2014 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患マイクロエンドフェノタイプとしての樹状突起スパインの解析
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
24116003
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 朗子(高木朗子) 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60415271)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / 樹状突起スパイン / DISC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症モデルマウスである前頭野特異的DISC1ノックダウンマウスのin vivoスパインイメージングを行ったところ、マウスの思春期に相当する時期にスパインが過剰に除去され、シナプス密度が大きく減少することを見出した。スパイン減少を予防する薬剤は、統 合失調症の関連症状の一つである感覚運動情報制御機能の障害に対しても治療効果を有した。このことはスパインというマイクロエンドフェノタイプが如何に異常行動に相関するかを示唆する事に成功したことを意味する(Hayashi-Takagi A et al, PNAS, 111, 6461- 6, 2014)。 一方で、これまでのアプローチではスパインと行動との関連性に関しては相関関係以上の示唆を与えることは不可能であった。そこでマイクロエンドフェノタイプとしてのスパインとその結果としての行動表現型という因果律に迫るために、人為的にスパインを消去する技術Synaptic optogeneticsの開発に着手し、新規光シナプスプローブであるAS-PaRac1の最適化を完了した。AS-PaRac1は長期増強が誘導されたシナプスだけを青色光で消去する性質があることが実験的に確認され、実際に学習後に青色光を照射すると既得学習を消去できるとことも明らかになった(Hayashi-Takagi A, et al, Nature, 2nd round revision)。これらのことは、シナプスが行動の細胞基盤であると言う直接的な因果関係を示す新技術が確立したことを意味し、この新技術をシナプスパソロジーとしての精神疾患モデルマウス研究に展開することは、病態理解への大きな推進力になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DISCノックダウンの縦断的スパインイメージングおよび行動解析は予定通りを完全に遂行し、論文発表を行うことができた(Hayashi-Takagi A et al, PNAS, 111, 6461-6, 2014)。一方で、スパイン形態とその機能の一つの指標としてのカルシウムイメージング(GCaMP6f)を行うことでこの研究を発展させる準備が進行している。具体的には、従来型のConventinalなノックダウンではなく、ノックダウン(DISC1 shRNA)を神経形態マーカー、GCaMP6fと共にInducibleに前頭野に発現させる実験系の構築に取り掛かっている。検出系に関しては、カルシウムイメージングに特化した顕微鏡の選定・詳細なセットアップを開始するなど、計画は順調と思われる。
一方で、スパインを光遺伝学的に操作するSynaptic optogenetics法の開発に関しても、予定通り論文投稿後、順調に論文改訂実験を行い、新手法としての利点・欠点などのCharacterizationを進めており、近日中(H27年度前半)に再投稿できると思われる。さらに、本プローブを全脳領域に利用するための多領域へのAAV遺伝子導入、また観察のための透明化技術の関しての準備も進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
【1】疾患モデルマウスのスパイン形態・カルシウムイメージング 上記のInducible knockdown系(DISC1 shRNA, GCaMP6f, mRuby2)のスパースラベリングの最適化を行う。実験系が完成したのちには、病態進行に伴うスパイン形態の観察(スパインサイズ、密度)とともに、シナプスレベルおよびその細胞体レベルのカルシウムイメージングを行い、疾患モデルにおけるスパイン異常がどのように神経発火パターンに影響を与えるかを解析する。また各種タスク遂行中のカルシウムイメージングを行うためのセットアップをイメージング検出系および行動実験系の両面での最適実験環境を確立する。
【2】Synaptic optogenetics 脳のいくつかの領域の学習記憶現象に応用し、各脳領域の学習記憶の細胞・神経回路基盤を可視化定量化し操作するfunctional connectomeを確立する。AAV遺伝子導入したマウスに恐怖学習させた後に、SCALEなどの脳透明化技術を用いて記憶スパインと神経活性依存的に発現した形態マーカーとシナプス前終末マーカーの分布を二光子顕微鏡で観察する。記憶プローブや形態マーカーを導入する領域を変えることでHippからmPFC、BLAからCeAなどの別の投射経路の記憶スパイン形成を有無を確認する。恐怖条件付けに関わる記憶スパインとその投射元の全体像を明らかにする。心的外傷を受けたすべてのヒトがPTSDを発症するわけではなく、むしろ一部の少数者であることが明らかになっており、このような脆弱群と疾患抵抗群は動物モデルでも確立している。本申請では両群間の記憶スパインの形成率・分布の関係を比較解析し、病態への寄与の大きい神経回路を特定する。特定後は、恐怖条件付け後に光照射を行い、恐怖記憶の消去を試みる。
|