデータ収集を2021年3月に延期した。最終的には、日本にいる研究者だけで実験を稼働させた。この間、過去に取得したデータの解析に注力し、ニュートリノ振動解析の最新結果、反電子ニュートリノ出現の探索、π中間子を伴わない荷電カレント散乱断面積、反ニュートリノの2重微分断面積測定、等の物理結果をまとめた。加速器ビームの理解とその改善、ニュートリノ反応の測定、ニュートリノ振動の感度向上、と研究全般は順調に進展した。 (1) J-PARC加速器の「16電極ピックアップ型非破壊ビームモニター」のデータを、遺伝アルゴリズムを使って解析し、1台のモニターからビームエミッタンスを求めることに成功した。2台のモニータによる解析と比べて精度は出なかったが、一台のデータで測定できたことは革新である。2021年3月からニュートリビームデータを取得し、測定の統計誤差を改善した。(2)NINJA実験で2019年度に取得したデータの解析を進めている。原子核乾板フィルムの現像を終え、フィルムのスキャンを進めている。全データの1/10を解析し、ニュートリノ反応が確実に記録されていることを確認した。新しいデータ収集と並行して、これまでに取得した原子核乾板でのニュートリノ反応データを使って、ニュートリノ反応断面積の最初の測定を完了し、論文として発表した。その結果を元に2019年度データの感度予測と、T2K実験での振動解析に与える影響を評価した。(3)ニュートリノ振動の解析では、ニュートリノフラックスの系統誤差の改善とニュートリノ反応模型における系統誤差の改善を進めた。データ収集の時間が減った反面、物理解析に注力することで、ニュートリノ振動の測定とニュートリノ反応測定の新しい結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の影響が続き、海外からの共同研究者の入国予定が立たない状況が続いている。また、それと共に、サプライチェーンの分断等、実験装置製作に対する影響等もある状況にある。それでもJ-PARC加速器の大強度化は着実に進んでおり、2021年度はロングシャットダウンが予定されている。2021年度は新しいデータの取得が予定されていない状況で、これまでに取得したデータをより詳しく丁寧に解析することで、複数の反応形式でのニュートリノ反応断面積の測定と、新しいデータサンプル(複数リング事象)の開発を進め、ニュートリノ振動測定の精度向上を目指していく。 本研究課題では、(1)加速器のビームの理解を深めることによるビーム強度の増加、(2)ニュートリノ反応断面積の精密測定によるニュートリノ反応模型の理解の向上、そして(3)上記の研究結果をまとめることで、ニュートリノ振動測定の高精度化を進めていく。(1)に関しては、J-PARC加速器の電源増強により2022年度から飛躍的なビームパワーの向上が計画されていて、ビームの理解がより重要となっていく。(2)に関しては、福田を中心に複数の博士院生が協力して、データの解析進度を上げていく。(3)に関しては、コロナの影響でビームタイムが減っていることを逆手に取り、物理解析に集中することで、振動測定の更なる精度向上につなげる。現在、θ23の測定精度とCP対称性の破れのパラメータに対する感度は世界最高を達成しているが、さらなる改善を目指していく。
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Remarks |
ニュートリノ解説用のマンガ: https://www-he.scphys.kyoto-u.ac.jp/nucosmos/files/NC-pamph.pdf
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Research Products
(45 results)