2013 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン識別タンパク質によるポリユビキチン鎖情報のデコード機構とその役割
Project Area | New aspect of the ubiquitin system : its enormous roles in protein regulation |
Project/Area Number |
24112007
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川原 裕之 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70291151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 直人 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40610564)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | ユビキチン / プロテアソーム / タンパク質の品質管理 / テイルアンカータンパク質 / BAG6 / 分子シャペロン / 細胞内タンパク質分解 / ユビキチン識別タンパク質 |
Research Abstract |
「ユビキチンコード」は、膨大な情報を内含した情報提示システムを形成している。本課題では、BAG6を中核とした新しいユビキチン識別タンパク質群の解析を推進している。研究代表者らはこれまで、BAG6 複合体が、ユビキチン化された新合成不良タンパク質の認識と代謝に必須の働きを有することを突き止めた。BAG6 複合体は、神経変性疾患の原因となるタンパク質凝集の防御、あるいはミスアッセンブルされた膜タンパク質の選択的除去など、ユビキチン化反応と共役した細胞内タンパク質品質管理に必須の役割を有していることが、研究代表者らの研究で明らかにされている。一方、BAG6 複合体にはポリユビキチン化基質認識の多様性が存在することを我々は見出しているが、その全容は未だ明らかではない。 本課題では、BAG6 複合体に内含される基質識別機構の解明を進め、BAG6と連動するユビキチン認識マシナリーの機能・構造連関の全解明を目指している。我々はこれまでの研究により、基質認識に関わる新しいサブユニットを既に同定し、そのX線立体構造解析を明らかにしつつある(投稿準備中)。また、BAG6が 新合成不良タンパク質をユビキチン経路にリクルートするために必要な新しい領域を決定した(投稿中)。さらに、我々が最近同定したUBAドメインタンパクが、BAG6と共同して、ミスアッセンブルされたユビキチン化不良膜タンパク質を認識し、生合成過程での運命を決定することを発見した(投稿準備中)。 これらの実績をもとに、BAG6複合体が関与するユビキチン依存的制御システムの全解明を本申請研究で目指している。新しく解明したBAG6基質識別サブユニットの構造情報を最大限に生かし、BAG6複合体による新合成不良タンパク質認識の全体像を完全解明にむけて本研究を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)BAG6はテイルアンカー(TA) 型膜蛋白質の生合成と分解に必須である。テイルアンカー型蛋白質とは、シグナル配列を持たない一群の1回膜貫通型蛋白質で、トランスロコンやSNARE膜小胞輸送、小胞体依存性蛋白分解(ERAD)などの中核的プレーヤーとして知られている。テイルアンカー型膜蛋白質の生合成を制御する酵母GET複合体の構造と機能は、最近報告された。一方、酵母にはBAG6ホモログは存在しておらず、ヒトを含む多細胞生物BAG6複合体(酵母GET複合体の機能ホモログ)は全くのフロンティアであった。 我々は、本領域の計画研究班員である加藤准教授(高エネルギー加速器研究機構構造生物学研究センター)らとの共同研究で、ヒトBAG6/UBL4A複合体の結合ドメインをX線結晶構造解析にて解明した(桑原ら、投稿準備中)。これは、多細胞生物TAタンパク質アッセンブリ因子として史上初となる快挙である。 (2)現在までに報告されているユビキチン結合ドメイン含有蛋白質は200種近くに上る。これらの中に、不良膜タンパク質のユビキチン依存的代謝制御に関わる因子として、我々はBAG6と結合する新しいUBAドメインタンパク質を同定した(鈴木ら、投稿準備中)。このUBAドメインタンパク質は、ミスアッセンブルされた不良膜タンパク質を認識し、生合成過程での運命をサイトソルにて決定する初めての因子であり、今後、大きなインパクトを関連の分野に示せるものと考えている。 (3)申請者は既にBAG6のN末、およびC末領域に、ポリユビキチン化基質、ならびに凝集性ポリペプチドと高い親和性を持つ新しいドメインを同定し、これをBUILDドメインと命名した(田中ら、投稿中)。これは、疎水性を露出した不良タンパク質を認識し、その凝集を防ぐ中心的な機能を担う機能ドメインで、重要な成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでの我々の成果を基盤に、BAG6複合体の機能・構造解析を進めていく計画である。テイルアンカー型蛋白質をはじめとした新合成ポリペプチドの品質を監視・支配するBAG6複合体の作動機構をこれまでの成果を基盤に解明を進め、他に類例をみないBAG6複合体の立体構造解明を本研究にて完遂することを目指す。また、側鎖レベルでの構造情報を利用して、BAG6/UBL4A複合体形成を自在に制御しうる実験系を確立する。 さらに本課題では、BAG6 複合体に内含される基質識別機構の解明を進め、BAG6と連動するユビキチン認識マシナリーの機能・構造連関の全解明を達成し、BAG6複合体が関与するユビキチン依存的制御システムの全解明を目指している。これらの知見をもとに、翻訳直後にポリユビキチン化された疎水性ポリペプチドをBAG6が認識し、その凝集を阻害する機構を解明する。 BAG6 複合体は、神経変性疾患の原因となるタンパク質凝集の防御、あるいはミスアッセンブルされた膜タンパク質の選択的除去など、ユビキチン化反応と共役した細胞内タンパク質品質管理に必須の役割を有していることが、研究代表者らの研究で明らかにされた。神経系組織(大脳)に高発現するBAG6の特徴をふまえ、神経細胞特異的にBAG6遺伝子をノックアウトした遺伝子改変細胞・個体を確立し、BAG6依存的代謝経路がどのように神経細胞の恒常性維持に関与しているかを徹底的に解明する。 我々は最近、BAG6と共同してミスアッセンブルされたユビキチン化不良膜タンパク質を認識し、生合成過程での運命を決定する新しいUBAドメインタンパク質を発見した。申請者は、このUBAドメインタンパク質がユビキチン化不良膜タンパク質の運命を決定するメカニズムを、CRISPERシステムを用いた遺伝子欠損系を確立することで明確に示す計画である。
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Research Products
(6 results)