2013 Fiscal Year Annual Research Report
K6およびK63ユビキチン鎖によるDNA修復制御機構
Project Area | New aspect of the ubiquitin system : its enormous roles in protein regulation |
Project/Area Number |
24112005
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
太田 智彦 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233136)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | ユビキチン / BRCA1 / DNA修復 / 乳癌 / 薬剤感受性 |
Research Abstract |
平成25年度は下記の結果を得た。 1. DNA二本鎖切断(DSB)における相同組換え修復(HR)ではATMとユビキチンリガーゼRNF8およびRNF168によって形成されたユビキチンK63鎖にBRCA1-Abraxas-RAP80複合体が集積することがこれまでに明らかにされた。しかし、この複合体の機能は過剰なHRの抑制であり、HRを行うBRCA1複合体がどのようにATM依存的に誘導されるかはわかっていない。これに対して我々はBRCA1のDSB局所への安定維持に必要な、BARD1とLys9ジメチル化ヒストンH3(H3K9me2)の結合を介した新規メカニズムを発見した。この結合はHP1γを介しており、内因性BARD1をHP1との結合を阻害するミスセンス変異体に置換した細胞ではBRCA1/BARD1のDSBへの集積が阻害される。この結合はATM依存的であるが、RNF168非依存的で、HRのエフェクターであるRAD51の集積と非相同末端連結のエフェクターであるRIF1の排除に必要である。すなわち、BRCA1/BARD1/HP1γ複合体はATM依存的にHRを行うBRCA1複合体であり、これまでによく知られているATM-ユビキチン経路を介したBRCA1-Abraxas-RAP80複合体はこれに拮抗するものと考えられる。結果の主要部分については現在revise論文を投稿中である。 2. 上記の結合に加え、我々がこれまでにBRCA1のユビキチン化基質として同定しているNPM1とHP1の結合、脱ユビキチン化酵素BAP1とNPM1の結合、およびBRCA1/BARD1によるHP1γのユビキチン化を同定している。 3. ユビキチンK6鎖抗体についてはK6にユビキチンが結合したペプチドを用いてマウスを免役し、モノクローナル抗体を2度にわたり作成したが、恒常的に十分な特異性をもつ抗体を産生するハイブリドーマは得られなかった。現在異なったペプチドを用いてマウスを免役し、モノクローナル抗体を再度作成中である。 4. 原発性乳癌におけるHRのプロモーターメチル化と化学療法感受性に関する論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したsiRNAスクリーニングは前年度にも記したとおり解析は進んでいないが、他のスクリーニング法により、上記に示したように重要な蛋白結合およびそのDNA損傷応答における機能を同定した。この機能は下記に述べるとおり、今後の大きな進展が期待される突破口となりえると考えており、癌治療への臨床応用という点からも重要である。ユビキチンK6鎖抗体は依然として得られていないが、これまでの失敗から得られた知見が蓄積してきており、現行の方法では目的の抗体が得られることを期待している。現行程では5月中には抗体が得られ、初期の解析ができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は下記を行う予定である。 1. NPM1とHP1の結合およびBAP1とNPM1の結合の生理的意義、DNA損傷応答における役割を解析する。 2. BRCA1, BARD1, HP1γ、NPM1、ヒストン非修飾ヌクレアソーム、H3K9me2ヒストンメチルトランスフェラーゼG9aを生成し、H3K9me2とBARD1-HP1γの結合を介したH2A のK119残基のユビキチン化のin vitro再構築計を確立する。 3. Doxycyclin-誘導性にBRCA1に対するshRNAとユビキチンリガーゼ死活型のBRCA1変異体を同時に発現する細胞株を樹立し、ヒト細胞におけるヘテロクロマチン形成および各種DNA損傷における相同組換え修復でBRCA1のE3活性が果たす役割を解析する。また、エストロゲン受容体による転写によって引き起こされるDNA損傷がBRCA1のE3活性によって変化するか否かを解析する。 4. DNA損傷応答におけるユビキチンリガーゼHERC2の役割を解析する。5. ユビキチンK6鎖モノクローナル抗体を作成する。6. 乳ガン検体におけるユビキチン関連HDR遺伝子の体細胞変異を明らかにする。
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Research Products
(6 results)