2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体リズムの少数性生物学-生命システムにおけるターンオーバー制御と分子少数性-
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
23115006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上田 泰己 独立行政法人理化学研究所, システムバイオロジー研究プロジェクト, プロジェクトリーダー (20373277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 英樹 独立行政法人理化学研究所, 合成生物学研究グループ, 研究員 (70391878)
中嶋 正人 独立行政法人理化学研究所, 合成生物学研究グループ, 研究員 (50432232)
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Keywords | 概日時計 / 少数性 / ターンオーバー制御 / 温度補償性 / CKIε/δ / 酵素基質相互作用 |
Research Abstract |
本提案では、哺乳類の概日時計を材料に、その正確性・頑健性・適応性をもたらす分子機構・ネットワーク機構を、ネットワーク構成要素の少数性に着目した以下の2つの問題に対するアプローチを通じて解明することを目指す。 1)「ターンオーバー制御による周期の正確性」概日リズムの周期は、その構成分子の少数性に比して正確である。本項目においては、各構成分子のターンオーバーに着目し、時計タンパク質の細胞内分子数および合成・分解速度の定量的測定を行うとともに、細胞の概日振動リズムを測定しながら各構成因子の合成速度と分解速度を制御することによって、ターンオーバー制御がシステムに与える生理的意義を明らかにすることを目指している。細胞内タンパク質ダイナミクスの定量測定やターンオーバーの制御を行うためには、細胞内在性の遺伝子へのTag配列挿入などを可能とする高速なゲノム改変技術が有用である。そこで本年度は、各種時計遺伝子破壊マウスES細胞株の作製と、組み換え酵素依存的カセット交換法を用いたゲノム改変技術の導入を行い、その高速化に成功した。 2)「タンパク質間相互作用および酵素反応特性による周期の頑健性・適応性」概日リズムは、外部環境の温度変化に対して頑健である。特に温度補償性と呼ばれる概日リズム周期の温度非依存性は、概日リズムにおける頑健性の顕著な例である。我々は概日リズムの頑健性が、リン酸化酵素CKIε/δによる時計タンパク質PERIODのリン酸化と密接に関係すると考え、このリン酸化反応の解析を行った。本年度は酵素基質相互作用に着目して解析を行ったところ、酵素による基質認識および反応物の解離過程が、反応全体の性質を決める律速過程であることを示唆する知見を得ることが出来た。これらの知見を基に、酵素基質相互作用および酵素反応物相互作用を改変した変異体の設計を始めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「ターンオーバー制御」に関しては、必要な従来手法の導入整備を行うだけに留まらず、そのハイスループット化に成功した。「タンパク質間相互作用および酵素反応特性」に関しては、反応の性質を決める律速過程を同定することに成功しつつあるなど、当初の計画を上回る成果をえることに成功し、この知見を基に酵素反応の制御手法の開発に着手するなどの計画以上の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
「ターンオーバー制御」に関しては、本年度に導入・改良した基盤技術を用いて、分子の定量測定に必要な細胞のライブラリーを作製するとともに、領域内の有機的な技術交流により定量測定実験系の整備を行う。「タンパク質間相互作用および酵素反応特性」に関しては引き続き酵素反応の解析を行いつつ、反応特性を操作する手法開発を行う。いずれの計画も得られた知見の遺伝子改変細胞での検証が必須であり、遺伝子のノックアウトレスキュー系の早期確立が重要な課題となっている。
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