2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞のキラリティによる左右非対称な組織形態形成のロジック
Project Area | From molecules, cells to organs : trans-hierarchical logic for higher-order pattern and structures |
Project/Area Number |
22127004
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松野 健治 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60318227)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 裕之 千葉大学, 理学研究科, 准教授 (00398819)
|
Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
|
Keywords | 左右非対称性 / 平面内細胞極性 / 上皮細胞 / ショウジョウバエ / コンピュータ・シミュレーション / ミオシンI / メカノバイオロジー / 生体計測 |
Research Abstract |
からだの左右非対称性の形成機構は、胚発生や器官形成の仕組みを理解するうえで重要である。しかし、器官の形態が左右非対称に変化する機構に関しては、一部の先駆的成果を除いて、あまり研究が進んでいない。研究代表者は、ショウジョウバエ胚の消化管の左右非対称性が形成される過程で、個々の細胞が左右に歪んだ(キラルな)形状(planar cell chirahty、以下PCC)をとることを世界で始めて明らかにしていた。しかし、個々の細胞にみられるPCCを、多数の細胞の集合体である器官形態のレベルと関連づけることは、従来の発生学の解析方法のみでは困難である。これは、これら二つの現象の捉え方に、階層のギャップが存在するためである。本研究では、左右非対称性の形成で機能する遺伝子が、個々の細胞のPCCを介して、器官形態の左右差という高次の現象を誘発するロジックを構築することを目的とする。 ショウジョウバエ胚消化管の細胞の形態を実測し、上皮組織のコンピュータモデルを作って各種パラメーターを適合させることで、消化管の左右非対称な形態の形成がPCCで説明できることを示した。また、体細胞モザイクを利用した実験から、PCCは細胞自立的に形成さることや、左右非対称性の形成で機能するMyosin IDが、細胞接着面を収縮させていることを示唆した。消化管を左右非対称にする「力」は、PCCによって生み出されていると考えられる。磁気ビーズの顕微注入を用いた方法によって、消化管上皮組織を変形させている「力」の実測に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究は、ほぼ計画どおりに進展している。当初の計画にしたがい、「力」の大きさの計測に成功した。また、レーザー・アブレーション法によって、細胞間接着面にかかる収縮量の差を計測する方法をすでに確立している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)PCCが形成される細胞レベルの仕組みを理解する PCCのコンピュータモデルから、消化管の上皮細胞において、細胞接着面の頂端面側(消化管の内側)の収縮力に左右差が存在することが予測できた。これを確認するために、レーザー・アブレーション法によって細胞接着面をせん断し、その部分が広がる速度から収縮力の比を算出する。細胞接着面の左右の向きと収縮力の関連を調べる。これまでのPCCのコンピュータモデルは、頂端面側の細胞接着面を二次元で表したものであった。消化管上皮細胞の三次元構造を解析し、PCCの三次元モデルを新たに構築する。 本研究で実測に成功した組織が発生する「力」を、PCCの二次元、三次元のコンピュータモデルにパラメーターとして導入し、組織変形を細胞レベルの力学で説明する。 (2)「力」の発生における左右非対称性形成遺伝子の機能を理解する 左右非対称性の形成で機能する遺伝子の突然変異のホモ接合体において、磁気ビーズ法を用いて、消化管が生み出す「力」の向きや大きさを測定する。これらの突然変異体における消化管上皮細胞のPCCの状態と、「力」の向きや大きさの関連を、「力」のパラメーターを導入したコンピュータモデルを用いて関連付ける。
|