2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞のキラリティによる左右非対称な組織形態形成のロジック
Project Area | From molecules, cells to organs : trans-hierarchical logic for higher-order pattern and structures |
Project/Area Number |
22127004
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松野 健治 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (60318227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 裕之 千葉大学, 理学研究科, 特任准教授 (00398819)
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Keywords | 左右非対称性 / 平面内細胞極性 / 上皮細胞 / ショウジョウバエ / コンピュータ・シミュレーション / ミオシンI / 生体計測 / バイオメカニクス |
Research Abstract |
動物の器官の左右非対称性の形成機構は、進化的に多様であり、未知の左右極性形成機構が存在していると予測される。研究代表者は、ショウジョウバエの左右非対称性の形成機構に関する研究を行ってきた。ショウジョウバエ胚の消化管は、左右非対称な形態をとる過程で、左ネジ方向に90度捻転する。研究代表者は、この捻転の起こる前に、消化管上皮細胞の形態が、消化管内面の平面内で左右に歪むことを明らかにしている。このとき、個々の細胞はキラルな形状をとりことから、このような性質をplanar cell chirality(PCC)と命名した。コンピュータ・シミュレーションの結果から、この捻転は、PCCに形成とその解消によって起こりうることを示している。本研究では、PCCが形成される機構や、PCCによってどの程度の力が発生しているのかを明らかにすることを目的とし、平成23年度に次ぎの成果を得た。 1、PCCが形成される細胞レベルの仕組みを理解する 平成22-23年の研究で探索、同定した左右非対称性異常を示す突然変異体のうち、fortuneについて、その責任遺伝子がpebble(pbl)であることを明らかにした。pblは、RhoGEFをコードしている。Pblは、消化管の左右非対称形成で機能する、Myosin IDとDE-cadherinよりも上流で機能していた。したがって、Rhoを介するアクチン細胞骨格の制御が、ショウジョウバエ左右非対称性形成の初期段階で機能している可能性が考えられた。 2、消化管の捻転トルクの計測 PCCによって発生している「力」の測定を試みた。磁気ビーズをショウジョウバエ消化管に顕微注入し、磁気ピンセットで磁力を加えることで、捻転の回転方向を人為的に止めることに成功した。また、磁気ビーズと磁気ピンセット管にかかる力の測定方法を確立した。これらよって、消化管のトルクを測定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
左右非対称性に関与している突然変異体の責任遺伝子の同定が順調に進んでおり、左右非対称性の形成機構を遺伝的経路として捉えることが可能になりつつある。また、研究計画の中心であった、消化管の捻転トルクの計測も可能になった。これに対して、PCCのコンピュータ・シミュレーションの改良はあまり進展していない。したがって、プロジェクト全体の進展を総括的に評価すると、おおむね予想どおりであると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、PCCのコンピュータ・シミュレーションの改良を目指して、各種突然変異体の消化管上皮で細胞形態の変化を、バイオイメージングで経時的に観察し、データを取得する。また、野生型と突然変異細胞からなるキメラの消化管上皮細胞におけるPCCを調べ、これをPCCのコンピュータ・シミュレーションに反映させる。
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