2012 Fiscal Year Annual Research Report
Development of biochemical methods to understand protein ubiquitylation
Project Area | New aspect of the ubiquitin system : its enormous roles in protein regulation |
Project/Area Number |
24112008
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
佐伯 泰 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席事研究員 (80462779)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | ユビキチン / 定量プロテオミクス / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチン修飾の構造は、「ユビキチン鎖の種類」、「長さ」、「複雑さ」の3つの要素から成り立つが、これら3要素を決定する解析法は完全には確立されておらず、そのためにユビキチンシグナルの発動原理には不明な点が多い。本年度は「ユビキチン鎖の種類」の解析法を開発した。 ユビキチン修飾は8種類の異なる構造のポリユビキチン鎖 (異なるリジン残基を介して連結したK6鎖 K11鎖、K27鎖、K33鎖、K48鎖、K63鎖、M1鎖)が存在し、それらが使い分けられることで標的タンパク質の運命が決定される。現在、ポリユビキチン鎖を識別する手法として質量分析計がもっとも有効な手段として注目されているが、K29鎖やM1鎖などの微量なユビキチン鎖を複雑な細胞抽出液から直接定量することは依然として困難である。そこで今回、最新のOrbitrap型高分解能質量分析計によるParallel Reaction Monitoring法を用いることで複雑試料中からユビキチン鎖を絶対定量する方法を開発した。様々なパラメーターを最適化することにより、複雑試料中から全ての種類のユビキチン鎖を100 amolから絶対定量可能することに成功した。本手法を用いてユビキチン依存タンパク質分解系のモデル基質UFD経路のUbiquitin-Pro-LacZ(Ub-P-LacZ)のユビキチン化を解析した。その結果、野生型において、Ub-P-LacZはK29鎖及びK48鎖が1:5の比で結合した混合型のユビキチン化修飾を受けることが明らかとなった。一方、UFD経路のユビキチンリガーゼUfd4破壊株においては、K29鎖が検出されなかった。よって、Ufd4はUFD基質にK29鎖を付加することが明確となった。以上より本手法は複雑なユビキチンシステムを解析するために有効である(Tsuchiya et al, BBRC,2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題はユビキチンの新規解析技術の開発を中心にユビキチンシグナリングの全貌解明を目標として掲げている。そこで、研究期間の早期にユビキチン修飾の3つの要素「種類」「長さ」「複雑さ」の解析技術を確立を目指している。 平成24年度は、本研究課題により所属研究機関に設置したQqOrbitrap型高分解能質量分析計の最適化および技術の習熟からスタートした。その結果、機器のトラブル等なく、ユビキチン修飾の最も重要な要素である「ユビキチン鎖の種類」の識別・絶対定量法の開発に成功した。質量分析計によるユビキチン鎖の定量は国内初であり、さまざまな最適化の結果、世界最高レベルの検出感度を実現した。現在、ユビキチン結合タンパク質群、ユビキチン化酵素群の網羅解析により、ユビキチン鎖結合特異性や形成特異性を解析している。一方、ユビキチン鎖の長さについてもユビキチン結合プローブとトリプシンによる部分消化を組み合わせた新手法(Ub ProT法:Ubiquitin chain-Protection from Trypsinization法)を考案し、生物試料を用いた解析を実施している。このように研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は当初の予定通り以下の研究を推進する。 (1)ユビキチン鎖の種類によるシグナル発動原理の解明:ユビキチン結合タンパク質群、ユビキチン化酵素群の網羅解析により、ユビキチン鎖結合特異性や形成特異性を明確にすることで、ユビキチン鎖の種類によるユビキチンシグナリングの作動原理に迫る。また、領域内の重要基質のユビキチン鎖の構造識別と定量を実施する。 (2)ユビキチン鎖の長さの解析法の確立:考案したUb ProT法を確立し、前述のユビキチン鎖の絶対定量により細胞内に存在する各ポリユビキチン鎖の平均鎖長を決定する。 (3)複雑なユビキチン鎖の解析法の確立:分岐鎖や混合鎖による複雑なユビキチン修飾の存在が示唆されているが、実証されていない。QqOrbitrap型質量分析計によるMiddle-down解析により分岐鎖を検出する方法を開発し、細胞内に複雑な分岐鎖が存在するか検証する。 (4)ユビキチン化基質の網羅解析法の確立:変性条件下においてユビキチン化ペプチドを高収率で精製濃縮する方法を開発し、SILAC(Stable Isotope Labeling in Culture)法による定量プロテオミクスと組み合わせることでアーティファクトを極力排除したユビキチン化基質の網羅的同定法を開発する。
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Research Products
(10 results)