2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling the post-Koch ecosystem
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
19H05687
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大津 厳生 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60395655)
小林 達彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70221976)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 微生物 / 微生物機能 / オミクス / 圃場 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物の種と生理機能に基づいて生態系を理解する世界初のポストコッホ機能生態系のモデルを提唱するために、長期安定して運用されている特定のモデル圃場(畑作施肥試験圃)を設定し、その環境情報(土壌等情報)と基本となる微生物情報(各種オミクス情報)を集積することも目指して研究を行った。具体的には、本計画研究では、これらを領域内で共有するプラットフォームのもととなるデータの蓄積を開始した。 ポストコッホ機能生態系のモデルを提唱するためには、特定のモデル圃場の環境コンテキストと基本となる微生物メタ情報を集積することが重要である。そこで、総括班が作付・運営するモデル圃場を対象としてこれらの情報を取得した。具体的には、(1)圃場の土壌試料の取得と保管計画を作付および施肥計画に配慮して立案した。研究期間を通して継続的に土壌試料を取得し班員への試料の配布準備を整えた。(2)土壌の化学分析と物理分析、作物情報や気象情報等の環境コンテキスト情報を取得・整理した。(3)領域全体の微生物の種と機能の基礎メタ情報となる圃場土壌のメタゲノムと化学分析のデータを取得し、作物毎、施肥条件毎の微生物叢を解明を目指した。また、多様な微生物の機能を一つでも多く解明することは領域の大きな課題である。そこで、(4)特に未解明なヘテロ環化合物の代謝微生物の分離・培養、それらの分解酵素・遺伝子・分解機構の多様性を明らかとし、本領域による圃場生態系微生物の新たな種と機能の解明の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
領域が設定するモデル圃場は、異なる施肥条件下で6作物の輪作を長期間安定して管理・運用されている国内唯一の試験圃場である。これを用いて、安定かつ再現性の良い環境コンテキストと微生物関連情報を大規模に得ることで、断片的な知見しか得られていないこれまでの微生物生態学の革新を目指した。本年度は、この圃場にソバとライ麦を作付け、概要に示した(1)~(4)の成果を得た。即ち、(1)施肥条件が異なる6区画の圃場(無肥料、無窒素、無リン酸、無カリ、三要素添加、堆肥添加)から1区画あたり4連の土壌試料を取得した。1作物あたり6時期(施肥前・後、作付後、成長期、収穫、収穫後)の土壌試料を得た。(2)得られた土壌の温度、pH、土壌の粒度、全炭素、全窒素、全リン、TOC、TIC、陰イオン、陽イオン等の分析を行った。作物収量のデータも得た。(3)基礎メタ情報として、1作物あたり144の16S rRNAによる菌叢解析を行った。また、この際、適宜、全遺伝子のメタゲノム解析も行った。これらの情報から施肥および作物種・時期による微生物叢の変化を解明する準備を整えた。(4)多様な微生物の機能の中でヘテロ環化合物に着目し、特に未解明な生理活性物質やビタミンの代謝微生物の分離・培養、それらの分解酵素・遺伝子・分解機構の多様性を一部を解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画研究は、領域期間を通してモデル圃場の微生物叢、土壌化学分析、気象データ、作物情報などを取得することが最大の達成課題であるので、これを継続する。4年8輪作の作付け計画に従って、異なる作物と施肥条件の下で作付けされる圃場のデータを獲得する計画である。計画初年度に大部分のデータの取得が可能であることが判明したので、以降のデータ取得に大きな問題はないと考えられる。領域メンバーとの議論を通して、採取データの項目、質、量についての改変を加えることで最適なデータプラットフォームを構築する計画である。また、次年度以降、蓄積するデータを用いた情報学的解析を行う。 圃場の微生物と微生物機能の解明にも取り組む。具体的には、上記ヘテロ環化合物の微生物代謝の分子機構の解明を継続するとともに、これら微生物の圃場生態における生態学的意義についても検討を進める。他方、圃場微生物のハイスループットなスクリーニング系を新たに構築する。このために、他の計画班と共に新たなマイクロ培養デバイスのデザイン・試作・改良を行う。
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