2012 Fiscal Year Annual Research Report
Neural Circuits Enabling Model-based Decision-making.
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
23120006
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 前頭前野 / 推論 / 目的志向性 / 単一ニューロン / 局所場電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの意思決定は、事象と報酬の経験的関係を客観的・確率的に結び付けて価値を計算するモデルフリーシステムと、直接経験によって形成された連合をカテゴリーや論理によって結びつけ、直接経験していない価値の予測を可能にするモデルベースシステムの協調と競合によって成り立っている。特に、ヒトを特徴づける複雑な思考能力は、モデルベースシステムが持つ内部モデルを使ったシミュレーション能力にあると考えられる。この機能の理解は、ヒトの意思決定や思考の特徴の理解につながり、ひいては人間の科学的理解にもつながる。本プロジェクトでは、推移的推論課題と自由選択課題を訓練したサルの前頭前野と大脳基底核線条体に複数の電極を刺入し、単一ニューロン活動と局所場電位を記録、相互作用の解析を行うことにより、前頭前野においてどのように内部モデルがコードされ、それがどのように脳内シミュレーションに使われるのかを明らかにすることを目的とする。24年度は、推論課題遂行中のサル前頭前野外側部と大脳基底核線条体から、単一ニューロン活動と局所場電位を記録・解析した。前頭前野外側部は、その抽象化機能(カテゴリー化機能)に依存して、推移的推論(三段論法)が可能であるのに対し、大脳基底核線条体は、推移的推論は計算できないが、選言的推論(X_OR)機能を持つことを世界で初めて明らかにした。また、2つの部位から同時記録した局所場電位の相互作用を解析したところ、2つの部位は、比較的独立に、異なるプロセスで価値の計算を行っているという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報酬予測に関わる脳機能として、前頭前野と大脳基底核は、その計算の仕方に根本的な違いがあることを見出した。特に、大脳基底核線条体の選言的推論機能の発見は、我々が知る限り、初めてのものであり、2つの部位の報酬予測に関する機能的関係性の理解を大きく進めた。また、両部位からの局所場電位の同時記録により、これらの推論機能については両部位間で大きな相互作用がない、という結果が得られたが、この点に関しては、さらに実験と解析を進めて行きたい。平成24年度は、前頭前野と大脳基底核線条体の機能的相互作用をより精緻なレベルで明らかにするために、ウイルスベクターを使った研究がサルでも可能であるかについて検討するパイロットスタディーも始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの推移的推論課題を使った、前頭前野と大脳基底核線条体との機能的相互作用の検討を、単一ニューロン活動と局所場電位を使って進めていくと同時に、新たな可能性として、ウイルスベクターを使った機能的ネットワーク実験の可能性も探る。サル前頭前野と大脳基底核線条体の間には密接な相互連絡があるが、どのような情報が前頭前野から大脳基底核に送られ、どのような機能的役割を果たしているか、詳細に調べる方法は、これまでなかった。両部位にウイルスベクターを使って新たなレセプターを発現させ、特定の連絡をスイッチon/offさせることにより、機能的相互作用を調べるための基礎研究を新たに始めた。すでにテスト段階に入っている。
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