2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
23107008
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩田 博夫 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (30160120)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 行広 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師(Lecture) (50503918)
北村 成史 京都大学, 再生医科学研究所, 研究員 (50624912)
有馬 祐介 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (90402792)
|
Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞 / 細胞凝集体 / 相互作用 / 配置 / 脂質 |
Research Abstract |
1.ポリエチレングリコール-脂質(PEG-lipid)の脂質構造と細胞表面修飾能:アルキル鎖数および鎖長が異なるPEG-lipidを合成し,細胞膜への導入挙動を比較した。アルキル鎖数は,1本より2本有する分子の方が細胞表面へ導入されやすいことが分かった。また,アルキル鎖長依存性を調べたところ,アルキル鎖1本の場合は長いほど導入量が多かった。一方,アルキル鎖2本の場合,炭素数16のものが最も導入量が多く,それ以上に鎖長が長くなると導入量の低下することが分かった。 2.内皮細胞内部への抗酸化剤含有リポソームの送達による再灌流障害の軽減:血管内皮細胞の表面を一本鎖DNA (ssDNA)-PEG-lipidで修飾した後,その相補DNA配列を提示したビタミンE含有リポソームをDNAハイブリダイゼーションにより結合させた。その後の培養時間と共に細胞内部へリポソームが取り込まれることが分かった。また,ラットex vivoモデルにおいて再灌流による心毛細血管の障害を低減することができた。 3.MRI観察のための膵島細胞への酸化鉄ナノ粒子 (SPIO) の標識:トリプシン処理で単個細胞にした膵島の細胞表面にSPIO標識を行い,これを再凝集させることでSPIO標識膵島を作製した。標識および再凝集による細胞機能の低下は見られなかった。この方法によりSPIOを膵島内部の細胞にまで導入することができ,膵島表面のみをSPIO修飾した場合に比べMRIコントラストを向上させることができた。 4.ポリ乳酸への位置特異的接着の制御:ポリ乳酸(PLA)のフィルムおよびファイバー表面にssDNAを固定化し,相補鎖を有するssDNA’-PEG-lipidで修飾した細胞を接着させた。ssDNAの配列に応じて細胞の接着箇所を制御することができた。また,接着した細胞は伸展・増殖し,通常の細胞と同様の挙動を示すことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質部の異なるPEG-lipidを用いた細胞表面修飾により,脂質部の構造が細胞膜への導入・ 脱離に及ぼす影響を速度論的に解析することができた。この情報は,使用目的に応じた分子設計に対し重要な指針を与えるものである。また,ssDNA-PEG-lipid修飾を介したDNAハイブリダイゼーションによって,MRI造影剤であるSPIOやビタミンE含有リポソームを固定することができ,医療応用においてもこの分子の有用性を示すことができた。さらに,複数種の細胞からなる3次元組織の構築へ向け,ssDNA-PEG-lipidを用いたポリ乳酸足場への位置特異的な細胞接着の制御も実現することができた。これらは当初の計画通り遂行することができた。 一方,制限酵素切断部位を有するssDNA-PEG-lipidを用いた細胞の接着および解離の制御については,生理的条件下での制限酵素の活性低下などにより年度内で遂行することができなかった。制限酵素の活性を維持する条件などは最適化できつつあり,その条件を用いて次年度で細胞の解離制御を目指す。また,複数種の細胞を含む集団内での細胞の配列に関しては,実験および数理モデルを構築し解析を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
制限酵素による細胞接着・解離の制御:制限酵素処理条件(溶液組成,濃度など)を検討し,細胞解離の最適化を行う。得られた条件を基に,DNAハイブリダイゼーションを介した基板-細胞および細胞-細胞間接着・脱離の制御を試みる。 細胞膜に導入されたssDNA-PEG-脂質の挙動解析:蛍光標識したssDNA-PEG-脂質の細胞膜への導入量および導入・脱離速度を解析する。相補鎖となるssDNA’-PEG-脂質で修飾した細胞と接着させ,それに伴うssDNA-PEG-脂質の局在状態・脱離速度の変化を調べる。双方の結果から,ssDNA-PEG-脂質単独および多点で結合した時の挙動を比較する。また,DNAを介した細胞接着面におけるssDNA-PEG-脂質の挙動を定量的に評価するため,ガラス基板表面に形成させた脂質二重膜を細胞膜のモデルとして用いる。そこへssDNA-PEG-脂質を導入し,細胞接着前後における挙動を解析する。 複数の細胞からなる3次元組織体の構築:分解性高分子であるポリ乳酸またはスターチを足場として用い,ssDNAの配列多様性を利用して複数の細胞を接着させる。長期培養および足場の分解により,複数種の細胞からなる3次元組織を作製する。培養に伴う3次元組織中の各種細胞の配置を調べ,それを制御するためのパラメータ・手法を探索する。
|
Research Products
(18 results)