2012 Fiscal Year Annual Research Report
シリア・中心体系による神経幹細胞分裂の非対称化機構
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
24113006
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松崎 文雄 独立行政法人理化学研究所, 非対称細胞分裂研究グループ, グループディレクター (10173824)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 非対称分裂 / 中心体 / 小頭症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の神経幹細胞(radial glia)は著しく伸長した形態と上皮極性を持つことから、極性細胞に典型的な非対称分裂(細胞の極性軸と分裂軸が一致による非対称分裂)を行うと考えられてきたが、我々の詳細な解析により、神経発生期の神経幹細胞は、分裂面を回転させるのではなく、多少の揺らぎはあるものの、脳室面に対してほぼ水平に分裂することで、上皮性を保持した神経幹細胞 (radial glia)とbasal側のプロセスを失った神経前駆細胞(あるいは神経細胞)を生むことを明らかにした (Konno et al. Nat Cell Biol 2008)。神経産生期の幹細胞では、細胞極性と分裂軸の一致による非対称分裂という古典的なモデルが成り立たないことを示しており、その仕組を理解する新たなモデルが求められている。また、分裂軸異常を示すLGN 変異マウスでは、radial gliaとは異なる形態をもつ脳室帯外神経幹細胞(霊長類等の複雑な脳では主要な幹細胞集団)を多数生み出されることを見出している(Shitamukai et al 2011)。本研究では、このふたつの結果を踏まえ、(1)細胞分裂時に複製された中心体間の非対称性と、非対称分裂に必要とされるNotch等のシグナル系との関連、(2)中心体に局在する小頭症遺伝子産物の非対称分裂における役割を解析することを目指している。H24年度には、これらの解析に必要なライブイメージングシステムの新規導入と最適化を行うことができた。また、脳室帯外神経幹細胞(霊長類等の複雑な脳では主要な幹細胞集団)を多数生み出すモデルマウス(分裂軸異常変異マウス)で、小頭症遺伝子をノックダウンすることにより、脳室帯外神経幹細胞の形成が著しく影響をうけるという結果が再現性よく得られたことから、今後の研究の基礎が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中心体の非対称性と神経幹細胞の自己複製における役割に関して:中心体の速い動きを正確に捉える高速共焦点リアルタイムイメージングシステムを一年目の経費の大半をかけて予定通り購入した。H24年度に新しく発売されたものであり、納入が年末になったため、システムの組立と作動、最適化は今年度内に行うことができたが、本システムを用いた解析はH25年度に持ち越されたため、この部分の研究の進展がやや遅れている。 神経幹細胞の分裂モードの遷移:分裂期に遺伝子産物が中心体に局在することが知られる家族性小頭症原因遺伝子に着目する。我々が開発した脳室帯外神経幹細胞(霊長類等の複雑な脳では主要な幹細胞集団)を多数生み出すモデルマウス(分裂軸異常を示すLGN 変異マウス)で、小頭症原因遺伝子をノックダウンすることにより、脳室帯外神経幹細胞の形成が著しく影響されるという結果が再現性よく得られた。また、マウスInsculeableの強制発現による分裂軸のランダム化と同時に小頭症原因遺伝子活性をなくしても同じ効果が観察されたことから、分裂軸の揺らぎによる脳室帯外神経幹細胞の形成に対する小頭症原因遺伝子活性低下の効果は分裂軸を擾乱する方法によらないことが判明した。このことは、分裂軸を規定する仕組みに対して、小頭症遺伝子産物が影響を与えている強い証拠となると考えられ、大きな進展と見なされる。2つのプロジェクトの総合的な達成度を考えると概ね研究の進展は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
神経幹細胞の非対称分裂における中心体の機能の解析: H24年度に購入したライブイメージングシステムを用いた解析をH25年度に本格的に開始する。中心体、Notch等の自己複製能の維持に関与するシグナル系、小胞膜系のライブイメージングを可能とする条件を最適化し、今後発達中の脳スライスを用い観察を行なってゆく。中心体の専門家、膜系の専門家を新たに研究員として採用することができたため、期待通り研究が進行するものと予想している。 神経幹細胞の分裂モードの遷移: 高速ライブイメージングシステムによる観察が可能となったため、発達中の脳スライスのライブイメージングにより、野生型、あるいは、分裂軸の方向が乱れた神経幹細胞において、分裂装置のダイナミズムを高い時間分解能を持って観察する。さらに小頭症原因遺伝子の活性を低下させることによる脳室帯外神経幹細胞の形成に与える影響を高速ライブイメージングシステムをもちいでリアルタイムに解析していゆく。
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Research Products
(9 results)