2013 Fiscal Year Annual Research Report
ノンコーディングRNAによる発現統御ネットワークの解明に基づくがんの個性の描出
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
22134005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50231395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 啓隆 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍, 室長 (30204176)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん / ノンコーディングRNA / マイクロRNA / ネットワーク / パスウェイ |
Outline of Annual Research Achievements |
ドキシサイクリンでMYCを発現誘導可能な肺癌細胞株を樹立し、MYCの影響下にある遺伝子群を抽出してMYCモジュールを規定した。同一の肺癌患者腫瘍組織のmRNAとmiRNAのマイクロアレイデータに適用して、MYCの制御活性と相関するmiRNAを探索したところ、MYCの標的遺伝子とする、或いは、MYCを標的遺伝子とする既報のmiRNAを複数含んでおり、探索戦略の堅牢性が確認された。さらに、MYCによって発現に影響を受けず、腫瘍組織中ではMYCモジュールに反映されるMYCの制御活性と相関を示すmiR-342を同定した。種々の検討を進めた結果、miR-342は、MYCをハブとする遺伝子発現調節ネットワークにおいて、MYCの結合部位と近傍のゲノムDNAに結合し協調的に働くE2F1遺伝子を標的とするという、これまでにない様式でMYCの転写活性を制御するmiRNAであることが明らかとなった。 また、肺癌の神経内分泌分化を司るASH1に関して、76症例の肺腺癌において、EEM解析を通じて規定したASH1モジュールの発現量と、有意な相関を示す45個のlincRNAを抽出した。その階層的クラスタリング解析は、ASH1モジュールが高い活性を示すクラスターの症例は、有意に高浸潤性・高悪性度であり、またp53変異を多く含み、TRU型腺癌が少なかった。さらに、ASH1のDOX依存的な発現誘導可能な肺癌株を用いて、実験的にASH1の制御下にある345個のlincRNAを含む1677遺伝子を抽出し、階層的クラスタリング解析を肺腺癌76症例において行った。その結果、ASH1制御下にあるCDH1やCHGB1等とクラスターされる185個のlincRNAを抽出し、とくに強くASH1による発現制御を受けている11個のlncRNAの抽出に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺癌においてしばしば遺伝子増幅を伴って、高頻度に過剰発現を呈するMYC遺伝子をハブとする遺伝子発現制御の分子機序について、その制御に関わるmiRNAの探索・同定を通じて迫るべく研究を進めた。これまでに報告のあるMYCの上流或いは下流に位置するmiRNAが同定されたのみならず、MYCと協調的に機能することが知られているE2F1を標的とするmiR-342を見出すことに成功した。本研究において、肺癌患者腫瘍組織におけるMYCによる転写制御との関連性の検討と、MYCによる転写制御に関する実験的な検討を通じて得た情報の双方を統合して、MYCをハブとする遺伝子発現調節ネットワークに迫るための研究の出発点としている点は、これまでに無いアプローチである。また、MYCの結合部位と近傍のゲノムDNAに結合し協調的に働くE2F1遺伝子を標的とするmiR-342の同定に成功したことは、従前のアプローチと異なりMYCモジュールとしてみたMYCの転写制御活性との関連を基盤に探索を進めるユニークなアプローチによって初めて可能となった。ASH1関連のlncRNAに関する研究を含めて、本研究課題で進めている統合的アプローチは、従前に比してより俯瞰的な視点から、実際の癌患者の腫瘍組織中で機能している制御関係を直接抽出できることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、癌の分子病態を遺伝子発現制御システムの異常と捉えて、mRNAのみならずncRNAの関与を含めて、その全体像を解明することを目指している。本年度の研究においては、患者腫瘍組織と実験系を用いたmRNAとmiRNAの両方の網羅的遺伝子発現データについてインシリコの解析によって探索した肺癌の発生と進展に関わるMYC癌遺伝子と関連するmiRNAについて、分子細胞生物学的な実験的手法を用いて検証を進める統合的なアプローチによって、これまでにない新しい関与の形態を示すmiRNAの同定という興味深い成果を得た。今後はさらに、miRNAよりも長い鎖長を持つlong non-coding RNA (lncRNA)を、研究対象により積極的に採り込んで、検討を進めたい。lncRNAについて、未だほとんど情報が無く、癌との関連を探る手法に極めて乏しい。そこで、MYC, ASH1, TTF-1/NKX2-1, p53等の重要な癌関連転写因子の発現制御に関わるlncRNAの同定を、システム生物学的解析手法を用いて探索し、それを実験的に検証するというアプローチを、双方をより密接に統合することを通じて実現していきたいと考えている。とくに、最近、本研究領域の宮野班に所属する島村らが開発に成功した、発現制御モジュレーターの探索解析用のソフトウェアを駆使することによるインシリコの探索に目途が立ちつつあるので、その方向で発展させて行きたいと考えている。
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[Journal Article] SGOL1 variant B induces abnormal mitosis and resistance to taxane in non-small cell lung cancers2013
Author(s)
Matsuura S, Kahyo T, Shinmura K, Iwaizumi M, Yamada H, Funai K, Kobayashi J, Tanahashi M, Niwa H, Ogawa H, Takahashi T, Inui N, Suda T, Chida K, Watanabe Y, *Sugimura H.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 3
Pages: 3012
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Analysis of CLCP1, a potential target for lung cancer diagnostics and therapeutics2013
Author(s)
Osada H, Yagi K, Yanagisawa K, Akatsuka J, Tatematsu Y, Kato S, Yatabe Y, Ono K, Sekido Y, Takahashi T
Organizer
第36回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
神戸国際会議場(神戸市)
Year and Date
2013-12-03 – 2013-12-06
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