2013 Fiscal Year Annual Research Report
多階層データに基づく心臓電気現象の統合的機能シミュレーション
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
22136011
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中沢 一雄 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50198058)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 亮 独立行政法人国立循環器病研究センター, 情報統括部, 室長 (00393215)
井尻 敬 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 基礎科学特別研究員 (30550347)
清水 渉 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50399606)
池田 隆徳 東邦大学, 医学部, 教授 (80256734)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80396259)
|
Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
|
Keywords | 不整脈 / シミュレーション |
Research Abstract |
1)不整脈の機序解析:心室細動などの致死性不整脈のコンピュータシミュレーションによる解析を行っている。従来の心室較差のみを導入した心室壁モデルに、心筋線維走向のねじれを導入したモデルを新たに構築した。致死性不整脈現象の基本的メカニズムとなるスパイラルリエントリーの動態と心筋線維走向との関係について解析した。心筋線維走向のねじれは、スパイラルリエントリーを抑制する働きを有することを理論的に明らかにした。 2)心臓刺激伝導系の興奮伝導解析:刺激伝導系の一部である房室結節とプルキンエ線維を対象としたシミュレーションを行った。房室結節については、心房細動時における心室拍動の制御機構について検討した。生来の拍動制御機構に加え、心房細動のレートコントロールを前提としたチャネル遮断薬による拍動制御メカニズム、カルシウムチャネル遮断とカリウムチャネル遮断との機序の違いについて明らかにした。また、プルキンエ線維を起源とする心室性不整脈の生成および維持に果たす役割について検討した。プルキンエ線維の細胞間結合力を決定する遺伝子の変異により、結合力の低下が生じると不整脈の誘発性が高くなることを明らかにした。併せて、プルキンエ線維を対象としたアブレーションによる不整脈治療実現の可能性についても検討を行った。 3)iPS細胞モデルを用いたシミュレーション解析:iPS細胞を用いて作成した心筋シートの機能評価をシミュレーションにより行った。ヒト心筋との差異や薬物に対する安全性を評価した。 4)心電図による不整脈リスク評価:クラスIC群の抗不整脈薬による心電図の変化の解析を心房粗動の患者を対象として行った。患者の一部には,抗不整脈薬によりBrugada型の心電図が出現したが、平均85ヶ月のフォローアップ期間内において、心室性不整脈は発生しなかった。Abeらによる論文が研究成果として発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の本荘班 (A02-4)および倉智班(A01-1)との連携に加えて、蒔田班(A02-1)との連携で、心筋のギャップ結合における膜蛋白質コネキシンの遺伝子変異を想定したプルキンエ不整脈の発症についても成果が出るようになった。前者の研究では、平成26年4月において、本荘班との連携による洞結節の不均質性解析の成果は論文発表され、また倉智班との連携による成果は投稿中である。後者の研究では、実際は複雑なプルキンエ線維の形状や心室筋への結合を、なるべく1次元あるいは2次元の単純モデルにreductionし機能的に心臓の電気現象を再現するシミュレーション技術の開発をして、その成果をいくつかの学会で発表を行った。一方、課題となっていた具体的臨床応用に向けた研究も徐々に進展して、心房細動のレートコントロールやiPS細胞心筋シートの機能評価のためのシミュレーション研究の成果が発表できるようになった。逆に、薬物動態とリンクした薬物性不整脈のシミュレーション研究が実現できなかったことは、異分野連携による共同研究に対する困難さの課題として残されている。技術的にも、薬物動態は分単位の時間スケールに対し、不整脈のシミュレーションはミリ秒単位の時間スケールであるため、時間のマルチスケールの問題解決には単純な連携では不可能であることがわかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
多階層の生体機能学として、特に薬物循環動態を反映した心臓の興奮伝播過程シミュレーションの実現をめざし、最終的には研究成果を「システムバイオロジープラットフォーム」上で稼働可能とすることが目標である。今後、具体的には次のような課題に対するシミュレーション研究を計画している。1)光学マッピングなどの実験データとシミュレーションの連携による心臓興奮および不整脈の機序解明、2)慢性心房細動に対するアブレーション治療や心臓の一部あるいは全体を冷却して異常興奮波を停止させる除細動メカニズム、3)心房から心室に至る刺激伝導系における興奮伝導の解析、4)遺伝子変異によるプルキンエ不整脈の発症機序解明、5) 薬物循環動態モデルを反映した興奮伝播過程シミュレーション。6)タブレットPCなどを用いた心臓形状変形の機能的シミュレーション。特に、薬物循環動態モデルの反映については山下班(A03-1) と、さらにシミュレーションの実施については天野班(A01-3)と連携を行う予定である。
|
Research Products
(19 results)
-
-
-
-
[Presentation] echnological Development of Heart Simulators for Various Computer Platforms in the Medical and Health-care Fields2014
Author(s)
Kazuo Nakazawa, Shin Inada, Ryo Haraguchi, Takashi Ashihara, Isao Shiraishi, Ken-ichi Kurosaki, Suzu Kanzaki, Takeo Igarashi, Takashi Ijiri, Yuki Koyama, Takanori Ikeda
Organizer
The 78th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Sciety
Place of Presentation
Tokyo
Year and Date
20140321-20140321
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Simulation study of ventricular rate control therapy during atrial fibrillation using one-dimensional cable model with two conduction pathways2013
Author(s)
Shin Inada, Takako Ono, Nitaro Shibata, Michiaki Iwata, Ryo Haraguchi, Takashi Ashihara, Atsuko Abe, Takanori Ikeda, Kazuyuki Mitsui, Mark R. Boyett, Halina Dobrzynski, Kazuo Nakazawa
Organizer
0th International Congress on Electrocardiology
Place of Presentation
Glasgow, United Kingdom
Year and Date
20130807-20130810
-
-
-
-
[Presentation] Multi-scale simulation studies of excitation conduction from the sinoatrial node to the ventricles in the heart,2013
Author(s)
Shin Inada, Daniel T. Harrell, Takako Ono, Ryo Haraguchi, Takashi Ashihara, Halina Dobrzynski, Haruo Honjo, Nitaro Shibata, Takanori Ikeda, Kazuyuki Mitsui, Naomasa Makita, Itsuo Kodama, Mark R. Boyett, Kazuo Nakazawa
Organizer
The 2nd HD Physiology International Symposium: Multi-Level Systems Biology
Place of Presentation
東京
Year and Date
20130628-20130629
-
-
-
-
-