2012 Fiscal Year Annual Research Report
医療用マイルドプラズマによる創傷治癒の確立とプラズマー組織細胞交互作用の解明
Project Area | Plasma medical innovation |
Project/Area Number |
24108006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
池原 譲 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 研究チーム長 (10311440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊田 創 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究グループ長 (90357088)
中西 速夫 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, 室長 (20207830)
池原 早苗 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 産総研特別研究員 (50598779)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ医療 / 止血 / 創傷治癒 / プラズマ計測 / 実験病理 |
Research Abstract |
1)プラズマが作用する生体分子ネットワークの探索 24年度は、これまで止血効果の検討を重ねてきた医療用プラズマ装置を使用し、観察される「止血に始まる創傷治癒」のプロセスで発現する遺伝子・糖鎖について、その網羅的発現解析を実施した。結果、止血に始まる創傷治癒に関連して発現する分子群の全体像に迫ることができた。さらに、プラズマ照射後の糖鎖に、開環して生じた反応性の高いアルデヒド基が存在することを見出している。線溶凝固系では、酵素反応で生じる活性種(ラジカル)の受け渡しで、タンパクの凝集・架橋の進むことが知られているが、我々の結果は、i)糖鎖には、反応性の高いアルデヒド基がプラズマの作用で形成されること、ii) これを仲立ちとして糖タンパクの凝集・架橋が止血効果のメカニズムの一つとなっていることを、示唆するものである。これを踏まえて、その検証を進めているところである。 2)プラズマによるタンパク凝集・分散を解析 本研究課題では、プラズマの作用する分子メカニズムの理論化のため、血液中タンパクの凝集・分散効果を対象に解析を進めている。生体分子に作用するプラズマの時間的安定性や生成される粒子種の同定や電流などのパラメーターの計測は、医療機器の性能評価と安全性、臨床での実用化、研究実施により得られるデータの解釈においていずれも重要となる。そこで、タンパク分子への作用をより正確に捉えて解析するために、医療用プラズマ装置と同等の性能で、生体分子の量・体積に適した照射が可能となる分子・細胞レベルの実験に適した生化学実験用プラズマ発生システムを組み上げてきている。更に、当該プラズマの質を評価する計測システムとして、近赤外分光法、可視分光法、及びリアルタイム電流計測法等を駆使した研究を実施してきている。以上を持って、今後生化学プラズマ実験技術の基盤を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)プラズマが作用する生体分子ネットワークの探索 止血に始まる創傷治癒のプロセスをモデルに、a)組織病理学的解析、b)遺伝子・糖・タンパクの網羅的解析を行って交互作用と分子メカニズムを明らかにすることを予定している。これまでに、プラズマ止血後の創傷治癒と電気凝固装置を用いた止血後の創傷治癒の違いについて、マウスモデルの病理組織学的解析と遺伝子発現のプロファイル解析を進め、プラズマ止血後の創傷治癒が、良好なプロセスにあることを示す候補分子の発現を同定するに至った。さらに、プラズマ照射後の糖鎖に生じる反応性の高いアルデヒド基の存在を見出すに至り、照射されたプラズマに由来するラジカルの受け渡しを介した「糖タンパクの凝集・架橋」についての全容解明と反応のモデル化の手がかりを得ることができた。さらには、血管・リンパ管内皮について遺伝子発現変化の解析も完了することができた。 2)プラズマによるタンパク凝集・分散を解析 プラズマによる血液タンパクの凝集・分散効果を生化学的に検討し、タンパク質の機能改変への利用展開を行っていくために、生化学実験用のプラズマ発生システムの開発を行ってきた(当該装置のスペックとしては、プラズマが作用する生体分子ネットワークの探索において使用している医療用プラズマ装置と同等の装置スペックが保証されている必要があり、真空排気系、多種類のガス導入系、生体関連物質導入・固定系などから構成される)。更に、プラズマを生体に照射している状態において、空間の環境がどのように変化をしているかを調べることは、生体分子との相互作用を理解する上で重要な要素となる。そこで、分光計測と並行して、プラズマ電流の成分を精度良く計測するシステムを利用して、マウスを通して流れる電流成分のリアルタイム計測を実現した。 以上を鑑みて、現在までの達成度は、おおむね順調な進展にあるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の変更予定はなく、当初の計画書に沿って進める方針であり、下記に概要を示す。 1)プラズマが作用する生体分子ネットワークの探索 25年度に、プラズマ照射による止血処置と、従来の止血装置を用いた場合の止血処置後に生じる創傷治癒プロセスの違いを説明しうる分子メカニズムを明らかにするとともに、in vivoでのプラズマ照射状態を可能な限り再現して、実際の生理・病態でのプラズマ照射による効果効能評価法を確立する。具体的には、平成24年度に購入した3次元培養対応蛍光顕微鏡システムを用い、三次元培養下で腺管構造が再現される膵臓がんやリンパ管細胞株を対象としてプラズマ照射を行って、プラズマ照射に対する応答や、各種増殖因子に対する反応性を検討する。得られた成果をもとに、27年度以降に、プラズマによる作用や効能について、創薬等ライフサイエンス研究での利用可能性を検討するべく、システムバイオロジーとしての水平展開へと進む予定である。 2)プラズマによるタンパク凝集・分散を解析 本項目では、血液中タンパクの凝集・分散効果についての解析を進め、プラズマが作用する分子メカニズムを理論化する。そこで、a) 開発する生化学実験用プラズマ発生システムを用い、b) プラズマによる血液タンパクの凝集分散効果を生化学的に検討することにより凝集・分散メカニズムの理論化を進め、c) 体系化した原理に基づいて、タンパクを凝集・分散する制御技術を確立し、タンパク質の機能改変への利用展開を行う計画である。平成25年度は、開発を行っている生化学実験用プラズマの時間的安定性や生成される粒子種の同定を進めるために、近赤外分光法、及び可視分光法等を駆使してプラズマの質を評価する。
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Research Products
(22 results)