2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Elucidation of neural computation for prediction and decision making: toward better human understanding and applications |
Project/Area Number |
23120006
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 前頭前野 / 推移的推論 / 選言的推論 / ウイルスベクター / 大脳基底核 / 意思決定 / DREADD |
Research Abstract |
平成25年度は、推論課題遂行中のサルからの単一ニューロン記録実験の結果をまとめ、Journal of Neuroscienceに発表した(Pan et al., 2014)。モデルフリー機能は、経験したことだけを再現する機能であり、モデルベース機能は経験に基づきながらも、経験によって得られた情報を組み合わせることにより、全く新しい環境にも柔軟に適応できる機能であると定義されてきた。これまで、前頭前野外側部がモデルベース機能を、大脳基底核がモデルフリー機能を担っていると考えられてきた。確かに、推移的推論機能は前頭前野ニューロンには見られるが、大脳基底核(特に線条体)ニューロンには見られなかった。しかし、大脳基底核線条体ニューロンは、選言的推論(exclusive or)機能を持つことが示され、上で定義されたようなモデルベースvs.モデルフリーという機能の違いで、前頭前野機能と大脳基底核機能を説明し得るという考え方には、修正が必要であることが、示唆された。 さらに、意思決定に関わり、前頭前野の情報と大脳基底核の情報が、どのように統合されるかを調べるために、ウイルスベクターの2重感染実験を開始した。サルの前頭前野に、Cre依存的な人工受容体(DREADD)を発現させるウイルスベクターを感染させ、その投射先である大脳基底核線条体に、逆行性に軸索をさかのぼってCreを運ぶ別のウイルスベクターを感染させた。その結果、前頭前野にCre依存的にDREADDが発現した証拠となるマーカー(RFP)が発現したことを確認した。これまで、マカクザルでこのような2重感染法が有効に働くことを示した報告はない。今後は、発現したDREADDに作用し、この回路の活動を選択的に遮断する薬物を使用して、前頭前野-大脳基底核回路機能が情報統合に果たす役割を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、2つの研究を行うことを提案した。ともにサルを使った研究であるが、ひとつは、推論課題遂行中のサル前頭前野と大脳基底核からニューロン活動を記録し、モデルベース的機能vs.モデルフリー的機能という観点から、その違いを明らかにしようとするものであった。この研究では、前頭前野に推移的推論機能が見られるのに対し、大脳基底核ではそれが見られないことを明らかにし、高次認知機能の脳の基礎的メカニズム解明に大きな貢献を果たすことができた(成果はJournal of Neuroscience(2014)に発表)。ふたつ目は、ともに報酬予測情報をコードする前頭前野と大脳基底核が、どのように相互作用し、情報が統合されていくのかという研究であり、本研究課題における後半のメインテーマである。昨年度は、これに必要なウイルスベクターの2重感染法のサルでの確立が目的であったが、最近、2重感染がうまくいっていることを2頭のサルで確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、サルの前頭前野に、Cre依存的な人工受容体(DREADD)を発現させるウイルスベクターを感染させ、その投射先である大脳基底核線条体に、逆行性に軸索をさかのぼってCreを運ぶ別のウイルスベクターを感染させた。その結果、前頭前野にCre依存的にDREADDが発現した証拠となるマーカー(RFP)が発現したことを確認した。平成26年度は、2重感染によって、前頭前野外側部の線条体に投射を持つニューロンに発現したDREADDに作用する薬物(CNO)を投与し、それに伴い前頭前野外側部から線条体への情報伝達を遮断することによる行動への効果を調べる。この実験に使うサルには、あらかじめ報酬予測課題を学習させており、この回路の機能的遮断により、報酬予測行動が変化することが期待される。さらに、このときのニューロン活動の変化を調べるため、単一ニューロン活動の記録も行う。
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Research Products
(20 results)